細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

仕事とやりがいとメンタルヘルス。

以下の文書を読んだ。
http://mba.kobe-u.ac.jp/life/thesis/workingpaper/2005/WP2005-12.pdf神戸大学栗岡住子氏の研究である。

lessorさんの日記2009-07-01 - lessorの日記福祉職での仕事のあり方についてコメントしたので、ネットをしらべたらこんな資料が出てきた。
職場で、如何に「燃え尽き症候群」を防ぐかが管理者の留意すべきこととして心理学的見地から分析されている。ここでは「小括」つまりまとめの部分を引用し、自分の言葉に置き換える。とりもなおさず、自分のことのようだったからだ。かつての職場で、ストレスと苦悩と夢の中で、自分が痛んでいったのは全て悪いとは思っていない。あのことがなければ学ばなかったことがたくさんあるだろうから。ただ、自分と周囲との関係をどう考えるか、今後どう捉えていくか。そのヒントになりそうなものをlessorさんの日記に触発されて調べて書いてみた。おそらく基本的なミスや知識の欠落が見られると思うので、ご指摘くだされば幸いです。
最初に書いておくとこれはやはり自由と参加の問題である。

第4項 小括
働き方がストレス反応や職務満足を規定する程度に、モデレーターとしてのソーシャルサポート*1、休暇取得、リーダーシップがどのように影響を与えるかを確認した。仮説1 では、「職務要求― 自由裁量モデル」における働き方の区分によるストレス反応や職務満足の差異を比較し、社員や企業にとり最も理想的な働き方は、職務要求と自由裁量が高いActive-jobの状態であることがわかった。一方、Passive-jobはストレスが高く職務満足度が低い結果であった。この結果は、従来、労働衛生上ハイリスクであると考えられていたHighstrain-job だけでなく、Passive-jobの状態にもメンタルヘルス施策が必要であることが示唆される。したがって、高業績で働きがいのある企業を目指すためには、Active-jobの状態を維持できるジョブ・デザインを配慮した人的資源管理が必要であることに加え、職務要求と自由裁量のバランスのよい働き方をデザインしHighstrain -jobやPassive-jobの状態で働く従業員を減らす必要があると考える。

簡単に言うと仕事は大変だが、自分の判断が活かせるなら人はそんなにストレスでつぶれない。問題はpassive=受身の、あるいはhi-strain=キツイ(緊張度の高い)仕事である。やりがいもあるいは、自分の中の仕事の位置づけも曖昧なまま、やらされるだけの仕事がたくさんなら人はつぶれるか、ヤル気をなくすというしごくもっともなことである。ストレスが高い仕事だけでなく、ただただ来る日も来る日も意味もわからずやらされる、あるいは自分が意思決定に参加したくても全然できない仕事については、なんとかしないといかん、へらさないかんということだろうと思う。また非常に精神的に疲弊しやすい業務につかせ続けることもいうまでもなく危険である。

仮説2 では、働き方がストレス反応と職務満足を規定する程度を確認した。Karasek( 1979)の「職務要求― 自由裁量モデル」では、職務要求と自由裁量が同時に高ければ、職務満足が高まることが実証されていたが、本研究では、職務要求や自由裁量が職務満足を有意に高めることはなかった。しかし、ストレス反応に対しては、職務要求はストレス反応を高め、自由裁量はストレス反応を軽減し、同時に高い場合は、ストレス反応を軽減することが確認できた。これは、Karasek& Theorell(1990)など、多くの産業ストレスの研究と同様な結果であった。したがって、職務要求に応じた自由裁量があればストレスを低下させることができると考えられる。

仕事の満足は各人の個体差が大きいから、一概にいえないにしても、しばりややらないといけない仕事に対しても、自分の判断が生かせるなら、ストレスがましになるということ。

仮説3では、働き方がストレス反応や職務満足を規定する程度に、ソーシャルサポートと休暇取得、管理者のリーダーシップ行動にモデレーター効果*2があることがわかった。例えば、職務要求が高く多忙な状況で、なおかつそれに応じた自由裁量がない働き方であっても、管理者が部下を意思決定に参加させるなどの参加型行動をとることで、職務満足を高めることができる。さらに、部下の目標達成に対する成熟度が低い場合は、パフォーマンスの高いリーダーシップ行動をとることにより、部下の職務満足を高めることができる。したがって、管理者は部下の成熟度や業務要求の程度など、状況に応じたリーダーシップ行動をとることで、部下の職務満足を高める配慮が必要であろう。

やはり当たり前のことだが、管理者が部下の様子をきっちり把握することが必要だといわれている。

一方で、従来は職務満足を高めたり、ストレスコーピング*3の効果があるといわれていたソーシャルサポートではあるが、本研究の結果では、自由裁量の高い社員に関しては、ソーシャルサポートはストレス反応を高める結果となった。

つまりあれこれ世話を焼かれるのをいやがられる社員もいて、気を使われると、俺は自分できちんとやりとおしたいのになんで「つかれていない?」とかいわれるのか。それがしんどいという社員もいる。

