細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

【詩作品】「コロナ禍で定まったこと」「どこまでもいつでも」他、無題

「コロナ禍で定まったこと」

 

コロナ禍で定まったのは
この命が現場だということだ。

他人事にする、しないはない
他人事にできない
私たちはどこにも
誰にも
私の元となる命の
光を見る
不安を見る

まず私の命を感じずに
感染症は捉えられまい。
どこかに誰かに
祈りを捧げ
命を捧げても
私の分裂
ーあなたの分裂ー

癒されまい

感染症という不安なものが
私とあなたのつながりを
思い出させる

分裂や否認では
対処できまい

 

なかったことにできない
この災厄の存在が
私の
私の中にある
世界にある様々な災厄は
命を通じてだけ
つながり
どこにもあらわれる

勝手にやれ
好きにやれ
遠くの空へ飛んで行け

自分探しはもう嫌だ
私は私でしかない
探す必要がないものを
探しに行く必要がない

私自身が問題だった
このねじれた感受性

私たちは
自分の命を喪失して
他者の命を忘れていた

そんなバカなことはない
命を忘れた人間に
命を革命することは
できない

 

 

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「どこまでもいつでも」
 

どこか遠くに行かなくても
ここにある場所に
閉じ込められなくても
命は自在な場所ではないのか
やる気を失い
道の真ん中で
夏の勢いが
失われた光の中に
膝を屈して
へたりこむ

無力は馴れているふりをして
今だにこたえるし
なけなしの力を
無駄遣いするのは
やめた

海がきれいだ
私の神経が浸かる
海がきれいだ
青緑に揺らめいて
この世界の恥を思い出す
恥はおまえの
作り出した幻想であるが
誰も本当は幻ではない

他人を夢まぼろしのように
扱い
この世の端っこで
震えている
私は
赤い血の色に
染まりながら
目を閉じている

風が吹き
新しく涙が流れ
昔を思い出して
恥とわずかな喜びに浸る
思い出して
ましなことがあるから
といって
明日が輝くわけではない

寝そべって
青緑の海底に
私は
沈んでいく

温暖化して
熱波に包まれた神経は
痛みを
伝えるんだ

逃避の
現実逃避の
昼寝の海底にも

痛みが
命の現実を届ける

なんたる
なんたる現実の
健やかな
執拗さ

いつまで

 

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「無題」

 

宿題に締め切りはなく
果てることない稜線を歩く
何度間違えられ
再び間違うだろう
そうして踏みしめられてきた道を
変われるというのか
おまえの塗り重ねられた
記憶
それでも変わる望みを
持つのか
この時間の果ての
今に