細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

【対話】逃げちゃだめだという気持ちについて。

エヴァンゲリオンはテレビシリーズ以外ちゃんと見ていないので、大きなことはいえないけれど、主人公碇シンジの言葉というか追い詰められた時に自分に言い聞かせる言葉がある。


「逃げちゃだめだ」(泣きそうになりながら)

この言葉、あんまり好きじゃない。けど、俺自身の心の中でもよく唱えているような記憶がある。
たとえば学校時代。

「(学校は恐い、嫌だ。)でも逃げちゃだめだ。(苦しい。けど学校行かなかったら俺もっとダメになりそうだ)」


あるいは学校卒業してからも


「(世の中は恐い、嫌だ。就職するのはいやだ。また序列や人間関係の苦汁を背負うのか。しかし親がかりでも辛い。嫌だけど)逃げちゃだめだ。(また面接だめだった…やっぱりもう御免だ)」


そして…続く。のだが、今もこの「逃げちゃだめだ」パターンが出てきている。

「(資格がとれてもとれなくても、金がなかったら生きていけない。今みたいに周りや年金のお世話になってても限界がある。それに俺はこのままではズルズル行きそうでヤバイ。しかし相変わらず世の中が恐いぜ。年を取ったらなれるとかそんなんもないぜ。余計に嫌な部分に目がいくぜ。ネガティブシンキング。でももう死にたいとは思わない。としもとしだ。なんかせなあかん。しかしなんでこんなに頭の中がぐるぐるするのだ。しかしこの現実から)逃げちゃだめだ(と思えば思うほど目の前の山はでかくなるぜ)」




で…なんで…こうなるのか。

整理してみよう。何から逃げてはいけないのか。そしてそもそも逃げちゃだめだと唱えるほど現実とやらは厳しいのか?厳しくないのか?


そもそもなんでこんなに様々な外的現実がつらいように思える、心なんだろう?それはたぶんいつも「どうせダメだ。またいやな目に合う。世の中には嫌なやつが一杯いて」と思い込んでいるからだ。たぶん。俺自身も誰かにとって嫌な奴だが、俺は発想が自己中心的なのか、それとも嫌なことばかり学習したせいか、すぐ「ああ、嫌だ嫌だ」が勝つ。


それといつの間にか「こうすべき」という風にハードルをあげてしまっている。

これらは心理的な原因だ。では現実は?


たぶん、過去や現在見た嫌な事象を覚えていて、そもそも「現実とはそういうものだ」と現実を捉えている点だ。

これまで福祉を勉強してきたのも、自分が苦しかった環境や仕組みはどのようになりたっているか、たぶんそれに対して怨嗟があるのだと思う。だから、いっちょうそれに一矢報いるとまではいかなくても、なんとか苦しい状況を変えたいと思っているのだ。

けど、この福祉を勉強する動機は「報復」といえばおおげさであれば「見返してやりたい」という気持ちや「負けたくない」という意地を含んでいる。はっきりいって、今書いてて発見したのだが、そうやって何を仕返ししようというのか、おいおいと思った。

なんで勝ち負けで考えるのか。勝ち負けではないよ人生は、とも思う。そんなに張り合って「疲れないか自分?」

しかもその見えない敵って何?君の妄想?とも思う。いやと俺は反論する。今まで生きてきて、少ないながら経験したところによれば、なぜこうも隷属や服従という現実がやはり多い。その証拠はあげればきりがない。ここから対話風にする。対話相手を仮に「ゴルギアス」としよう。(強そうな名前にしてみた)


ゴルギアス:(でも力のない者は服従するしかないのではないかね?君は障害者の権利だとか、なんでもいい普遍的に保障すべき権利が踏みにじられる現実があるというね?しかし、それは人類史と大きく出ずとも実際の話しだし、そうではないか?)


俺:?そうかもしれないんだけど、俺は自分を恨み辛みからちょっとでも出てみたいんだよ。自信ないけどさ。そういう世の中は変だと思うんだ。


ゴルギアス:(しかし何もやってないよね。いつも自分がいやな目に会いたくないだけなのでは?)


俺:そうかもしれないよ。


ゴルギアス:(なら君ほどひどくはなくてもそれは多少は誰でもそうなんだから、快を多く、苦を少なくすべきではないかね?そうすればわざわざ「逃げちゃだめだ」と力む必要はないわけだ。それにそれは君の自己実現であって、他の人を巻き添えにして「福祉」とは何とええかっこしいではないか)


俺:そうかもしれないね。


ゴルギアス:(じゃあわかったら自分がまちがっていないとかそういう証明に時間を費やすのではなく、自分が生きやすいようにすべきではないか?社会を形成する限り誰かは辛い仕事をせねばならず、しかしそれは君は頼まれていないではないか?君がそんなに隷属がいやならば、隷属をなるたけ最小にして割り切って生きるのが最善の努力ではないかね?まあ支配階級になるのもいいがはっきりいって、君みたいなやわな奴には向いていない。自分が納得いくように生きられないのを「福祉」という美名に覆い隠してはいけない。それを自己欺瞞というのだ)