この結果は、部下が持っている自由裁量のレベルにより、管理者や同僚がサポートする程度を調整する必要があることが示唆される。そして、自由裁量の高い社員や、専門の知識や技術を持つ社員には、ソーシャルサポートを受けることが、必ずしもストレスを低下させることにならないことを認識しておく必要があろう。しかし、仕事を進めるうえで、職場の協力を得たり、関係者に意見を聞くなど、Folkman &Lazarus(1984)の指摘する問題焦点型のコーピング攻略の情報探索は、管理者や同僚のソーシャルサポートなくしては得ることが難しい。そのうえ、関係者の意見を聞くことなく、独り善がりの仕事をすることは、企業の不祥事や誤った意思決定など様々な問題をはらんでくるであろう。そのためには、自由裁量の高い社員に対しても、ストレスを高めない形でのサポートは必要であると考えられる。具体的には、社員同士が、様々な交流を通じて、お互いに情緒的・道具的・情報的なサポートをし合えるような集団維持機能と、それを促進する管理者のM行動*4が必要であると考えられる。

あまり本人におせっかいを焼きすぎると嫌がるが、ほったらかすと危険である。外部の風がないとどんなに有能な人でも煮詰まる。だから連携や、他者の意見をいいやすい、ききやすい環境が必要だ。これは何より管理者にもいえる話だろうけど。

休暇取得に関しては、業務要求が高い社員には職務満足を高めるという結果であった。すなわち、管理者が多忙な部下に対して休暇取得を勧めることは、職務満足を高める1 つの手段として望ましい方法だと考えられる。しかし、自由裁量が高い社員にとっては、休暇取得がストレスを高める結果であることから、ソーシャルサポートもあてにせず、休暇も取らず、仕事に奮闘している社員が少なからず存在することも推測できる。事実、うつ病などで職場不適応になる社員は、残業や休日出勤もいとわず、真面目に仕事に励み、1 人で仕事を抱え込み、「休んでもやることがない」という理由で、有給休暇を取得しない典型的な仕事依存症のようなタイプである。このようなタイプの社員が少なくないA 社では、納得できる結果であるが、仕事依存症は、うつ病のハイリスクである。仕事依存症の社員には、強制的に休暇取得をさせても、ストレスが逆に高まるので、仕事生活と私生活のバランスについての意識改革が必要である。
一方で、B社の場合は、ソーシャルサポートによりストレスがコーピングされるというA 社とは異なる結果があり、社員個々人、また組織風土により、ソーシャルサポートに対する認識や必要性が異なることも考えられる。Sauter, et al.(1996)が、組織の健康は組織の特性の影響を受けるとしたNIOSH*5の健康職場モデルのように、仕事依存症タイプの形成を阻止するためには、組織風土などの組織特性を変革することも重要であると考えられる。

「仕事依存症の社員には、強制的に休暇取得をさせても、ストレスが逆に高まるので、仕事生活と私生活のバランスについての意識改革が必要である。」

まず自分にとって仕事とは何か、それを考えないとかけがえのない人生がすぐに、自己犠牲やなにかの美名の下に、自己破壊につながる。それは本人の意識もあるがそれが社会体制と強く内的に結びついてしまっている。日本社会の究極のそれは、特攻精神につながるかもしれない。

「仕事依存症タイプの形成を阻止するためには、組織風土などの組織特性を変革することも重要であると考えられる。」

仕事は先ずは「やらなければならない」ものとイメージされそのような側面もある。しかしながら、おそらく私は日本社会自体が多く「タコツボ」化と、「嗜癖・依存」「いきがい」を企業社会に求めてきた点で、なかなかそれは変わらないのだとも思う。まずこれは人が生きてなんらかの活動をする動機や、その動機が形成される文化や過程の議論もなければならないと思う。つまり社会の様々な場所にもう一度、自分は何をしたいか、何をしたら気分がいいかという議論を戻しおきなおすのである。

自分がやりたい、やれるという自由は必須である。しかしそれは何かによっかかる側面をもつ。僕自身相当依存的な性格であるが、その不完全さから初めて自分がいろいろ覚えていくしかないだろうなと思う。

それと「組織風土」というのはやはり自由や民主的な意思決定プロセスが重要である。任務があるからこそ、しかしその任務の問い直し・検証が必要だ。これを欠くなら力や絶望が支配する今のような国会みたいなことになってしまう。これは社会体制と個々人の生き方の接点にある問題なのだ。
これは恐らく一般企業でのありようを念頭に置いた研究であるが福祉など財源予算が少なく、大きなメンタルサポートや労務管理対策のとれない組織や、また運動体や集まり等では、どうするのだろう。そのような場面では多く、本人も回りもボランタリーな精神を基礎においている場合も多い。いかにするか?

以上今日の勉強終了。ゆっくりしよう。

※心理学用語は各自しらべてちょ。コーピング=対処行動、M行動=Mはメンテナンスの略

*1:ソーシャルサポート→file not found | 東京大学法学部・大学院法学政治学研究科

*2:モデレーター=基本的に調停者等の意味がある。ここではストレスを「緩衝」する効果くらいの意味かhttp://db.jil.go.jp/cgi-bin/jsk012?smode=zendsp&detail=E2001110017&displayflg=1&pos=185030&num=96973他に司会者という意味や原子力エネルギーの分野では「減速材」という意味もある。

*3:ストレスコーピング→http://www.nutshell.jp/mind/2004/09/01_5.html

*4:PM—˜_

*5:国際安全衛生センター|国別情報|アメリカ 国立労働安全衛生研究所(National Institute of Occupational Safety and Health, NIOSH)について