細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

【福島第一汚染水海洋放出に再度反対する】ータンク増設を真剣に検討すべき・地元、全国、近隣諸国の反対の声を聞くべき・ちりも積もれば山となる汚染物質の脅威

 

 

タンクの場所がないのは無謀な廃炉計画を優先し、敷地などの検討をまじめにやらないから

 

タンクの置場所がないということ自体、経産省小委員会で、委員の多くから疑われていたのに、廃炉における敷地利用の再検討をまともにやらず、廃炉に邪魔だからタンクは増設できないということにしてしまってます。

 

しかし、スリーマイルもチェルノブイリもずっと前の事故ですが溶けた燃料は取り出せてないんです。廃炉の始まりにさえいたってないのです。

まだ、たった9年しか経ってない福島第一原発ではなおさら廃炉の始まりにもいたるはずがありません。それよりも、まずタンク増設して保管して、水棺方式の検証、遮水、汚染除去技術の開発、作業員の被曝、コロナ対策、被害賠償に精を出すべきです。

スリーマイルは事故から40年、爆発ではないメルトダウンです。

チェルノブイリは爆発事故ですが、近年、石棺から放射能が飛散したり、事故現場が劣化しないように、ウクライナ政府がヨーロッパから力を借りて、巨大なシェルターを作りました。

いずれも無理に溶けた燃料を取り出さないのは、放射線量が莫大で作業員が危険だからではないかと。論ずるまでもないことですが。

 

(すでに海外の事故原発との違いなどについては以下ブログで検討済み

https://ishikawakz.hatenablog.com/entry/2019/09/26/220722

)


しかし、日本政府と東電は、溶けた燃料を取り出して、廃炉して、敷地をお返しするという考えとしてはわからないわけではないですが、前例も正当な想定もない話をしています。

(福島県が戻してほしいという気持ちはわかりますが、しばらくの間不可能なことは間違いなく、ならば、その間国や東電が補償しなければならないということが抜けてしまっています。

また実際、避難者や被害住民の多くの人が十分な補償を受け取れなかったり、打ち切られたりしています。実際に放射線量が高い地域にも、避難の継続の支援はほとんどないわけです)

しかも遅れています。

コロナもあり、さらに工期は長期となるでしょう。

 

国と東京電力が最長で40年かかるとしている、福島第一原子力発電所の「廃炉」の作業。

そのおよそ4分の1となる9年近くになりますが、その進捗は、全体としては当初の計画より遅れています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200302/k10012306101000.html

政府は27日、東京電力福島第1原子力発電所廃炉工程表を改定した。事故後30~40年にあたる2041~51年に廃炉を終える目標を堅持したが、すでに9年弱が過ぎたうえトラブルで作業の遅れも目立つ。もっとも厄介な溶融燃料(デブリ)の性質や量は分かっておらず、取り出し技術も確立されていない。目標の実現性や廃炉の最終的な姿は見えないままだ。

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO53951560X21C19A2EA1000
廃炉ができない、敷地を返還できないということを国や東電が認めれば、不可逆的なダメージがあり、原子力は容認できないとなります。
それを国や東電は拒んでいるのです。

つまり原発をやめたくないのです。

ゆえに、燃料とりだしのためには、タンクは作れないんだという計画になってしまっています。

しかし、河北新報の今年3月9日の記事では、なぜすぐ出きそうにない燃料とりだしと比較して、汚染水の海洋放出の議論が進むのかという問いが投げ掛けられています。

■拭えぬ違和感

 タンクが造成されている敷地にはかつて広大な森が広がっていた。

 「『野鳥の森』という愛称があり、鳥たちも巣作りをした」と東電担当者。原発事故後に木々は切り倒され、跡地はタンクで埋め尽くされた。緑豊かだった構内の風景は北側を除いて跡形もなくなった。東電側は「敷地には限界がある。溶融核燃料(デブリ)の取り出しに向けた施設整備も必要だ」とタンク増設に消極姿勢を示す。政府も小委員会の報告書を受け、地元す意見を踏まえてタンクの水の処分方法を決める方針だ。

