細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

【詩作品】弱さの自覚

頭の中に
銀の糸
垂直に
立っている

歌を聴く度に
悲鳴と歓喜の渦の中で
体がしびれ
銀の糸が
白熱するのだ

滅びを前にして
僕の体は
間抜けなほど
ふやけている

ふやけた体は
冷たい空にも
無気力で
乱気流の裂目に
吸い込まれ
それでも
無抵抗で
墜落する
僕の脳の中に
また
銀の糸が立つ

死にたくない
と思いながら
再び
思い出すと
暖かい歌声が流れ
悲鳴と歓喜の渦の中で
銀の糸が光り
僕の中に
温もりが
帰ってくる

失われた子どもの記憶や
草いきれを漂わせた
後ろ姿や
宇宙でたった1人
の悲壮を背負い
人間の言葉に
おののいた幼子の
汗や
銀河にうごめく
光の帯や
破れそうな蛙の皮膚や

飛び込みたかった
見たことがあるような
無いような
人影や
水や
木橋

僕も
たくさんの
命と
すれ違い
今も
たった一人の悲壮を
抱えている

けれども
僕は弱く
滅びを前にして
怖じ気づき
暖かい肉声
を求め
弱さの自覚に
しびれていく

滅びは遅延され
大地は震え
雨は
ごうごうと流る
苦しい息づかいが
大気を収縮され
時折
爆発的に
笑う
このことが
不規則に
電撃のように
しばらく続くのだろう

僕は暖かい歌声を
求めて
止めどなく自由落下
している
わからない
わからない
愛している

弱さの自覚を
打ち砕きながら