和歌山モデルの感染封じ込めから考える院内感染/永寿総合病院の悲劇から学ぶ
まず、はじめに永寿総合病院にて、新型コロナウィルスで亡くなられた患者、病院スタッフの方々に哀悼の意を申し上げます。
さらに、新型コロナウィルスに感染し、辛い思いをされた皆様にお見舞い申し上げます。
この記事は、特に永寿総合病院自身の責任を免責しようとしたものではありません。
そうではなく、国や東京都がもっと徹底的に、永寿総合病院を支援し、連携していれば、より感染の収束を早められたのではないかという疑問があるからです。
もちろん、国や東京都も関わってはいるわけですが、例えば、2月に済生会有田病院のように、和歌山県への連絡とともに、和歌山県は徹底対策に乗り出し、早期に収束しました。
そのような非常に強い連携が永寿総合病院と東京都の間にはあったのか。
それを示すような記事がなかなかありません。
和歌山県のような例が広まれば、今後被害者も減るし、その中で永寿総合病院の悲劇の原因解明にも参考になると考え、書きました。
以下の報告をご覧ください。
厚生労働省の対策チームの報告が永寿総合病院のホームページにありましたので、抜粋しました。
http://www.eijuhp.com/user/media/eiju/chousasiennhoukoku.pdf
気になるのは、
時系列で示しますと
3月上旬に感染した可能性のある方がおります。(推定)
次に3月14日に集団感染が始まったと推定されています。
次に3月23日にPCR検査で初めて感染が正式に判明しました。
そして厚生労働省の対策チームが来たのが3月30日。
いささか遅くないでしょうか。対策チーム。
次のグラフをご覧ください。
3月上旬と書いていましたが、変ですね。実は2月27日に患者さんが出てます。それは置きます。
次に3月1日に感染者が出てそれからしばらくして3月14日に感染者の増加が始まるのです。
そしてなんとPCR検査での初判明が23日です。
以下は院長の声明の抜粋です。
そしてさらにその1週間後に厚生労働省対策チームがやっと来るのです。
特に気になるのは、やはり、検査がなかなか実施できてない。
その理由は何なのか。
単に病院だけのせいなのか。
確かに以下のような問題はあります。
「湯浅院長は、感染が広がった理由の一つに「新型コロナを疑うタイミングの遅れ」を挙げた。永寿では、新型コロナ以外の発熱や肺炎を起こす病気を持つ患者は珍しくない。起点となった感染者の1人は3月5日に発熱していたが、「(食べ物が気管に入る)誤嚥ごえんを繰り返しており、そのための肺炎と診断していた」と話した。」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/39205
なので、病院に全く瑕疵がないとは私も思っていません。
ただ、都や政府の迅速大規模な支援があれば、病院も自分だけで抱え込んで、事態を悪化させることはなかったのではないかと。
被害ももう少し小さくなったのではないか。
院内感染が爆発増加するのを防ぐには、強力で迅速な対応が必要です。
一病院ではできないこと、取れない判断も自治体や国は取れるはずです。
感染症予防法や新型インフルエンザ特措法はそのような立て付けになってます。
その部分も問わないとー病院の責任の話は重要ですーただ、国や自治体の社会的な対策責任の話が消えてしまいます。
和歌山県は国の指針に従わず、有田病院の院内感染に迅速な徹底検査、徹底調査を指示しました。そのため拡大がおさえられました。
そのような例をみていると感染症対策における自治体や国の努力の仕方次第で、悪化にも改善にも導いていけるのだろうと思います。
院長の言葉によると、病院は、20日に検査をし、3日後に判明し、その翌日に当該病棟の出勤停止と発熱患者9名の検査を行います。その翌日26日には多数の感染が判明します。
その翌日27日には全患者、全スタッフの検査に踏み切ります。他病院に検査依頼しています。
ただ、驚くことに27日から9日も検査に時間がかかっています。
やはり政府や都は積極的に支援すべきではなかったか。
病院の頑張りは限界に来ていたのではないか。
もしかしたら、連絡がうまくいなかったのかもしれません。
しかし都のホームページを検索しても、永寿総合病院関連の報告が出てきません。私の検索の仕方が悪いのかもしれませんがみやすいところに置いてないのです。
だから都がどうしていたかはつかめないのです。
私のような心身に障害のある一個人ではなかなか詳しい取材は困難です。
3月26日に政府や都に新型インフルエンザ等特措法による対策本部が設置されていますが、その手前で検査体制の整備が間に合っていなかったことは考えられます。
政府も重症者への対応を強調していた時期です。
検査の増加スピードや規模も日本は海外で対策がうまくいっている国々より小さい。
3月当時熱心にクラスター対策を専門家会議は連呼していました。
しかし、厚生労働省の対策チームが来た30日には感染のピークが終わりかけています。
ピークが終わってからクラスターをつかまえても遅いのです。
しかも、この報告では東京都が何をしていたのかよくわかりません。
国の報告だから仕方ないのかもしれませんが、今般の対応を検証するには、都の対応は鍵になると思います。
なぜなら
感染症予防法で、都道府県知事は感染症発生における調査や対策の指示権限があるからです。
新型インフルエンザ等特措法において、都道府県は対策本部を設置しますから。
※
なぜ、私が都や政府の支援がもっとなかったかと考えるのは、和歌山県の例があるからです。
東京都と和歌山県を単に比べたいのではありません。そんなどっちがどうみたいなつまらない話ではありません。
より効果的な対策を検証し、これまでの感染被害者の無念に答え、これからの被害をよりよく防いでほしいからです。