 ただデブリ取り出しの前提となる1、2号機格納容器のサンプル調査は本年度は着手できず、新年度以降にずれ込んだ。使用済み核燃料の搬出時期も最大5年先送りする。廃炉作業が遅々として進まないのに、処理水放出の検討を着々と進めるのに違和感を覚える。

 丁寧な合意形成を進めるためにも、タンクを増やして処理水保管を続けられないか

https://sp.kahoku.co.jp/tohokunews/202003/20200309_63010.html

 

このような疑問をもっと前から抱いていたのはフリージャーナリストのおしどりマコさんでした。経産省の小委員会で、委員らが海洋放出ありきでなく、タンク増設にまつわる敷地利用の再検討を求める発言が出ていたからです。

 

小委員会での議論は、「タンク保管の敷地は本当に無いのか?」 である。

2019年8月の第13回小委員会での委員のコメントを紹介する。

辰巳菊子委員(日本消費生活アドバイザーコンサルタント)
「実際に福島第一原発に視察に行くと、まだ敷地内にタンクのスペースがあるように思う。

今日の資料にそこの部分が無いのは、委員に意図的に見せたくないように感じる。」

下記が、資料のタンクエリアの部分。福島第一原発の敷地の南半分のエリアである。

当日の配布資料のタンクエリアのマップ。 https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/013_04_02.pdf
森田貴己委員(中央水産研究所)
東京電力の資料は福島第一の全体の地図がどこにもない。おもてなし感がない」

下記が福島第一の全体図である。

https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/006_03_00.pdf
全体図の上に、「敷地が無い」というタンクエリアのマップを乗せる。

筆者が資料から合成。 (粗くてすみません)
福島第一の全体図を見てほしい。

元々、福島第一原発は7,8号機も建設予定で、双葉町側に広い用地を取得していた。

その双葉町側、北側(図の左半分)には「土捨場」「新土捨場(予定)」という広いエリアがある。

東京電力は「敷地内で設備の建設の際に出た土の捨て場、土は敷地外に出せない」と説明。

すると森田委員は

「土は敷地外に出せず、水は敷地外に出せるのか。それは一般的に理解されないのではないか」

 

小山良太委員(福島大学)
「敷地を確保するのが一番早いのでは。福島第一の周囲に環境省が中間貯蔵施設を作るために敷地を保有している。

現地視察のときも質問したが、『それはできない、道義的に許されない』と言われたが。

でも、そもそも原発事故が道義的に許されないことで…」

現在、福島第一原発の周囲16平方キロメートルという広大な敷地が、放射性廃棄物の中間貯蔵施設として用意され、

福島県内のフレコンバッグの中身が運び込まれている。(下記)

http://josen.env.go.jp/chukanchozou/
辰巳委員
「小山委員と同意見。視察で見ると、敷地の外に環境省の中間貯蔵施設がある。

国として全体を検討すべきではないか?」

関谷直也委員(東京大学)
「汚染水の処理、なぜ今決めなければいけないのか。復興は全体として考えるべき。

安全な土を敷地内に保管して、汚染水を敷地外にというのはわからない。」

http://oshidori-makoken.com/?p=4144

 

 

地元や海外からの反対

 

不可逆的な巨大な被害をもたらす原発事故、それを回復可能な「平気なもの」にしてしまい、「汚染土は再利用」できるし、「汚染水は海に捨てられる」というフィクションを作っています。

 

それに対し、もちろん地元福島県の市町村議会で、海洋放出反対や慎重検討をもとめる決議が出され、漁連をはじめとして、全国の消費者団体なども反対しています。

f:id:ishikawa-kz:20201016163341j:image

(東京新聞

汚染処理水の海への放出「反対」 福島県の市町村議会で意見書相次ぐ 
2020年07月27日)
https://genpatsu.tokyo-np.co.jp/page/detail/1569

 

さらに全国のパブコメは7割が反対。

 

独自】原発の汚染処理水、“国民意見”は「放出反対」が7割
16日 16時27分
 福島第一原発でたまり続ける放射性物質トリチウムを含む処理水について、政府は今月中にも、海への放出を決める方針を固めました。JNNでは、国民から募った意見、パブリックコメントの一部を入手。「7割」が「放出に反対」していることが分かりました。
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4103808.html?fbclid=IwAR17rJDl64Ha2motpRTVG9HU7pocwbvBv_cq8e2KizESZaTXG_7tcel6hKU

 

タンクの増設を政府や東電がやらないというのは、再三海を汚染してきた反省もなく、反対の世論にも、もはや耳を貸さないということではないでしょうか?

