細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

【詩作品】厳しくなる冬の雲を

誰からも離れて

まじわれない一つの鳥

それがわたし わたしの証

水の顔を蹴りあげ

空へ高く墜落する

 

自由ってどこまでも落ちていくこと

でしょう

落ちるってそんなに悪くない

でしょう

息のできない高さに行ったら帰ってくる

のですよ

 

そのとき満員電車は暗い地下トンネルを

走っていた

苦しくて苦しくて

僕は倒れそうだった

パニックしょうこうぐん?

ていうの?

冷や汗が出てくるのですね

たっていることができない

 

あの時すれ違ったあなたは

僕に顔を見せようとは

しなかった

 

空が冷たく凍る時

わたしは飛ぶことをやめ

あたたかい島へ戻ろうと

決意した

わたしには

思い出がある

わすれられない

わすれられない

というより

あなたでいっぱいになるの

 

そうね

この世界は目標をなくしたの

矢印が

どこをさしたらいいか

わからない

そうですね

 

僕は駅前から、川べりを歩いた

寂しそうな

水鳥が

くちばしに藻をからませ

すべすべした眼差しが

厳しくなる冬の雲を

見つめていた

 

たぶんもうすぐ雨が降るのかもしれない

 

【詩作品】寝床の賛美歌

疲れてねむっている

風邪って疲労のかたまりみたい

あの夢もかなわない

光と闇のまだらの模様

筒の外から雨が聞こえる

 

大人になってもさみしいんだよと

子どもの僕に教えてあげたい気分だ

布団の中がイマイチあたたまらず

暴れ出したい気分

 

君が隣にいてくれたら

隣にいなくても同じ運命の川を

滑り落ちているなら

たとえさみしくても

耐えられる

そんなことを

他人に求めてはいけない

 

明日の朝にはやむだろうか

雨が

雨がやんでも

やまなくても

ずっとさみしいままかな

さみしいってなんでしょ

この体から

溢れ出す匂い

 

一つ一つを

深くつっこみすぎない

と先生は言いました

なるほど

そうかもしれない

 

天に向かっていく

死者達の群れ

乾ききらない草のつゆ

滅びる明日にも

生きものの賛美歌が

聞こえるような気がして

発達障害の診断を受けたのは、幸せになるためには自分を知らなきゃと思ったからだ。

私はアスペルガーなので、他人の気持ちをうまく読み取れない。

少し疲れたり焦っていたりするだけでも、本当は嫌味を言われてるんじゃないか、とか、疑心暗鬼になる。

また、他の人たちは、自分のわからない、たどり着けない場所で、「人間の楽しみ」を謳歌していると思い込んで嫉妬や寂しさをためこんでいる。

 

それらを挽回しようと、いつも焦ったり、不安になって緊張したり、心をすり減らしている。

 

基礎にあるのは、疎外感のようなものだろう。

その疎外感の正体がわからなかったころはスネたりいじけたりして、死にたいとすらよく思っていた。

学生時代は、他人が気になる時期だが、その気持ちを他人にどう打ち明けて良いかわからず、悩みが溜まり、苦しんでいた。

 

仕事ができなくなり辞めても、詩を書いて暮らすとかおよそ非現実的なことばかり言っていて、さらに生活が苦しくなり精神も破綻した。

その頃付き合っていた人を苦しませ、その人は私と生きることが辛くなり私の元を去った。

自分が情けなかった。

 

それから様々な人のすすめで、心の病を治す取り組みを始めた。

しかし、私は精神病もあるかもしれないが、それよりも、人の気持ちをうまく読み取れない、それで誤解して、自分を追い詰めることがあるとわかり、それはいろいろな人間関係の難しさを感じたからだ。

そんな風にして発達障害の診断を仰いだ。

それは私が生きていきたいからである。

疎外感がなくならなくても、なるべく中良い人のあたたかさやつながりの中で生きていたい思いが強まったからだ。

災害や原発事故が私に生の自覚を促した面がある。

楽しく生きれば、災害などで私が死んだりこの国が崩壊して私が死ぬとしても、この世界に生きたという証になる。悔いがないという思いでいる。

私はだから自分と人がその違いのまま調和するという、アスペルガーがなかなか得られない感覚を知りたいんだと思う。

 