俺:なんだと!俺はそれぞれが自分の満足するように生きればいいと思うが、どうも世の中が複雑化したのか日本が社会として歪なのか、それとも人間はみんなが生活を豊かにしようとするとパイの奪い合いになるのかしらないけれど、どうもそれぞれが足の引っ張り合いをして相互に苦しめあっているようにすら思えるんだ。そうして何かを犠牲にし排除しているというか…


ゴルギアス:(君はガキみたいだな。それぞれが異なる立場にいるのだから利害が衝突するのは仕方ないではないか。それを奪い合いとするのは君の青臭い倫理観のせいではないか。そうやって世の中を悪い風に戯画化してはいけない。確かにもしかしたら社会体として危機的な状況はあるだろう。古代社会から、諍いは絶えなかった。しかしそれは君だけの責任でもなく君が背負いきれるはずもない。いや背負いたかったら背負えばいい。あるいはそれは立派な徳といえよう。しかしそれを背負ったら泣き出し背負えないといえば泣き出し、どっちみち泣きごというんだからやめといたほうがいい。しかもこれは話がずれている。君自身がどうするかだ。いやどうしたいかだ。それを君は不自由だという。しかし逆だ。自分で自分のことを決めるというのは辛い面もある。しかし、他の人は変わってくれない。またその決めるプロセスと決めたことを軸に生きていくのが人間の誇りではないか。
君の好きな「福祉」でいいかえてもいいだろう。自己決定という奴だ。自己責任という言葉が連想されるから嫌なのか?しかしそうではない。もちろんこの社会は脱落した時の助け舟は少ない。だからそこに君は不満をいうのだと思うのだろう。しかし、自分で決めるということはこれはまあ練習だ。動かしていない筋肉には辛かろう。しかし、社会に必要な徳目は、困難は困難として、決められる部分は決めていくことだ。それが奪われている人が多いというのだろう?しかし君自身が君の人生を考えることができないで何が支援なのだろう)


俺:…(なんか違和感は感じている)


ゴルギアス:(しかもそんなに負けてはならないと気張ってもしょうがない。他者は君を侵害する時があれば、君が他者を侵害する時もあるのだ。大事なのは不正を正確に認識し、自分の良し悪しを認識し、誇るところは誇り過ちは認めることだ。当たり前のことだが、この作業はなかなかできにくいからこそ、できたとき自分が少しはまともに思えるだろう。君はしたいことをすればいいし、今こわがっている気持ちもあるのだろう。しかしそれは知らない。難しいことではなく、なるたけ現実を認識し、他者の現実認識との調整を行い続けることだ。妥協してはいけないが、そうやって比較的妥当な認識を持ち続けるよう行動することだ。それが快をもたらすだろう。君に必要なのはこの作業だ。そのために現実に行動するというのもひとつの手だ。それは絶対ではない。しかしそれによって必要な精神的栄養や充実を図りながら、言葉は悪いが利用しながらでないとそれでなくとも他者の生を顧慮し続けるという作業ができるはずがない。もちろん自己の利益のために不当に搾取するというのは論外だが、今のままでは君はそうなる危険もないとはいえない。人間存在はつねに他者を利用しようとする傾向がある。支配欲というのは支配階級だけでなく君にもだれにもあるものだ。それからは逃れられないとしてもそれがもたらす害をマシにすることはできる。しかしまあそれは君の場合今考えても仕方ない。しかし世間知らずの君は君自身も搾取者になる可能性をつねに念頭において置けばいい。企業の人事担当のにもいろんなやつがいるのだ。しかし君よりは世間知はあるかもしれないがね。)



俺:…(最近プラトンを読んでいるのでこうなってしまった)どうオチをつければいいんだ…しんどいのはいやなんだよ〜でもね、俺は現実認識としては、互いにエゴがぶつかり合うとしても、ちょっとでもマシにしたいんだけど、俺は了見が狭いしすぐ怒るから。でも、もうちょっと自分をどうにかするってことを考えたらいいのか。それならちょっとファイトが出てくるかもしれない。自分と他者はあるレベルでは異質性そのものなんだけど、どこかで共有というか同じものが見えるかもしれないと思うのだよ。もちろんぜんぶ一緒ではないよ。でも。例えばいい小説、いい文章を読むとそんな気になる。いや現実にもたまにそれはあるよ。ロマンチックすぎ?



ゴルギアス:ロマンチック…まあそれはわからないが。しかししんどさの原因や生成過程を君は今なら以前よりはマシに考えることができるはずだ。そう医師にもいわれているはずだろう。そこから前よりはもう少しちがう舞台に出れるかもしれない。まあしかし、多くを望まないことだ。支配階級も隷属する者たちも何かを諦めながら生きているのだから。君には縁遠いだろうが釈迦もそういったのではないか。君は普遍的な事柄を考える力はないが、自分を賢いと思っているらしいから、そんなのわかっているというだろうが。何を慌てて、「逃げちゃだめだ」なんだろうか、そんなこといってもいわなくても大勢には影響がないだろう。


俺:いや、ひつこいしあきらめは悪いよ。今日は疲れた。ええかっこもしたいし。でも、疲れやすいからなあ。大丈夫かなあ。家で駄々こねててもはじまらないんだけど。


ゴルギアス:もうええわ。