細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

一番伝わるやり方

昨日心を落ち着けて、自分がいまどのような状態にあるか見つめていた。僕は感情的な人間なので、いろいろ思い悩んでくるとけっこう荒んでくる。しかも昨日受験仲間の方と飲み会があったのだが、心身ともにふらふらで欠席した。それが4時くらいである。みなさん出席できなくてすいませんでした。
 しかし荒れてから3時間休憩したら、ささくれが和らいできたので、焼肉をひさしぶりに食べに行った。近所で。野菜をたくさん食べた。不景気なのか、肉を前より分厚く切っていておいしい。しっかり夜は休んだ。体調はまずまず回復した。

 今朝、徳光さんが司会のテレビで草磲さんの会見を見た。
 目に悲しみを湛えていた。しかし毅然として、しゃんとして立ち居振舞っていた。感銘を受けたのは、あったことをありのままに話していた様子だ。特に「留置場に長くいたので、時間がありました。様々なことを考えました。はじめは酔いが残っていていたんですが、眠ることができて起きると(酔いが抜けていて)初めてことの重大さを考えることができました。」という趣旨の言葉。

 シンプルな言葉だけど、そこにいることの様子が伝わってきた。何かを無理に分けたりせず、率直に自分の手持ちの言葉で丁寧に話していた。

 「統合されたひと」ということを思った。何かの都合や、周りへの色目使いで、自分を分裂(引き避け)させないのである。建前と本音という2項対立が少ない。ただ深い深いそのままのその人の顔が、ありかたがそこにあるという感じだった。
 品格とか、ありのまま、とか感謝とか礼儀とか、そういう事事しさがないのに、それらが自然に身のこなしや言葉に現れている。昨日「裂け目」という言い方で書いたこと(http://d.hatena.ne.jp/ishikawa-kz/20090425)はあまりまちがっていなかったと感じた。今生じた裂け目を見つめているのだ。
 だから記者だけでなく僕もずいぶん余分なことを憶測し、問いかけているように思わせる厳粛さがあった。しかしそれがいかめしさとしてあらわれない。人間としての当たり前の気持ちや、事情をわかっていないのは、むしろ質問している記者たちや好奇の目で眺める私も含めた扇情的な欲望と経済である。それが草磲さんを通して鏡のように映し出されていた。それは裸がダメだとかいいとか、そういう議論の賛否にも割れていかないゆるがなさもあったように思う。それはしょげているように見えながら充分この騒動の大部分を一撃で鎮める効果をもっていたように思う。普通に後で思ったら恥ずかしかった上に多くの人が騒いでいることを奇妙に感じしかし覚悟して望んだように思える。

 もちろん弁護士との打ち合わせなど、極力無駄を排し、誠実に説明することを目指したにちがいない。逮捕の正当性まで言及することが今のような浮き足立った、全く余裕を欠いた警察や検察にどう思われるか、それは最大限弁護士がアドバイスしただろうとも思う。

 しかしこれは長く人の前に立ち、人の期待や喜びという感情をまっすぐに受けとめそれを糧として自分を鍛錬した人のいずまいだと思った。しかし人気があることや注目されることの「プレッシャーはありますか」と問われ「ないです」と言下に答えた。きっと人の様々な心の発露を成長の糧としたという正確な意識と、そこであるといったら「失礼」であるという意識なのだ。

 そのように統合された肯定的な、しかし深い悲しみと悲しみと一見反するような普通の言葉。それを一番感じたのがお酒との付き合い方についてだった。
 メンバーも自分の身体をきづかい、注意もしてくれていたという発言。それから、自分の身体にも悪いし、だから僕がもっと成長して大人になれたら、例えば仲間や大切な人とお酒を飲んで、楽しい話が出来る。(だからお酒は今は飲まないが)成長して(いい飲み方のできる)大人になりたいですという趣旨の発言。

 これは心を打った。彼が求めているのはきっと普通に人と楽しく心通わすことであり、芸能もその本質は変わらないと思っているようだ。しかし今はできない。自分とメンバーやファンとの間に自分が自ら裂け目を引いたことの事実の悲しさをきちんと感じていると思った。

 誰が悪いとかいいとかではなく、事実をそのままにかんじること。そのことの質量を感じること。ちょっとべた褒めになってしまったけど、稲垣吾郎のことだけ「吾郎さん」と呼んでいたのが面白かった。それと東国原知事が自分が言う立場ではないよなと顔を真っ赤にしてコメントして恥ずかしそうだったのが印象的だった。

 しかし自分が価値に中立的ではありえないし、色んな人がいるとしても自分のいる状況や弱さ強さを適切に評価することで自分のことが一番伝わるということは一番感じた。それが僕に今最も必要なことだ。普通に。そのままに。変わりながら。僕も変化しているし成長したい。そして美味しいお酒が飲みたい。

※この件で、読んでよかったエントリ
http://d.hatena.ne.jp/sunafukin99/20090426/1240710556