 

安全なんだから海に流せという論拠は、ないはずです。

2年前に福島と東京で公聴会がなされる直前に汚染水タンクの7割の水のトリチウム以外の放射能が基準を越えていたというスクープが判明。

要は東電と政府は、汚染水が全く安全ではなく除去もできていないという事実を隠していたのです。

まさに原発事故が起きても安全神話。ばかばかしい。こんな人びとのいう安全性など、検証するまえに信じてはいけません。

また、先頃、再除去実験をしたのですが1000トン処理しただけで安全だと都合のいい話をしようとしている。

100万トン以上で、トリチウムは除去できないのに。

 

 

 

国内の世論だけに注目しては話が狭くなりがちです。日本の近隣諸国、環太平洋国も汚染水を海に捨てることに異を唱えています。

よく考えれば、海はつながっているからです。

この点から考えれば、大阪府知事の汚染水大阪湾放出発言は助け合いなどではないのです。海はつながってるからです。

大幅な放射線管理法令の改悪と、莫大な運搬コストと大阪湾や外洋の汚染(大阪湾に滞留すると考えても、外洋に流れ出すと考えてもいずれも深刻)をともなうのは助け合いではありません。

火事で火をもらってきて、「俺たちも炎上だ」は自分のためでも、ひとのためでもない。単なる汚染水海洋放出推進の別バージョンです。

あまりに荒唐無稽なためか、以前松井市長が大阪湾海洋放出を提唱したとき、世論は反対しました。

大阪府の漁連、関西広域連合の仁坂和歌山県知事ら、近畿各地の有志の自治体議員らが反対し頓挫しました。

 

そもそも、経産省が汚染水の敷地外広域への移動には法令の問題があると難色を示しています。

その点からも困難であるし、敷地外に出す自体が困難なら、なぜ海に捨てることができるのか。通常稼働原発の放水自体が私には安全には思えませんが、事故原発の100万トン規模の海洋への放出は前例がないはず。

そもそも、ロンドン条約的に海に捨てるという方式自体に問題があるといえます。

 

ポイントは海に捨てるのはまずいということ。

 

汚染水の海洋放出に反対する全国の人びと、福島の人びとを嘲笑うだけでなく、

なぜ、国や東電や大阪府知事まで含め近隣諸国を無視して議論しているのか。

国際的な環境保護より原子力が大事なのでしょう。

 

韓国政府 福島原発汚染水の海洋放出検討に懸念表明=IAEA総会
2020.09.22 18:12

 

韓国科学技術情報通信部によると、同部の鄭炳善(チョン・ビョンソン)第1次官は22日、映像配信の形で行われた首席代表の演説で、日本が検討している海洋放出による環境面での安全性に対し、韓国を含む国際社会の懸念と不安が募っていると指摘。海洋放出は全地球的な海洋環境に影響を与えかねないため、中長期的な環境への害などを十分に検討すべきであり、これに向けIAEAなど国際社会との協力が必要だと訴えた。

http://yna.kr/AJP20200922003600882

 

中国、韓国、チリが放射能汚染水への憂慮を表明 ーーロンドン条約/議定書締約国会議
グリーンピース・ジャパン
 2019-10-10

 

◾️各国政府の反応

韓国政府は、放出という意思決定はなされていないことを再確認したものの、近々タンクは満杯になるとして憂慮を示しました。また、もし大阪湾まで船で運んで投棄するようなことがあれば、ロンドン条約に違反することになると指摘しました。そして、汚染水管理計画を国際社会と共有するよう日本に求めました。

