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細々と彫りつける

Concering poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

【詩作品】肉声と血文字

不当であるという感覚はどこから来るか

この世界はどこまでも悲惨であり、僕もまたその悲惨の生産に

加担しているだけではないか

と思うのだが、5月の空は雨の合間に美しい光を放つ

この無辺大の、そのまた端に、僕の

小ささと

あわれさと

ずけずけした健康さと

丸みを帯びた弱さの曲線が小さな風のようにわだかまる

 

誰も殺されてはならないと

いう時に激しく一般論ではないかと問い返してみても

実際殺されたくないと思い

なぜ今まで僕がたまたま殺されていないかという月日の

薄く靄のかかった記憶の層が痛む

 

僕らは恐らくはいつでも彼女と同じように

傷つけられ、殺され得、打ち捨てられうる

 

しかしその被害者である僕は、あなたは、バラバラに切り離された

人々は

つまり僕らは、あるひとりの人を犠牲にしてやまない

そういう仕組みの中に、いつのまにか参加している

 

日々良心と明晰を麻痺させて

麻痺させることのできない痛みに

襲われる夜や朝や夕方の、僕のあなたの脳や胸である

その痛みをなんとかやり過ごそうとして

抱き合ったりなじりあったり

残酷な仕事や享楽に手を染めている

 

僕の祖父がアジアの密林に倒れた時

祖父は殺し手であり殺され手であった

祖父の顎を砕き、胸と太ももの肉を貫いた銃弾

おびただしい血液の流れ

祖父もまた殺されようとする攻撃者であった

 

その二重性にめまいがした少年が僕である

めまいがするのが必然であった

銃口やこぶしはこの平和とあの戦時を分けない

いつでも万人は万人に闘争しているのだ

 

何もやむことがない

夜の冷気が僕の頭を冷やすことはない

僕は怒っていない

泣いていない

失感情ではない どうしていいか 本当にわからない

 

ただ、この時も僕の知らない隣のあなたが

彼方のあなたが同じ怒りと不明と

震えを感じているかもしれない

 

ただこの軛は早く解きたいと思う

木々は複雑な生命の曲線を見事に表現している

土は、あたたかさを送り受け取る粒子の集まりである

熱はどうしようもなく、南の島から来る

 

おまえは殺し手であり、殺され手である

その時

おまえに涙はあるかと

血はあるかと

血で書かれる文字と

肉のあたたかさを持つ声はあるかと