「東日本大震災「がれき処理」交付金150億円 使用の7割100億円超“がれき以外”」その構造を再点検する
震災がれき広域処理の国家予算が、瓦礫以外に使われているという記事です。
これが取り上げられたのは、堺市ががれきを処理すらしていないのに、環境省が交付金を与えてしまったことに異議を唱えた私たちの仲間が堺市に交付されたお金の国庫返納を求めて裁判を起こした裁判の一審判決が先月大阪地裁で出たからです。
私もこの判決の日の原告記者会見を傍聴しました。
◆返還求め住民訴訟
「被災者の生活支援は不十分。堺市に出された交付金を被災地に回すべきだ」
堺市の自営業、本多真紀子さん(57)は4月、記者会見でそう憤った。
環境省が自治体のごみ処理施設整備を後押しする「循環型社会形成推進交付金」。堺市は平成25年3月、この交付金の「復旧・復興枠」から約40億円の支出を受けた。
市はこの交付金と震災復興特別交付税を、ごみ処理施設の新設と既存施設の改修に充てた。だが、震災がれきの広域処理は一度も行っていない。同市の竹山修身市長は、かつて市議会で、処理を引き受けずに交付金などを受け取ることの是非を問われ、「財源確保は首長の責務。ありがたくいただきたい」と答弁し、批判を浴びた。
本多さんは、市を相手取り交付金などの国庫返納を求める住民訴訟の原告となったが、先月の大阪地裁判決では、「交付決定は適法で返還義務はない」として請求を退けられた。本多さんらは判決を不服として控訴している。
◆受け入れは5団体
同交付金の復興枠は震災後の23年度に新たに設けられた。会計検査院や環境省によると、被災地外でのがれきの広域処理を推進するという名目で23~25年度、この枠から計約150億円が15自治体・団体に支出された。
大阪市などのように交付金を受けずに処理を引き受けた自治体もあるが、交付団体のうち、実際にがれきを受け入れたのは秋田、静岡両市など5自治体・団体(交付金額は計約42億円)にとどまった。
会計検査院も「広域処理の推進に十分な効果を発揮したのか確認できない」と疑問を呈している。
◆政府も不備認める
なぜ、こうした事態が生じたのか。その大きな要因とされるのが24年3月に環境省が出した通知だ。そこでは実際にがれきを処理しなくても、自治体が受け入れ条件を「検討」しさえすれば、「返還の必要はない」という曖昧な基準が示された。
放射能汚染への懸念から広域処理が進まない中、堺市への交付金についても、環境省側の判断で復興枠での支出が決まったという。
「環境省に金が集まりすぎたのでどうにかしなきゃと、『振り込む詐欺』という事態になったのでは」
先日一審が非常に不可解な判決で、「大阪地裁判決では、「交付決定は適法で返還義務はない」として請求を退けられた。本多さんらは判決を不服として控訴」しているのです。
この記事でも、瓦礫受け入れが放射能リスクの心配から自治体の反対を受け、進まず、(またそのすぐあとに瓦礫の量も当初見積もりよりずいぶん少なく、瓦礫広域処理の必要性が全国で疑問視された)、とりあえず予算消化を焦った環境省ががれき処理を処理しなくても「検討」さえすれば予算を交付するという方針を立てたからでした。
「環境省に金が集まりすぎたのでどうにかしなきゃと、『振り込む詐欺』という事態になったのでは」というのは大問題なんです。
被災地や被災者のニーズを十分聴取し、必要な額を予算請求するのではなく、とりあえず、震災で巨額の予算を要求し、それが「絆」ムードで認められてしまうということが問題です。で予算が執行できなくなると場当たり的に「がれき処理の実績」がないものにもどんどん予算を出してそれが100億という少なくないお金になってしまったのです。
予算を出すなという話ではありません。むしろ政府がむりやり政策をゴリ押しし省益を拡大するために大きな見取り図を描いて、その間違いやずれが全国の市民や被災地を含めた自治体の疑問にもかかわらず修正されないということが問題なのです。
災害において、国は自治体をサポートし、自治体は復旧や被災者支援をしっかりすべきで、そのための国費投入は全く否定しませんし、災害法制を適時適応し、予算をつければよいのです。
しかし本来災害の規模や必要性から考えても、理解できない予算の要求や執行は、どこかで歯止めなければ、政府の見積ミスや、政府の暴走で、被災地や全国に無用の混乱をもたらし予算の乱費を招くということです。
どこかで、このような「政治災害」とも呼べるものを止める仕組みが必要だと思います。
ここから教訓をくみ取るべきです。
そうしないとむしろ、今後災害が起きたときに、必要かつ適切な国や自治体の計画、予算が理解が得られなくなります。
ちなみに沢田嵐さんが出した『日本が“核のゴミ捨て場”になる日 震災がれき問題の実像』で、堺市の裁判の原告本多さんが堺市の事例を報告しています。
私は大阪市の震災がれき受け入れ是非をめぐる騒動を報告しています。