細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

1分でわかるがれき広域処理の問題点に書かれていない部分はこれだけ膨大です(1)

1分でわかるがれき広域処理の問題点 - 細々と彫りつける
実はきのう書いたこのエントリーは簡潔で、今日はどういう根拠に基づいてああいうことを書いたかということを弁明するエントリーです。1・2とあります。

ガレキ広域処理の根拠をなしている法律は昨年8月に成立した二つの特措法です。

①災害廃棄物特措法(東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法
(平成二十三年八月十八日)
(法律第九十九号))

まずこちらから片付けましょう。

第一条 この法律は、東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理が喫緊の課題となっていることに鑑み、国が被害を受けた市町村に代わって災害廃棄物を処理するための特例を定め、あわせて、国が講ずべきその他の措置について定めるものとする。
(定義)
第二条 この法律において「災害廃棄物」とは、東日本大震災(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う原子力発電所の事故による災害をいう。以下同じ。)により生じた廃棄物(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。第四条第四項において「廃棄物処理法」という。)第二条第一項に規定する廃棄物をいう。)をいう。
(国の責務)
第三条 国は、災害廃棄物の処理が迅速かつ適切に行われるよう、主体的に、市町村及び都道府県に対し必要な支援を行うとともに、災害廃棄物の処理に関する基本的な方針、災害廃棄物の処理の内容及び実施時期等を明らかにした工程表を定め、これに基づき必要な措置を計画的かつ広域的に講ずる責務を有する。

ここには放射性物質なんて言葉は一文字も出てきません。つまり災害廃棄物が事実上放射能汚染されているかどうかなんか勘案されずに法律がつくられた恐れがあるのです。
で、国が音頭をとれるようにしました。


「広域的な協力の要請」という言葉が出てきます。これで国がいろんなことをあれこれして、それを全国に「要請」する準備が出きました。ここに石綿感染症、悪臭、無害化という言葉は出てきますが、その他の汚染物質、放射性物質という言葉が出てきません。港湾施設や工場(原発を含む)が被災したのにとてもゆるい法律です。
法律以前に環境省によってマスタープランというものがつくられましたがそこにも「放射性物質」は出てこないわけです。
 つまり、広域処理推進したい人がさす「安全」とは、日本海洋学会や国立環境研究所ですら指摘する複合的な汚染状況を無視したもので、この法律の規定と同じように、放射性物質やら有害物質を除いたものです。気仙沼で重油タンクが22基被災したとか、コンデンサーがどこにいったかわからないとか、港や船がさらわれてもとに何があったかも把握しきれないという状況はこの法律からは見えてきません。海外の通信社はけっこう早くにそれを報じているのですが、日本のマスコミは沿岸部の汚染に無頓着です。その口でよく復興支援なんて寝ぼけたことが言えると思うわけですが。
 私が安全危険以前の問題だというのはここに理由があります。注意を要する物質について法律に書いていないからです。びっくりですね。

第六条 国は、災害廃棄物に係る一時的な保管場所及び最終処分場の早急な確保及び適切な利用等を図るため、特定被災地方公共団体である市町村以外の地方公共団体に対する広域的な協力の要請及びこれに係る費用の負担、国有地の貸与、私人が所有する土地の借入れ等の促進、災害廃棄物の搬入及び搬出のための道路、港湾その他の輸送手段の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。
2 国は、災害廃棄物の再生利用等を図るため、東日本大震災からの復興のための施設の整備等への災害廃棄物の活用その他の必要な措置を講ずるものとする。
3 国は、災害廃棄物の処理に係る契約の内容に関する統一的な指針の策定その他の必要な措置を講ずるものとする。
4 国は、災害廃棄物の処理に係る業務に従事する労働者等に関し、石綿による健康被害の防止その他の労働環境の整備のために必要な措置を講ずるものとする。
5 国は、海に流出した災害廃棄物に関し、その処理について責任を負うべき主体が必ずしも明らかでないことに鑑み、指針を策定するとともに、早期に処理するよう必要な措置を講ずるものとする。
6 国は、津波による堆積物その他の災害廃棄物に関し、感染症の発生の予防及び悪臭の発生の防止のために緊急に必要な措置を講ずるとともに、早期に、必要に応じ無害化処理等を行った上での復旧復興のための資材等としての活用を含めた処理等を行うよう必要な措置を講ずるものとする。

 で、こういう前提でスタートしたわけですから広域処理反対派ならずとも、何人かの首長はびっくりしました。

放射性廃棄物は、基本的には拡散させない』ことが原則というべきで、不幸にして汚染された場合には、なるべくその近くに抑え込み、国の責任において、市民の生活環境に放射性物質が漏れ出ないよう、集中的かつ長期間の管理を継続することが必要であると私は考えています。非常時であっても、国民の健康と生活環境そして日本の未来を守り、国内外からの信頼を得るためには、その基本を守ることが重要だと思います。
http://www.city.sapporo.jp/kinkyu/20120323mayor.html
2012年3月23日
札幌市長 上田文雄

