巨星逝く
赤塚不二夫が亡くなったと昨日のニュース。丸谷才一は「袖のボタン」の中で「赤塚不二夫論」というエッセイを書いていた。
優雅でしやれてゐる赤塚不二夫は昏々と眠りつづけることで、この乱雑でしかも愛嬌のない現代日本に対し否と言ふ。眠れ赤塚。自分の世界を守らうとすれば、眼をつむるしかない。
これは意識を失ったまま病院のベッドで眠る赤塚に語りかけたものである。これを読んで感動した覚えもある。けれど、「否」であったのか。だとしたら、赤塚が死んだということはその拒否の完成だろうか。
間違っているかもしれないが僕はこう思いたい気もしている。つまり、世界に対する拒否をやめた。そしてそのことは「否」よりもより深いものだろうと。
本日ソルジェニーツィン逝く。少し前までシベリアのことを考えていたが…情けないことに僕は映画版の「イワン・デニーソヴィチの一日」しか見ていません。けれど、シベリアの凍土の上でレンガを積んだり、いろいろ出し抜きあいがあったり…なぜこのように処遇されるのかという強い怒りより、もっとそれをもひっくるめて生き抜くことの身も蓋もない倫理や、その身も蓋もなさがどのように心を深めながら蝕むのか気になったのだった。
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