永寿をはじめ、様々な院内感染の病院や他の自治体のためにもなると。
実際自治体のバックアップは医療機関にとり心強いと思うし、対策において地域に即応した自治体がイニシアチブをとることは、感染症予防法でも、新型インフルエンザ特措法でも同じです。
和歌山県は、済生会有田病院の院内感染を早期に終息させました。
県と病院の早期の連携で直ちに検査を全面実施して、感染経路についても徹底調査したからです。
2020年2月26日の記事
有田病院が通常業務へ 新型肺炎で全員の陰性確認 紀伊民報AGARA #紀伊民報 #AGARA https://www.agara.co.jp/sp/article/49147
県内で初めて、同病院の男性外科医と男性入院患者の感染が13日に発覚した。県は院内感染を抑えるため、すぐに同病院に入院患者の退院を控えてもらい、患者の新規受け入れや入院患者への面会などを停止するよう要請。その上で、仁坂吉伸知事は「正常化」に向け、院内に感染者がいないことを明らかにするため、病院に関係する全員を検査する方針を打ち出していた。県環境衛生研究センターのほか、和歌山市や大阪府の協力も得て、医師や看護師ら職員、入院患者から、警備員、出入り業者らまで、優先順位を付けて検査。24日までの12日間で、関係者全員474人の検査を終えた。
県はこれを受けて、院内に感染者がいなくなってから2週間、経過観察したのち「正常化」できる見通しを示した。
仁坂知事は「済生会有田病院の正常化の入り口に来た。最初にすぐ決断をして、外来受け入れ停止などを要請したが、病院がそれを受け入れ、その中で最善を尽くしてくれたことが良かった。県内に広がっている懸念が無いことも証明され、いま和歌山県は感染の危険度は極めて低い」と話した。
13人のうち、25日までに6人が回復し退院。一定期間、自宅待機をしている。一方、有田病院に入院歴がある70代男性については、退院基準である2回連続での陰性を確認したが、肺炎が重症のままであるため、感染症指定病院での入院を続ける。
病院の報告からすぐに全面検査を知事が判断し、実際に実現しています。
以下の記事はさらに詳しい過程の記事です。
【特集】
新型コロナ対応『和歌山モデル』を徹底取材!内部文書と当事者証言から読み解く...“安全宣言”の要因とは?
3/29(日) 16:06配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/6907e7b8dbbefc3abac4d2d00a41be23ff26214d?page=3
取材班は今回、和歌山県の内部文書を独自に入手した。文書には、院内感染が確認される前後に、県がどのような対応を取っていたか詳しく記されている。
【和歌山県の内部文書より抜粋】
「2月12日11時30分 済生会有田病院の医師がウイルス性肺炎でA病院に入院している。B病院を受診した済生会有田病院の同僚の医師と画像がよく似ている。しかし、国が示している基準ではないので、PCRの検査はできないのか?」
文書を作成したのは、対策の陣頭指揮をとった、医師で和歌山県の職員・野尻孝子技監だ。2月12日~13日にかけ、野尻技監の下には新型コロナウイルスの感染が疑われる症例の報告が次々と届けられていた。【和歌山県の内部文書より抜粋】 「2月13日9時前 患者の共通点は、『済生会有田病院の関係者』と『肺炎』」 「同日16時25分 済生会有田病院からC病院に救急搬送された方が、気管内挿管をして重篤との情報。有田病院関係で疑い5例となり、直感で、新型コロナウイルス感染症が発生したと確信」
和歌山県の内部文書
この約2時間後には患者の感染が判明したため、県は記者発表をすることになるが、病院名を公表するかどうかについては、会見の直前ぎりぎりまで決まっていなかった。【和歌山県の内部文書より抜粋】 「発表資料を確認しながら、済生会有田病院長との連絡をとるもなかなか取れず。18時55分に、ようやく院長代理と電話がつながる。『医師という社会的責任と、感染予防対策をとる上で、済生会有田病院と言わざるをえません。』と切羽詰まって伝えると、院長代理は少し考え『わかりました。』と」
和歌山県はなぜ、感染拡大を食い止めることができたのだろうか。
「最初の(患者の)探知の例も、当時の国の基準では、検査の対象外。」(野尻孝子技監)
(Q国の基準に粛々と従っていたら?)
「探知はできなかったということですね。」(野尻孝子技監)
当時、国が医療機関を受診する目安としていた基準は、『中国・湖北省への渡航歴』が含まれ、2月17日に改訂後も、『37.5℃以上の発熱が4日以上続く人』に限られた。しかし、和歌山県はこの基準に当てはまらない人にも検査を実施するという判断に踏み切った。
和歌山県 仁坂吉伸知事
「国の方針プラス医師の判断、特に肺炎は注視していこう、というのが県の方針ですね。」(野尻孝子技監) 「国の基準に従うというのが基本原理であるというのは、これっぽっちも初めから思ってないもんね。我々の任務は県民を守ることですよね。守るために論理的にしなきゃいけないことってのはこういうことだろうと。」(仁吉吉伸知事)
これをみてわかるのは、病院と自治体の連絡がしっかりしています。
次に自治体が国の判断基準ではなく、必要な検査を「即座に」行ったことです。
全国的に、政府や他の自治体が参考にすれば、3月以降の院内感染はかなり違っただろうと思います。
検査も近隣自治体の協力をあおぎ、増やしてます。
大阪府はこの時助ける余裕がありました。
しかし、この後大阪府は院内感染が多発し、大阪府は即座な対策ができず、亡くなる方も40人近くになりました。
国内初の2月における院内感染例で、和歌山県がこれだけのことができたのに、政府や他の自治体(特に院内感染の多発した東京都と大阪府)が共有しなかったのは悲劇です。
救える人々がいたはずです。