数値がどうこうの議論より、まず汚染された、あるいはその懸念がある物質は集中管理を行うというのは放射能以前の廃棄物処理原則です。

環境汚染を起こさないように廃棄物の無害化処理をする場合、重要なことは廃棄物の発生源で可能なかぎり各廃棄物の特性に応じた処理をほどこすことが大切であり、廃棄物の混合処理は効果や費用から見ても問題を解決しにくくする。さらに、「製品」といっても使用期間がきわめて多様であって、一回きりの使い捨てのものから、建築材のように使用期間が長いものまであり、「製品」をそのライフサイクルで把握して、廃棄物の発生量やリサイクルの可能性や分解性を検討することが必要である。
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~j15275/haiki1.html北海道大学 吉田文和 専攻は産業技術論、環境経済学。 )

ゆえに、混合廃棄物をコンクリート化できないか。可燃物を土と混ぜて上にかぶせて防潮林を作れないかそういう提案と実践が出てるんです。放射性物質を含んだ廃棄物は一般焼却炉で燃やしたことがなかったです。環境省の災害廃棄物安全評価検討会議の酒井委員などが懸念したように汚染物質の濃度のばらつき、総量を把握することすら困難です。だから高濃縮と大気や水の拡散の系に入れるよりは一か所に固めたり、地下水系への汚染への配慮をしながら人間がそこで生活するのではない場所の建設の資材(主に防潮林・震災記念公園の土台など)にすることも長い目で見れば重要なのです。(すでに福島第一原発の地下には日量400トンの汚染地下水が生成され続けています。元京大原子炉の海老沢先生によると陸地表面に出た汚染物質は推定で汚染総量の1パーセントです。他は海や格納容器の中や格納容器から漏れ出した汚染水となっています)

ゆえに新潟県からはこういう提案が出てきます。当然です。それが普通だからです。
まずなぜ広域処理なのか。皆さん胸を手に当てて考えましょう。

 国は、被災地の災害廃棄物処理を全体的に見通しつつ、被災地域間の災害廃棄物処理の進捗の違いを調整して、できるだけ域内処理できるよう調整すべきと考えるが、現在どのような調整を行っているか。また、そうした調整を行っていない場合は、その理由を示されたい。
(6)阪神淡路大震災においては、仮設焼却炉は発災後約3か月後には設置され始めていたが、今回仮設焼却炉の大半の設置が約1年後以降と著しく遅れているのはなぜか。
(7)阪神淡路大震災では、兵庫県内において、可燃物の23%程度が埋立処理がされたが、なぜ、放射性物質の濃縮の危険がある東日本大震災の可燃物の埋立処理を行わないのか。
(8)このように、広域処理の必要性が明確でない中では、むしろ広域処理により生じる多額の国家予算を、被災地支援に有効利用すべきではないか
(例)岩手県のホームページによれば宮古地区広域行政組合の処理単価が1トン当たり16,300円なのに対し、財団法人東京都環境整備公社の広域処理単価(運搬費含む)は1トン当たり59,000円となっている。広域処理引受量162万トンで差額を算出すると、約700億円となる。)
(9)なお、環境省は、5月21日に、岩手県宮城県の広域処理必要量の見直し結果を発表しているが、従来の必要量はどのように見積もったのか、また、今回見直しの理由と内容について、改めて明確に回答願いたい。

環境大臣に対し、東日本大震災により生じた災害廃棄物の放射能対策及び広域処理の必要性に関する再質問を行います。
http://www.pref.niigata.lg.jp/haikibutsu/1337551290100.html

でこれは以前のエントリで紹介した通りお金と何らかの意向に基づいているわけですね。合理的論理的に環境汚染を最小限にしようとする首長とそうでない首長がはっきり分かれてきているわけです。

岩手県の廃棄物処分場の残余量が百数十万トンあります。これとガレキ防潮林、コンがらの埋め立てによる処分を行うとほとんど残りません。

新潟県知事は常識的な行政マンです。
しかも首長は行政の長ですから、国が簡単にこれまでの法律の規制を緩和してきたらおかしいぞと思わないと自分の地域が守れないわけです。行政の長は法律の執行者だからです。泉田知事は経産省出身で、自分の自治体には柏崎刈羽原発があります。放射能の問題が厄介なのは、ご存知です。
放射能の問題だけでなく費用対効果や原則の確認も行われています。泉田さんが環境大臣だったらよかったですね。
しかも彼は被災者支援には消極的ではありません。大阪○新のハシ○トとかイ○ハラ閣下なんかとはちがいます。彼らが被災者をいたわる言葉を聞いたことはありますか。天罰だとかなんだとかおかしいわけです。で、瓦礫だけは受けている。

さて原発が出てきたので、ガレキ広域処理のもう一つの柱放射能汚染対処特措法に向かいましょう。


放射能汚染対処特措法(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法
(平成二十三年八月三十日法律第百十号))

↓に続きます
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