細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

1分でわかるがれき広域処理の問題点に書かれていない部分はこれだけ膨大です(2)

http://d.hatena.ne.jp/ishikawa-kz/20121118/1353228029の続きです

放射能汚染対処特措法(原子力事業者の責務)第五条  関係原子力事業者は、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関し、誠意をもって必要な措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策に協力しなければならない。
→この規定が十分なものと誰が思うでしょうか。関係原子力事業者というのは東電です。東電は「誠意をもって必要な措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策に協力」だけでいいそうです。汚染物質を出した責任があるという文言が抜けています。驚きです。

 すでにOECDは1972年に汚染者負担原則というものを提唱しました。

環境対策費用は汚染の原因者が第1次の負担者であるべき、とする費用負担に関する原則。1972年にOECD(経済協力開発機構)が「環境政策の国際経済面に関する指導原理」の中で提唱した。OECDのPPPは、国際貿易上の各国の競争条件を均等化する、公正な自由競争の枠組みを作るための原則であった。経済学的には、外部不経済を内部化するための費用は汚染の原因者が支払うべきで、環境対策であっても税金を使って補助金を与えるのは不公平で非効率、という認識もある。日本では公害問題とその対策の経験の中から、PPPを公害対策の正義と公平の原則とする独自のPPP論が生まれた。公害防止事業事業者負担法や公害健康被害補償制度に見られるように、原則の適用対象が被害の救済やストック公害の除去にも拡張された。この考え方は当初、日本独自の特殊なものと考えられたが、有害廃棄物の不適正処分地を浄化するために制定された米国のスーパーファンド法など、現在では国際的にも広がっている。
( 植田和弘 京都大学大学院教授 )
http://kotobank.jp/word/%E6%B1%9A%E6%9F%93%E8%80%85%E8%B2%A0%E6%8B%85%E5%8E%9F%E5%89%87

 瓦礫処理に限らず汚染されたものに関する議論にこのお話が登場しません。なぜでしょう。原子力損害賠償法を見てみましょう。

第三条  原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。

この「ただし」が曲者ですね。国会事故調では「人災」といっていますがね。

第六条  原子力事業者は、原子力損害を賠償するための措置(以下「損害賠償措置」という。)を講じていなければ、原子炉の運転等をしてはならない。

じゃあ原発できないじゃないと思う皆さん。続きがありますよ。

第十六条  政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力事業者(外国原子力船に係る原子力事業者を除く。)が第三条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行なうものとする。
2  前項の援助は、国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内において行なうものとする。

政府がお金を出せます。ここで底が抜けているわけです。

放射能汚染対処特措法で東電の責任が問われず
国の重い要件が書かれているのはこの一環だと思ってください。でもこのままでは国が倒産してしまいますね。

放射能汚染対処特措法です。

第三条  国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることに鑑み、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関し、必要な措置を講ずるものとする。

いいこと書いてあるなと思いますか?
ちがいます。

第五条  関係原子力事業者は、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関し、誠意をもって必要な措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策に協力しなければならない。

どう考えても原子力損害賠償法の規定より後退してます。
つまり協力はさせる、けど責任はないということです。

では協力の中身は何で
協力しなかったらどうなるか?

第十条  関係原子力事業者は、この法律に基づく措置が的確かつ円滑に行われるようにするため、専門的知識及び技術を有する者の派遣、当該措置を行うために必要な放射線障害防護用器具その他の資材又は機材であって環境省令で定めるものの貸与その他必要な措置(以下「協力措置」という。)を講じなければならない。
2  国又は地方公共団体は、この法律に基づく措置が的確かつ円滑に行われるようにするため必要があると認めるときは、環境省令で定めるところにより、当該関係原子力事業者に対し、協力措置を講ずることを要請することができる。
3  地方公共団体は、前項の規定による要請を受けた関係原子力事業者が当該要請に応じないときは、その旨を環境大臣に通知することができる。
4  環境大臣は、第二項の規定による要請を受けた関係原子力事業者が正当な理由がなくてその要請に係る協力措置を講じていないと認めるときは、当該要請を受けた関係原子力事業者に対し、当該協力措置を講ずべきことを勧告することができる。
5  環境大臣は、前項の規定による勧告を受けた関係原子力事業者がその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。

