細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

国や研究機関で、原発事故で放出された放射性微粒子の姿が科学的に明らかになる中で再稼働という矛盾

SPM捕集用ろ紙に付着した放射性核種分析報告書
環境省_SPM捕集用ろ紙に付着した放射性核種分析報告書

1
1. はじめに
産業活動により放出されるPM2.5 粒子や光化学オキシダントの環境基準の達成率は非常に低く,その対策の検討が求められている.大気質モデルは,これらの対策効果を予測・評価するために非常に有効な手段となる.しかし,モデル計算は不確実性を有しており,それを低減することが強く求められている.正確さを向上するには,観測結果との比較によるモデルのブラッシュアップが欠かせないが,一般に,大気汚染物質は,多様な発生源から排出されているため,比較が容易ではない.
平成23 年3 月におこった東京電力(株)福島第一原子力発電所事故に伴い大気環境中に放出された放射性物質は,気流とともに各地に拡散・輸送されたので,大気中の放射性核種濃度のデータがあれば,大気汚染物質の発生源が1箇所で既知であるため,大気質モデルの精緻化に大いに役立つ事例と考えられる.一方,日本各地に大気環境常時測定局が設置され,SPM(粒径10μm 以下の微粒子)が一時間ごとに自動的に捕集されおり,このSPM の放射性核種を分析することにより,大気中の放射性核種濃度の多地点・連続データが取得でき,事故により放出された放射性物質の実際の拡散の様子を再現することができると考えられる.そして,このデータをもとに大気質モデルを検証・改良することが可能となる.
本業務では,東京電力(株)福島第一原子力発電所事故により大気中に放出された放射性物質の事故当時の時空間分布を推計するため,SPM の自動測定機の捕集用ろ紙上に付着した放射性物質を分析した.

http://www.env.go.jp/air/rmcm/misc/attach/report-201303_main.pdf

環境省大気汚染防止法にのっとって、各都道府県に大気汚染常時観測を義務付けています。
これは1970年代の公害における大気汚染やダイオキシン禍の教訓として機能している国の数少ないシステムの一つです。

 第四章 大気の汚染の状況の監視等


(常時監視)
第二十二条  都道府県知事は、環境省令で定めるところにより、大気の汚染(放射性物質によるものを除く。第二十四条第一項において同じ。)の状況を常時監視しなければならない。
2  都道府県知事は、環境省令で定めるところにより、前項の常時監視の結果を環境大臣に報告しなければならない。
3  環境大臣は、環境省令で定めるところにより、放射性物質環境省令で定めるものに限る。第二十四条第二項において同じ。)による大気の汚染の状況を常時監視しなければならない。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S43/S43HO097.html

この3が311事故後改正された部分です。放射性物質はなぜか環境省の監視下に置かれまして今のところ自治体には設置されていません。
これはまずいというのは批判があります。

で、しかし先ほどの「SPM捕集用ろ紙に付着した放射性核種分析報告書」に戻っていただきますと

東京電力(株)福島第一原子力発電所事故に伴い大気環境中に放出された放射性物質は,気流とともに各地に拡散・輸送されたので,大気中の放射性核種濃度のデータがあれば,大気汚染物質の発生源が1箇所で既知であるため,大気質モデルの精緻化に大いに役立つ事例と考えられる.一方,日本各地に大気環境常時測定局が設置され,SPM(粒径10μm 以下の微粒子)が一時間ごとに自動的に捕集されおり,このSPM の放射性核種を分析することにより,大気中の放射性核種濃度の多地点・連続データが取得でき,事故により放出された放射性物質の実際の拡散の様子を再現することができると

つまり大気汚染常時測定局に微粒子が集まってるからそれを分析すれば放射性微粒子もわかるし、ゆえにそこで人々はどういう影響を受けたか再現できる可能性があると。
SPMというのはPM2・5より大きいものも入っています。測定装置が高度化する前はSPMで規制をかけていました。道路とか工場煤塵の大気汚染ですね。
日本は重金属とか他の多様な工業由来の難分解性化学物質の規制は遅れています。

で付属のPDFを見ればわかるのですが各測定地点、南は千葉まで(東京都もやればいいと思うんですがやりません)セシウム137による大気汚染が観測されています。1立方メートル最大で100ベクレルほどの汚染です。これを人間が吸わされたということもあるわけです。

これに放射性希ガスや放射性ヨウ素、その他複数の核種が加わります。
自分は計算は苦手なのですが、放出量の総量のおおよそと比率を割り出せば、推定はできるはずです。
こういうデータを検証しているわけなのにSPEEDIはやめるというのが、本当に不可解です。

で、上に見たような状態で、少なくとも吸い込んだものの何割かは気道やさらに肺の様々な部分に沈着しますから、安心ですといえるような状況とは思えない。
とくにヨウ素が消えるまでは二か月くらいかかりますので、肺に残ったり血液で移動して排泄されるまでは被ばくしているわけです。

