細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

最近の読書・井伏鱒二『黒い雨』など

希望は絶望のど真ん中に (岩波新書)

希望は絶望のど真ん中に (岩波新書)

結論や戦争廃絶について少し楽観的な感じもするが戦時中戦後の彼の体験から導き出される言葉は以前強度がある。
ノンフィクションライターの黒岩比佐子氏の若い死は相当こたえているのだろうと思った。
黒い雨 (新潮文庫)

黒い雨 (新潮文庫)

放射線被害について現在でも示唆に富む記述がある。直爆と遠距離被ばく、入市被ばくの差異をよく押さえておくとよい。さらに記述のレベルが高い。なにげない仕草、気持ちの揺れ、被爆地の様子がしっかり焼き付いている。それもそのはず重松静馬氏の実際の証言や記録に依拠する部分大であるそうだが、それでも昔の人はしっかりものを見ていたということがわかる。僕らはここまで微細に当時わからなかったことを予感も含めて記述できるだろうか。
なお直爆と遠距離、入市による内部被ばく影響は沢田昭二氏が詳しい。
Peace Philosophy Centre: 沢田昭二『放射線による内部被曝』-福島原発事故に関連して-
世界を語る言葉を求めて

世界を語る言葉を求めて

辻井喬氏について私はセゾングループの偉いさんというくらいの認識しかなかったのだがこの間復興を語る番組で放射能被害を「風評」と決めつける番組の中で、情報を開示し個々人の選択に任すべしという持論をしたたかに譲らなかった。この本を読むと意想外のネットワーク・経験が語られており、元運動家、実業家、詩人という様々な顔の中にしたたかな思索者の顔が覗く。宮崎氏はアウトロー路線で売ってきたが、それへの自省の言葉もあり、いい組み合わせの対談だと思った。311は大きなスパンでの変動であり、今までの思想の枠を超える出来事が多い。そこを押さえて語られている点がよい。少し安心した。