協力は「器具を貸す」ことで協力しなければ「公表」で終わりです。
罰則はありません。


(関係原子力事業者による廃棄物の処理等)第九条事故に係る原子力事業所内の廃棄物の処理並びに土壌等の除染等の措置及びこれに伴い生じた土壌の処理並びに事故により当該原子力事業所外に飛散したコンクリートの破片その他の廃棄物の処理は、次節及び第三節の規定にかかわらず、関係原子力事業者が行うものとする。

敷地内のは自分で片づけろと。

第五十条  環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、関係原子力事業者の事務所、事業場その他の場所に立ち入り、第十条第一項の規定により当該関係原子力事業者が講ずべき協力措置に関し、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2  環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、第十七条第二項(第十八条第五項において準用する場合を含む。)の規定により指定廃棄物の保管を行う者の事務所、事業場その他の場所に立ち入り、当該保管に関し、帳簿書類その他の物件を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度において指定廃棄物を無償で収去させることができる。
3  環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、特定廃棄物の収集、運搬、保管若しくは処分を行った者その他の関係者の事務所、事業場、車両、船舶その他の場所に立ち入り、特定廃棄物の収集、運搬、保管若しくは処分に関し、帳簿書類その他の物件を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度において特定廃棄物を無償で収去させることができる。

50条の一項は東電に調査権限があるのか?と思わせておいてそれ以下の1〜5は全然別の話になっていきます。

災害廃棄物の話は汚染レベルが低いから関係ないんじゃないの?と思うあなた!
こういうのもあります。

廃棄物処理法の適用関係)
第二十一条  対策地域内廃棄物であって事故由来放射性物質により汚染されていないものについては、廃棄物処理法の規定は、適用しない。
第二十二条  廃棄物処理法第二条第一項の規定の適用については、当分の間、同項中「汚染された物」とあるのは、「汚染された物(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号。以下「放射性物質汚染対処特措法」という。)第一条に規定する事故由来放射性物質によつて汚染された物(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)又は放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和三十二年法律第百六十七号)の規定に基づき廃棄される物、放射性物質汚染対処特措法第十三条第一項に規定する対策地域内廃棄物、放射性物質汚染対処特措法第十九条に規定する指定廃棄物その他環境省令で定める物を除く。)を除く。)」とする。

廃棄物処理法では放射性物質というか核燃料物質や核分裂生成物に新たに汚染されたものをそれがいくら汚染度が低くても処理できません。
従来の放射線管理の法律が敷地内しか想定しておらず、原子力事業者や医療放射性廃棄物、実験放射性廃棄物については特殊な業者が一括管理処理していたからなんですね。

 じゃあ10㏃のゴミはどうするの?とかなります。よくクリアランスだから大丈夫とかいいますがクリアランスはほとんど機能していないうえに数十各種の検認を受けて不燃廃材だけはリサイクルできるとしたもので、原子炉規制法の管轄にあるものです。

 だからクリアランスの準用も私は変だなあと首をかしげています。ちなみに新潟県知事は資源エネルギー庁に努めていましたが札幌市長は、放射性廃棄物関連の法律を専門にしておられた弁護士だそうです。

 で、すごく小さな汚染レベルのものを燃やしていいかとかとは別に、22条で読み替えて一般廃棄物にされてしまいました。「廃棄物処理法第二条第一項の規定の適用については、当分の間、同項中「汚染された物」とあるのは、」とありますね。これは放射能汚染された廃棄物は普通の廃棄物処理場ではあつかわないということです。今回は事故で放射性物質が出たのですが、「事故で汚染されたもので原子炉規制法や放射線障害防止法で処理されるもの=おそらく原子炉建屋内、敷地内の廃棄物・高レベルなもの」「事故で汚染されたもので指定廃棄物などの特別に今回の特措法で定めた8000ベクレル以上に汚染された環境中の廃棄物」は廃棄物処理法が適用されません。それを除いたものが一般廃棄物になりますよということです。
 つまり8000㏃までは一般廃棄物になりました。で、これを全国適用するから大騒ぎになり、ごみで薄めるとか独自基準を作るとか環境省が自治体に働き掛けておおよそ相当危険なことをやりました。全国でそんなことしていいわけがありません。数値の大小ではなく「考え方」が法律や行政では大事です。

