細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

大阪市廃止特別区設置というのは住民自治の剥奪、弱体化でそれを無理に「改革」と呼ぶ限り、大阪市民は深刻な分断対立に追い込まれる。

 

二回この大阪市廃止住民投票の反対運動に関わって、私たち大阪市廃止反対の人びともみんな大阪がよくなることを願っている。
おそらく、大阪を「良くしたくない」という人は、賛成の人の中にもあまりいないはずである。

しかし、問われるのは、どの方向に改善するのか。
その基本の考え方だ。

問題は維新が「大阪市を廃止しないと大阪が良くならない」という厄介な執着を抱いていること。

しかし街を良くするために大阪市を廃止せなあかんという前提は、やはりにわかに理解しがたい。
なぜ壊さないとよくできないのか?
破壊しないで育てるという視点はないのか?

私は、二回とも賛成が敗北したのは偶然ではないと思う。

まず、誰もが良い街にしたいが、廃止はあかんということは、わずかに上回っている。

二回とも湾岸区、南部の区で、大阪市存続が上回っている。
湾岸区はカジノや瓦礫処理やゴミ処理、汚染水の話題などで苦しめられてきた。

港湾都市として栄えたこの地域は、長らく大気汚染などの公害に苦しめられてきた。
大阪市の歪みを押し付けられている。

また南海トラフ地震津波の直撃を受ける地域。
大阪市に怒りがあるが、廃止ではなく、大阪市は向き合えということだ。

南部の区は、貧富の格差を押し付けられている。みんな暮らしを安心できるものにしたい。

大阪市の行政課題として明確なものがある。
今回中央区でも反対多数となり、インバウンドも何もかもコロナで吹っ飛び、長年の不況で企業活動は厳しいという話ではないのか。

湾岸区や南部の区、これらの区は古くからの住民が多く大阪市に愛着もあるのである。
そもそも、南部(西成、東成、平野)の地域は古代から続く地域であり、湾岸区は近代の大阪を支えてきた、工業、港湾都市なのである。

また中央区はかろうじて、古い商都としての何かが残っているかもしれない。

同時に、大阪市廃止賛成の市民や政治家の多くが「都にならない」「大阪市廃止」「特別区は明らかに現行の政令市より、質量ともに小さな自治体」という前提をあまり深めないまま「大阪がなんとなく良くなるイメージ」で、人気を集め、また投票しているように、みえる点だ。

制度をどうするか、という議論をしているのに、ふわっとした話をされてもどうにもならない。
「良くするからいい」といわれても、大阪市を廃止して、特別区にするということ自体がこれまで、地方自治で議論してきたことと、逆さまである。
「常識なんか捨てて良くなる改革を信じろ」といわれても、大阪人はしっかりしたところもあるので、過半数はやはり動かせない。

というか、自治体を廃止しちゃったらどうなっちゃうのかという疑問を「良くするつもり」という努力規定で封じてはいけない。

本当に未来思考であれば、大阪市を賢く使って、みんなの暮らしをよくできないか、コロナから市民生活を守るということであってほしい。

今あるものをぶち壊すのではなく、大切にするという態度を「守旧派」というのではなく、ごく基本的な態度として、維新にも考えてもらいたうとおもう。
二度も大がかりなことをしたから、いい加減学んでいただかないと。

予算もかかりすぎ、市役所や府庁も基本的な行政サービスがおざなりであり、また、市民の分断は深刻である。

どうか、貧富の格差とか、コロナとか環境問題といった大阪が抱える行政課題に向き合っていただきたい。

また、市民も「潰せば新しくなる」式のインスタントな発想ではなく、大阪市の成り立ちを知った上で、良いところを生かしてほしい。
大阪城の遺跡の上で、モトクロスをやるようなやり方は、無茶である。

維新の会は二度の投票結果を受け、「大阪市廃止をしないで大阪を良くする方向」をまず真剣に考えてほしい。
維新の会の提起は古くからの住民やいまの生活が苦しい人々にとり過酷すぎる。
なぜなら、大阪市には、街を維持し、人々の暮らしを支える役割がある。維新だけではなく、賛成の市民も自治体による支援を求めることを「守旧派」「甘え」などと表現するのは間違っている。
街は若くお金のあるひとだけでなく、高齢者、障がい者、外国人、シングルマザー、ジェンダーマイノリティーなど不利益をこうむりやすい人々もいて、公的な生活保障は欠かせない。
大阪市廃止住民投票がこれらの人々にどれだけの不安をもたらしたか、私も精神(発達)障がい者だからわかるのだ。
「努力や効率」で、なんとかなる課題だけではないのだ。

その影響を考えるならば、根本的な破壊=大阪市廃止以外の、提案が不可欠だ。

まず、そのため住民投票を総括し副首都推進局を解散し、大阪市廃止で注力できていないコロナ対策や福祉対策をやる必要があるだろう。
大阪府下、特に大阪市域で感染拡大が広がり、人々の暮らしは深刻な影響をこうむっているからだ。

また、大阪市廃止住民投票の混乱の責任をとり、任期満了するといわず、速やかに松井市長、吉村知事の引責辞任を求めたい。
大阪が出直すためには、維新はけじめをつける必要があるだろう。