 

【詩作品】なまえ

僕の名前は

和広というよ

親が平和を広げてほしいと願ったらしいが

ホンマかわからへん

実際僕は世の中とギスギスして

自分の身一人分の

平和すら怪しい

 

僕があんまりおとなしいから

僕の弟には「武」という字をつけたらしいが

ホンマか嘘かわからへん

 

しかし、僕はいつも

名前の書き方を説明するときは

「平和の和に広島の広」

という

その時頭の中に

平和の鳩が広島市の空を飛び

原爆ドーム

威厳のある姿に見えてくる

 

しかしその時

まず平和とは何か?

と痺れるように辛くなり

今まで

親や男や女やいろんな人と繰り広げた

喧嘩を思い出す

それはそれぞれに

真剣で戦火はあがらないが

僕は本当に恥ずかしく

僕の死を願ったこともある

 

僕は死にたいという気持ちに

包まれてきたから

平和とか世の中とかよく実感できない

平和だから

死を考えたのだと言われると

腹がたつ

 

時々考えるのは

戦争にいった祖父の

生きていた頃の姿だ

 

祖父は朗らかに生きていたが

とても寂しそうで

心ここにないように

見えた時もあった

馬のように綺麗な鼻筋の

上にある彫りの深い目には

空のさみしさが夕闇を含み

短いため息のような笑いを吐き出す

人の良さそうな口もとの

隣の頬には

深い傷があった

深い傷のある口は若い時から

入れ歯で

 

やっぱり戦争は怖いなと思った

優しい祖父が兵士になって

殺し合ったんやなあ

そのあとに何十年生きた

 

平和がわからない

平和が泣いている

 

僕には名前がある

どうしていきていきたいかもわからない

 

ただ、話すことは

わずかにあるんやで

 

 

 

【詩作品】平和はあるんかないんか

体があたたかい

何にもしたくない

何にも考えたくなく

考えたら垂れ流す

言葉を

うわ言を

垂れ流す

 

私が生きてないと

平和は始まらない

私が死んだりあなたが死んだりしたら

どうなるのかわからない

 

平和はそれを生きようとしないと

自分が平和でないとと思う

だけどだったら主観にしかすぎないとも

考える

 

あなたが確かめるこの腕も

 

あなたと関係ないこの話題も

 

あなたが考えてる晩御飯も

 

あなたが心配するこの世界の問題も

 

ぜんぶおなじ価値だ

 

おなじ価値の中で互いの話が通じない

 

通じなくて仕方ないやんか

通じた試しはないやんか

 

そやけど諦めずに

頭を使うんやで

私の固い頭を使うんやで

あなたの頭もそこにあるだろう

 

考えないようにはできないんやで

考えないようにしても襲ってくるんやで

私たちが犯したすべての間違いに向き合い

友だちになるしか

ないんやで

【詩作品】小せえなあ

生きているのが辛いと思うと

親不孝な気がしてくる

済まねえ申し訳ねえ

謝ったってしようがねえ


親が私を産んだのだけど

私は自分で自分の体と心を制御しなくちゃ

そう思うって

すでにいろいろ辛いからなんだろう

辛くなきゃ

勝手に笑うし

勝手に泣くしな

そんなものに理屈はねえな

そうなるはずだ


すでに理屈があるのは

なんだか辛いからだ

あなたに愛されたいと

願う時

私はどうしようもなく生きづらい私を

思う

たまには生きづらくなく

生きられるならと思う


果てしない寒空を

こわごわ見つめたり

限りなく流れる川を見て

小せえなあ

小せえなあと

思う


小せえなあ

私は小せえなあ

小せえから

まだ生きてられるんだ

何にも見えてないくらい

小さいから

生きてられるんだ

賢かったり

器用だったりしたら

うまくいきすぎて

たぶん

怖いものを見ると思う


だから

小せえ

小せえなあ