細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

今日読んだ本

春日武彦氏+平岡夢明「狂いの構造」扶桑社。

春日先生は実践的というか身も蓋もない臨床現場での身も蓋もない知恵を披露する技術が高い。「病んだ家族、散乱した室内」(医学書院)や「はじめての精神科」は当事者・援助者への愛のある悪口?のさじ加減が絶妙である。どの福祉学部でも教科書にしたらいいのにな。
今回、お互いの仕事を尊敬している2人だけあって、内田樹氏との対談より抜群に春日先生は楽しそう。奇人変人を肴に2人で四方山話しているようで、非常に深遠な哲学的対談になっている。いわく人を凶行に向かわせるものは意外にも我々に深く根を張る「めんどくさい」という気分なのだと。めんどくさいは、恐らく真面目に生活するのが苦しいときには安全弁である。気分がふさぐ時、部屋の掃除をしたくなくなる。ソファから動かなくなるのは人情である。しかし、その強力な魔力で部屋は密林のようにゴミだらけになったりしているとヤバイ。
 実際平岡氏が書けなくなったとき春日先生は「部屋を掃除せよ」とアドバイスしたそうなんである。その結果今は書けすぎて困っているらしいのだが。

 「めんどくさい」によって、春日先生が危惧するのは、それがあらゆる他者や外界との折衝や手続きをすっとばしてしまうマジックワードとなりうるからである。その結果理解不能な蛮行も可能となるようだ。他人事ではない。それにしてもこの対談の2人はノリノリで毒舌乱射だから怒る人は怒るかもなあ。

「狂い」の構造 (扶桑社新書)

「狂い」の構造 (扶桑社新書)

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