 

さらに中国政府も、汚染水の海洋放出の可能性について憂慮を共有するとし、日本政府に対し、今後も引き続き情報提供がなされることを希望するとしました。

その後、日本政府に発言の機会が与えられ、日本政府は、汚染水の大阪湾への放出を受け入れるとした大阪市長や海洋放出以外に選択肢はないと述べた前環境大臣の発言は個人的なものであり、日本政府の決定に関与するものではないとし、(周辺住民など)ステークホルダーとの議論は継続されると説明しました。

 

チリ政府は、日本による情報提供に関心を示し、また、ロンドン条約/議定書締約国会議は、本件を議論する適切な場であると主張しました。

一方、フランスは、福島第一原発の汚染水問題は、ロンドン条約/議定書締約国会議ではなく、IAEA国際原子力機関)の案件であるとしました。これについて議長は、当会議は、IAEAに助言を求めることができると述べました。

 

https://www.greenpeace.org/japan/nature/press-release/2019/10/10/10563/

 

ちりも積もれば山となる汚染物質の拡散にノーを。

(以前のブログでも展開している議論ですhttps://ishikawakz.hatenablog.com/entry/2020/01/11/005854 )

 

例えばマイクロプラスチック汚染や地球温暖化はなぜ起きているのか。

 

これらは、産業界や政治の世界が、基準値以下の汚染物質の拡散を容認してきたことが原因としか言いようがありません。

様々な物質はちりも積もれば山となるで、自然の浄化システムを破壊し、減少する浄化システムと放出による蓄積が重なると、地球環境を脅かす威力を持ってしまうということです。

私は、森林伐採も農業、工業生産システムも、人間や動物の命のペースを無視して、貧富の格差を作り出す大規模な搾取的な農業や工業が世界中の人びとに強いられているからではないかと感じています。

これは原発や石炭、石油化学的な産業システムの、つまりは、近代黎明期から20世紀にかけて開発された仕組みの限界だと思います。マルクスはそういう仕組みが時間や価格の制御を通じて、人間や命の固有価値を奪うことを洞察しました。

 

基準値を下回れば安全として拡散させれば、地球の自然がキャパシティオーバーするということを私たちは突き付けられています。

温暖化ガスやマイクロプラスチックと同じ「薄めてばらまけば平気」の論理で環境世界にばらまかれた放射能については、危険性を示唆すれば、なかなか研究に資金が降りない(日本をはじめとした原子力推進の)国々がたくさんある中で、全世界的な影響は本当にしっかり検証されているのか私は不安です。

通常稼働で排出された放射能も私は心配ですが、事故原発の汚染水などなおさらとんでもないと私は思います。

 

マイクロプラスチック公害や環境ホルモンや農薬など微粒子による環境汚染は、人間がミクロの世界にメスを入れて、さらに深刻な様相をみることができました。

 

薄々予感していた微小粒子が極小の生命バランスや遺伝子の仕組みを脅かしていること。例えば、有害度が低いとされたトリチウムも、体内の細胞内で水素の代わりに遺伝子を構成する材料となれば、遺伝子の損傷にいたります。

ネオニコチノイド農薬は、マルハナバチなどのハチの神経を脅かせば巣に帰れずに死んでしまいます。

マルハナバチやミツバチは、植物の受粉に関わり、植物の生存に関わります。

 

わずかだ、低濃度だ、直ちに影響がないといいながら、ばらまき続ければ、自然や私たちにミクロレベル、マクロレベル、両者を脅かします。

原子力は基準値以下、規制以下は大丈夫としてきましたが、考え直す必要が在るでしょう。「ちりも積もれば山となる」理屈を当てはめると、やがて地球温暖化や新型コロナ、ネオニコチノイドと同じようなしっぺ返しを受けるかもしれません。

私たちは踏みとどまるべきです。

すでに原発事故で大量に環境を汚染しています。

国と東電は被害に向き合うべきです。

(文中斜体はアップした日以降の追記です)