 さらに被災地ではどうか。「無主物」と東電が言ったことをはじめ、相当でたらめになって開き直っている。
 東北には汚染牧草から何からあります。もうほんとにどうしていいかわからない状況で、遠野市なんかは東電も政府も汚染牧草を引き取らなかったので自分とこの焼却炉で燃やしたという残念な話があります。栃木の汚染木質チップを引き取ってほしかった自治体も東電の火力発電所から断られたそうです。

 ということはこの放射能汚染対処特措法守れてないんですね。東電
 そもそも汚染を出したのは東京電力で、そこが責任をどうとるかという規定が一切ないからなんですね。瓦礫でも数十から数百までいろんなベクレルのものがあり、燃やすと濃縮されるわけで、それをシーベルトに換算してどうの、薄めるから大丈夫だのという自治体関係者はこの事故が東電事故だということを忘れているんでしょうか。

 事実として小さいレベルの汚染まで東電が引き受けられない。そんなことしたら会社が壊れてしまう。それは当然論理的にそうなります。他の原子力事業者も天文学的な負債を抱えて、そのたびに国が公的資金投入をしたら国が破たんしますね。だから小さいレベルの汚染はみんなで耐えようというのが今回の広域瓦礫処理だと私は思います。
 でもそれでは放射能汚染から国民を防衛する国是としては破たんしているといわざるを得ません。
 で小さいレベルの汚染について四の五の言うなやとお思いの方、それはちがいます。やはり東京電力さんがしっかり自身の責任を感じられ、国がごめんなさいしないとこの問題は東電公害事件解決はスタートに立てません。
 ですから小さい汚染をきっかけに、瓦礫に反対する人は「おかしいぞ」と声を上げ始めました。ひとりひとりいろんなきっかけで。それは最初はエゴだったかもしれない。しかし放射能汚染から自分の身を守ろうという自愛の心は実は他人の放射能汚染被曝にも敏感になるきっかけでもあると思います。

 日本は焼却炉大国で、優れた公害防止装置もある自治体もあればそうでない自治体もあります。健康被害が出るかどうかも全然わかりません。そういう放射線管理の能力がない自治体に小さい汚染だからといって国が協力をさせるというのはいかがなものなんでしょう。

 その評価はそれぞれで人に押し付けるものではありません。だから安全危険で議論がしにくいのです。しかし原則は確認できます。
 
 ①汚染された懸念のある廃棄物(でなくても普通の廃棄物でも)は原則現地管理です。
 ②環境省や国は広域処理にこだわって遠くの自治体に運ぶ愚を犯すのはやめましょう。
  コスト的にも復興予算の使い方としてもへんで被災者救援になっていません。 
 ③放射性物質は基本どの量のものも東京電力の敷地内から出たものです。

 原子力事故は例外的な事態です。だけどまず基本に立ち返らないと議論が混乱します。どさくさに紛れて、津波震災があったからと言って、現地でガレキ防潮林や震災記念公園構想が出ているにもかかわらず、濃縮拡散をそういう形でとどめようとしているにもかかわらず、国や自治体は意地になって広域拡散させるのはやめましょう。

 小さい汚染物だからと原則を崩していると、法の根幹が壊れます。それはやがて私たちの生命を破壊します。異常な広告費、異常なキャンペーン、復興予算の被災地外流用、これらは何なのでしょう。まったく言語道断、人倫に反するものです。

 どさくさに紛れて原則的な考え方を無視するのはやめましょう。