細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

【詩作品】透明な声、鉛色の空洞で



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あたたかい週の次に
冷たい風が吹いて
空は鉛色に深く
宇宙を映していた

公園で笑う、3人の子どもたちを見ながら
私はマスクをつけて
町をすり抜けていくのだ

明日がわからないことが
不幸じゃない
笑えないから
生きられないわけじゃない
笑おうと無理にする
くらいなら
気持ちの重さを感じるだけでも
いい

川べりに立つ
列車が
広い世界で地面を叩いている
ただ叩いている
毎日の空洞に
広がる音が
空っぽで何が悪い

これまでだって空っぽで
空っぽの私は
ただ怯え泣き
尊大に鼻を鳴らし
どうしてどうしてと
しがみついている

 

記憶の中をしみだす点と点

私の鎖は千切れて

頭の中

思い出が飛翔する

 

透明なガラスの
箱の中で
ノートの文字が増え続けている

私の愚痴は万巻のお経よりも長く
透明な声で刻み付けられている

生きるために
ただ重力の坂を
呟きながら
落ちて
やがて反対側へ
夕闇の向こうへ

 

 

【詩作品】人間の着物

 


ごまかさないでいると
胸が痛い
胸が痛いまま
生きるのは辛い

だけれど

生きようとして
ごまかせば
痛みさえ忘れてしまう
そうして
どんどん死んだ部分が
増えていく


私の顔は
どんどん浮腫んで
画面をはみ出している

 

私はどんどん大きくなる
すでに感じられぬ痛みが
人間の着物を来て
歩いている


そう思いたくなくて

散漫な夢を見る

 

暗い天蓋に

新しい雨が

滅びの星

焼け残る空

 

あたたかい

その歓びを

忘れずにいたら

温度だけは

確かに忘れずに済む

 

 

【詩作品】無窮の船底にて

 

特に何もなく
眠る
日々に
歌がある
昨日から連なってきたのではなく
私の内なる時の流れに
不気味な物語や
儚げな印象の端切れよ
不可思議な調べよ
悪夢における寝言の
囁きよ
この日々は何であるか
どんな喜びがあるか
さざ波のように
淡々と繰り返されて
生きる意味問わず
知ると知らざるに関わらず
感じざるをえぬものに
追いかけられている

 

 

【詩作品】落下を観測する

痛みに顔をそむけざるをえないのだ

私の顔は真っ青に恥らっている

どうにもならない

こんな地獄はない

逆さまに

ひきつっている

すでに落下の感覚はない

落下する私はすでに

感覚の中で落下を感じることができない

落下を感じないで

あくまで生きている私のしがみつきは

勝利や敗北を突き抜けて

ばらばらに分解される

 

風に吹き散らされて

赤面した紙切れになる

 

それでも生きている私の

憂鬱は重苦しく

地面は近づくほど

影を濃くしてゆく

 

すでに内実としては分解された

私の骨組みは

まるで、呼吸を放つ

朝陽に温められ

肉を回復し

回復しようとして

私のむごさを

突きつけている

 

何の理由もなく

生きているさ

ああそうなんか

 

宇宙の片隅で

鳥が疲れを訴える

穴蔵の中で

私は叫んでみる

不自由落下

特別じゃない

壁にぶつかって

私は私の苦しさにこだわって

 

なんにも当たり前じゃないんだ

歴史がどこに行こうと

片隅で

片隅で

コーヒー飲んでる

 

 

 

主治医に薦められたトラウマ本と、自分の苦しみについて

電子書籍で白川美也子「赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア」を買いました。


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精神科の主治医が、私のケアの参考にと薦めてくれました。

あなたは、発達特性のみならずトラウマの影響も強いだろうと最近主治医に言われたのです。

 

近年集中力や気力が低下し、なかなか読書がしんどくなっています。

しかし、これは、主治医の出してくれた薬だと思って読みました。

(複雑な内容の本は力がなくまだまだ読めなくて)

 

この本は、やはりケア的な感覚があります。

白川さんの文章は暖かく傷のある人間に優しく語りかけてきます。

 

他方、白川さんは、内容を過度に単純化していません。

トラウマに関する精神医学的な理論を概観できます。

 

さらにトラウマを抱える登場人物たちが、トラウマに気付き、その傷を抱き締めて、自分自身を育てていく様子を描いています。

 

私は、小学校から高校生まで、いじめを受けました。

肉体的な暴力は小学校が一番激しかったですが、断続的にスクールカーストの底辺に置かれ、からかいや蔑みを受けてきました。そのあといろんなことにさらに自信がなくなりました。

 

今も恐怖や不安に襲われて、日常生活に苦労しています。

比較的元気なときは社会運動に参加したりしていましたが、ここ何年も慢性的に疲労状態な上にコロナもあり、本格的に社会運動に参加するのが難しくなりました。

 

私はこれまで、自分の心が辛いのは仕方ないと諦めている部分もあります。

たぶん苦しみがわかっても、基本的な体質は母に似てしんどいことが多いでしょう。

しかし、少しでも苦しみをやわらげるために、自分の苦しみを知ることは、必要かもしれないと思い始めました。

【詩作品】繰り返しのはじめまして

「繰り返しのはじめまして」


新しい海岸で
まばたきをして
まだできる息が喉の奥へ
流れ
腹でふくらんで
喉から飛び出して行く

生きることは
繰り返しだった
繰り返しのはじめまして
だった

冷たいみどりの
歌が風にながれる
厳しいんだ
なにもかもが
優しくて
なにもかもが
だから
人間とか
オレとかオマエとか
なんなんだって
フローと
渦巻く風と

光があるのだから
そうそして
崖や海が輝いて
暗い暗い
光の底から

もういい加減にしろと
早く眠れと
うず高く積もった
宿題がくずれて

解いても解いてもきりがないよ

だから
日々
倒れながら
生きて
歌って
疑って
流れて
いるんだよ

【詩作品】魂は矛盾して

「魂は矛盾して」

短い先は長かった

魂は矛盾して墓穴を
掘る

溢れてくる水を
飲み干し
今だ燃える荒野を
歩き続けている

あの時のように
遠ざかりそうな意識
組み直して
私のめまいの先を
一切が未来につながってると
思えない

そのあとに未来があっても
滅びは続いて
立ち上がれといわれても
立てなくて
痛い痛いと
絞り出している

暗い歌だなんぞと
笑わないでおくれ
深刻ぶった顔など
やめてくれ
今は昔
今は未来
実現した夢のまま
それは
壊れることを
定められていた

ハロー事実は
虚空の地球
美しい歯車が
静かに回転して
滑ってゆく
無に向かって
いつまでも無に至らなくて

これは今日の食事
眠けマナコで
消費し
消化して
かけがえのない今日は
虚空を周り続けている