お前の心の病です
詩を書いているからといって、実際詩作品を読むばかりではなく、それは詩に関心があまりない人よりは読んでいるのかもしれないが、それは野球好きは夏はナイターを見るけどそうでない人は見ないってことと同じなのかはわかんない。
実は大学に入る前志望する学部は、社会学部か文学部だった。しかし政治経済学部に入った。受験の厳しさに怖れをなして、現実的に浪人せずに入れる大学を選んだ。親に迷惑をかけるには自分はもう受験勉強をする気力はない。しかしとりあえず大学は行っておきたいという非常に、ありふれた、志のないあり方だった。そして希望の学部に進むことを抑えて進んだのだが、結果としていい先生に出会うことができたので結果オーライである。もちろんそれとは別にそのころのメンタル面は非常にしんどかった。
ともかく最近社会科学周りの本をがさっと借りてきて読んでおる。といっても進捗状況は芳しくない。
- 作者: ハロルド・ガーフィンケル,山田富秋
- 出版社/メーカー: せりか書房
- 発売日: 1987/04
- メディア: 単行本
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あるリアリティを握ってそれに固執することは、現実が流動的であり、ひとつのことにばかりかかずらわっていると、周りが見えなくなるから不健全なのだとはいえる。ただ、しかしそこにこだわるそれなりの「理由」があったはずで、そこにはなんらかの「経験的」な法則性があったのだろうと思う。つまりよく「悪口をいわれている」とかそういうふうに感じるのにはそれなりの事情があったということなのだろうと思う。(往々にして、何かの困難の中にあるものはその経験をうまく語れないのである)
同時に、私の親が、私に「それは考えすぎだぞ」というのも今はわかる。素朴に考えれば、親は私のことを心配して「気のせいだ」といいたかったのだろうと思う。なぜそう思うのか、よくわからないからだ。だけど、そこをよく聴いてほしかったなとは思うが、まあ今となっては仕方がない。そこを考えても自分の現在がよくなっていかないし、それなりにこれまで私の話を聞いてくれた人がいるからだ。いない場合はどうなってしまったかわからない。一時期大変に荒れたり健康を害したのだけど。
エスノメソドロジーの第三、四論文から思い出したのは、自分自身のリアリティがうまくまわりとの関係の中で、ところを得ない感じであり、これは確かに「疎外」や「排除」というタームで捉えることもできるが、「リアリティ分離」や「切り離し」と呼んでいるのはいい得て妙な部分もある気もする。
- 作者: R.D.レイン,笠原嘉,塚本嘉寿
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 1973
- メディア: ?
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他にも図書館で借りた本がある。どれも重要だがR・D・レインの「経験の政治学」という言葉はいい言葉で、「エスノメソドロジー」の第三論文、第四論文にもその言葉が出てくる。互いの世界経験、つまりリアリティがぶつかり合う地点で、必ず相克が起こる。多くの紛争はそこから始まるのではないかと思う。それぞれが構成するリアリティは、いくつかの場合、それぞれのその時点での自分自身の核となるものとつながっているので、大変厄介で「政治学」と呼ぶような力関係や戦いに発展する。
これは商取引や、精神医学、対人支援、いさかい、日常のやりとり、家族、友人との会話、様々な場面でもんだいとなるものだろう。今第四論文「Kは精神病だ」は執筆者の担当するある学生のレポートを分析している。その学生の友人Kは、学生仲間たちから「どうも精神病ではないか」とみなされるようになる。学生自身はその経緯を「こういう次第でKの異常性に私や周りの人物は気づきました」という流れで書く。しかしそのように「Kは変だ」という扱い、あるいはそういうカテゴリーに入れ込んでいく経緯、流れ、そこでの言葉の運用規則を分析している。
重要なのは、これが医療者のカルテ等ではなく、友人との関わりを学生が記述し、レポートしたものだということだ。このような非公式の、つまりはインフォーマルな情報からでもある場合には分析できるとしていることが、エスノメソドロジーの魅力であり、ある場合にはわかりにくさとなるのではないだろうか。
これだけで、誰かを裁くことにはならないにしても、この作業はテキストクリティークに近いものではないかと思った。それはある事柄の記述であり、あるいはその記述の検証である。*1エスノメソドロジーを読む限り、どちらかに肩入れして分析しているという強いニュアンスは感じられないが、どちらかといえば構成上どちらかといえば負の属性をもたされる流れを分析するものであるようだ。だからもし何らかのケースが起きたときの分析の方法のひとつにはなりうる。素材自体の形成プロセスを扱うわけだから。
そしてまずその分析する「素材」自身が非常に波乱含みなことは刑事事件の調書などでよくいわれることであり、また伝聞情報をどう判断するかという際にもあらわれる。そこに「Kは精神病だ」の分析の方法は、人の言語行為そのものをたたき台にしているし、もっと詳しくあらゆる情報が開示されなくても事柄の奇妙さを浮かび上がらせることに成功している気がする。成功すれば、であるが。
またエスノメソドロジーのわかりにくさがどういうものであるか、非常に悩ましいが、エスノメソドロジーは人が対立の渦中やある範疇(カテゴリー)へと分離されていくやり方を、単なる排除論とはちがう形で展開した点が気になっている。
こういう場合エスノメソドロジーがどこに向かって調査をし、問題を考えていることが気になる。例えばR・D・レインは「反精神医学」と見なされたため、一般の読者には人気を誇って、ある時代のムーブメントを作ったものの、精神医学の世界からはキワモノ扱いされたという。レインの場合も様々な経緯があろうが気になることである。
とにかくまだ「エスノメソドロジー」は読み中なので、じっくりやろうと思う。他には
- 作者: ミルズ,Charles Wright Mills,鈴木広
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 1995/04
- メディア: 単行本
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- 作者: 宮内洋,今尾真弓
- 出版社/メーカー: 北大路書房
- 発売日: 2007/09
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- 作者: ミシェルフーコー,小林康夫,松浦寿輝,石田英敬,Michel Foucault
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/08
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- 作者: 野家啓一
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返却まで間違いなく全部は読めないので、いくつかは気になるところまで読んでみて、さらに研究したい時は続けて借りてみようかな。ゴッフマンの「スティグマの社会学」は家にあるし。
これらの作業は直接詩とは関係ないのだが、しかし自分の中ではそんなにきれいにつながっているわけではないが、それはどこかでつながっているのかなと思ったりもする。現実の「構成」とか文脈とかそういうものへの視座である。構成や文脈については文学も得意とするところだが自分はその議論はよくわかっていない。勘でやっている。
こないだ大山定一訳の新潮文庫版リルケ「マルテの手記」を古本で120円で買った。
*1:例えば発達心理学の浜田寿美男氏は知的障害者の調書を検証し、自白が導き出される構造を分析している。その本を私はきちんと読んではいないが、こちらのブログhttp://moltu.kawabatafarm.jp/?p=287を見る限りそれは発達心理を活かしたものであるとはいえ、恐らく似た動機をもっているとは思う。ただ、浜田の場合恐らく明確に権利擁護の立場から、自白の生成を強いる構造を暴くことに力点があるのかもしれない