3月15日前後のピークと3月21日前後のピークがあり関東東北はこの二度のピークに襲われたことになります。


あと、これは首都大がやっていますが、ウランを含む微粒子については東京理科大が解析しました。

福島事故で放出

 東京電力福島第1原発事故直後の2011年3月に茨城県つくば市で採取した大気中の微粒子を分析したところ、核燃料であるウランが微量に含まれていたことが、東京理科大などの分析で分かり、8日発表した。ウランの測定は難しく、報告例は少ない。原子炉の損傷状況を推定する手掛かりにもなるという。

 微粒子はガラス状で、ウランのほか、核分裂でできた放射性セシウムや格納容器の材質である鉄なども含んでいた。核燃料と格納容器などが一緒に溶けたものが大気中に放出されて固まり、原発から約130キロ離れたつくば市まで風で運ばれたとみられる。

 微粒子中のウランの濃度は、放射性セシウムの10分の1以下。東京理科大の阿部善也(よしなり)助教は「ウランについては人体に悪影響を及ぼすレベルではないだろう」としている。

 微粒子は、つくば市気象庁気象研究所の敷地内で11年3月14日夜から15日にかけて大気を吸い込んで採取した。大型放射光施設スプリング8兵庫県)を使ってエックス線分析した。

 今後、ウラン235、238など核種ごとの正確な濃度を測定する。
http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20140811142333818

事故から非常に時間はかかったし、被ばくした後でという思いは消えませんが、全く専門家が沈黙したわけではなかったことがわかります。
私自身環境省瓦礫のことで申し入れに行ったときにPMは小さいから焼却したら漏れるんじゃないかということは資料で説明しました。
PMについてしっかり調べなさい、それは放射性微粒子のはずだといいましたらわかったというような顔をしておりました。まあもちろん私の提案が受け入れられたのではないと思います。

さて。
話を戻しますと、大型放射光施設スプリング8兵庫県佐用町にありました。
で、そこに研究の概略もありました。

まずCs以外にどのような元素が含まれているのかを調べるため、37.5 keVの高エネルギーX線を用いた蛍光X線分析を行ったところ、Csの他にバリウム(Ba)やルビジウム(Rb)、モリブデン(Mo)など燃料の核分裂生成物と思われる元素と共に、一部の粒子には燃料であるウラン(U)が含まれることが明らかとなりました(下図)。この分析結果は、揮発性の高いCsのみが炉から大気中に放出されたのではなく、燃料であるUそのものを外部に放出しうる程度に、事故当時に炉が破損していた可能性を示しています。
さらにこの粒子には、核燃料由来の元素だけでなく、ケイ素(Si)や鉄(Fe),亜鉛(Zn)など炉自体の構成物に由来する元素も多く含まれていました。そしてXANESと、X線回折分析によって、Csボールがガラス状態で、かつ高酸化状態(Feは+3価、Moは+6価、Snは+4価で存在)で生成したことを突き止めました。これらの分析結果から、事故当時の炉内では核燃料だけでなく容器や構成物も熔融し混合された状態にあり、それが大気中に放出され急冷されたことでガラス状態になったというCsボールの生成・放出シナリオを推定することができます。本研究で示されたCsボールの生成シナリオは、メルトダウンした核燃料が容器の底を抜けて落下したとする事故当時の炉内状況に関する指摘を化学的に裏付ける研究と言えます。
また、事故により放出されたUが関東近辺にまで到来していた可能性はこれまでも指摘されてきましたが、重いUがどのような形で飛散していたのかは明らかではありませんでした。本研究により、微小なガラス粒子がその担体の一つであったことが明らかとなった形です。
このように、非破壊のX線分析によって、大きさわずか2ミクロンの微粒子から、事故当時の炉の状況や放射性物質の大気放出に関する多くの情報を得ることができました。SPring-8の放射光マイクロビームを用いる複合X線分析によって初めて可能になった成果です。本研究の成果はアメリカ化学会(ACS)発行の論文誌「Analytical Chemistry」に掲載予定です。
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2014/140808_3/

非常に簡単に言いますと、セシウムなどの放射性核種、核燃料ウランとともに、原子炉容器と思われる金属まで急速に酸素と結合され冷やされた状態で炉内から外界に放出されたということで、原子炉が損壊しているらしいこと、爆発の威力がすごかったこと、燃料が溶けた破片なのだからメルトダウンして圧力容器を溶かして突き破り、それが爆発で放出されたらしいことということになります。
って書いてあるからわかることですが、重いウランが関東まで飛んできたといっています。

とこういう公式なルートの研究で原発安全説はほぼ科学的に論破された状態となっているわけですが、SPEEDIをやめて川内原発の審査書を通過させてしまった原子力規制委員会と日本政府の非科学性というものははっきり明らかにされ、経済的にも生命としても原発は無理ということで、あとは原発立地自治体をどう原発なしで再生させるのか、いかに原発事故被害者をお救いするのかということで論点ははっきりしつつあるようにも思いました。