細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

【詩作品】来迎図

 

心安らぐときに
ざわめく草の命たち
流れる灰の雲
懐かしい匂い
灰の匂い
別れの匂い

なぜ生きていて
理由はわからない 
わかろうとしなくても
知らなくても
知らされなくても
ぷつぷつと泡が
吹いてきて
私はそっと笑ってみる

心安らぐときに
終わらない音を
聞く
聴くつもりはない
聴かされているわけでもない
ただ流れてくるので
そこに私がいるので
選んだわけでなく
いるだけで
強い祈りを
気づいたら
抱いていた

呪われていたこと
祝福されていたこと
米粒を
拾って数える
木の幹にもたれる
冷たい石の上に
座る
どんな場所にいても
私であるが
場所が私に手を伸ばし
私の温度を変え
種が発芽し
私の中から
育っていくものを
私は止められない

大きな舟に乗り
巨大な暗い水の塊
水の塊は
命の布団
命の布団に抱かれた
舟と舟の客は
すべて魂である
岬を出て
岬の緑がぼやけ
誰にも出会わず
広い海の真ん中で
来迎まで
お茶をのみ
祈り
待つ