【詩作品】清冽な苦悶の空に
苦しいです
ここに本当にいてよいのかしら
のどの奥に塊があるようで
それは僕の見たことのない嗚咽のようです
風が吹き
日が照り始める 雨が収まったから
日なたにあぶられた水が空に昇っていく途中に
この世界を温かく包む
おじいちゃんの家を思い出します
この世界では子供が生きる前にたくさん死にました
生きることができなかった子どものために
何ができるかと
不自由な少年である僕が考えて
できることはなかったのです
今を楽しもうと誰かが言います
何年か経てばいい思い出になると誰かは言います
この通りは妙に明るい
僕のオレンジに揺れる目の表面に
僕らは
生きることにつかれた少年の自分を
今の40代の僕が見ています
少年の僕のおずおずした笑顔に
40代の僕は射すくめられています
今を楽しもう
友達を作ろうと誰かが言います
僕が切望した友達は多くが去っていきました
僕も友達や恋人を裏切りました
それでも好きになってくれたという思い出が
君を包んでいるんじゃないか
と僕は誰かに言われています
僕が愛されているとき
僕は震えていた
喜びの中で僕は明日に震えていました
本当に生きてよかったのか
なのに生きているわけです
生きていいはずなのです
それなのに
体がつながっているときにも
僕は震えていた
震えるということを抱きしめあうから
それが大切なのかもしれない
抱きしめあうことで
強くなるのかもしれない
しかし僕は傷つけている
僕は自分と相手の空間を切り裂いている
本当に愛していいのか
本当に愛されていいのか
ずっとずっと
いいとか悪い話ではないのに
答えを出さなくていいのに
僕は叫んで君を呼ぶ
すべてが燃えて焦げていく
一瞬に蒸発して
ずっと苦悶している
空が美しく
山を切り開き
谷をつくる
清冽な緑の水が
果てしなく
下っていく