細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

本当に考えねばならないのは、福島第一原発の事故処理をいかに行うかであり、私たちはその本質課題から目を逸らされてはならないー汚染水海洋放出議論の手前で

汚染水海洋放出が福島県でもそれが例え大阪湾であろうと危険なことだ。 まずトリチウム以外に除去されていない放射性物質が明らかになっている。 除去できるとしていたのに、除去されていないことが東京電力のデータで明らかになり、昨年来朝日新聞共同通信が報じている。 また、ストロンチウム90やヨウ素129、ルテニウムなどの厄介な放射性物質の基準値超えの存在が明らかになると、昨年開かれた経産省の多核種除去設備処理水に関する委員会は紛糾し、漁連や環境団体などの頑強な反対で陸上保管も検討課題になった。

これらの経緯を踏まえない、安全という放言が松井市長や規制委員長まで出ている。除去しきれていない複数の放射性物質が明らかになっている。 日本人も世界中の人々も誤魔化されてはいけない。後世に禍根を残す決断となり兼ねない。 それどころか次に述べるように海外の政府は安全ではないことに気づいて、日本政府に抗議をしている。

海洋放出。海はつながっている。どこで出そうとこれは助け合いにならない。日本の海の安全だけでなくむしろ国際問題に発展する。韓国政府が反対しているのだ。報道ではロシア政府もすでに反対表明しており、両国とも、日本が海洋放出以外の処分保管方法を思いつかないなら相談してほしいと言っている。

海外の政府が真剣に言ってくれてるのに、日本政府はこれらを袖にしている。 推測するに福島第一原発の状況が深刻であることを知られたくないのだろう。 オリンピックまで、あるいは終わった後に海洋放出したいのかもしれない。

しかし、大事なのは、汚染水を海に出すかどこで出すかという話ではない。 出すか出さないかどこで出すかに矮小化されているのが変。

溶け落ち、原型を無くした核燃料の上に直接注がれた水。これを安全に処理した実績は人間の歴史でもほとんどないに違いない。 ALPSという除去装置は何度も故障し、複数の放射性物質が基準値を超えている。基準値を超えないが含まれている放射性物質もある。 これは処理に失敗した水なのだ。だから海に捨てず、タンクに貯めてきたのだ。 出すか出さないかという議論以前に常識で考えれば、あらゆる手段資金を投入して、タンク用地を確保するのが国と東電のつとめである。 大阪よりはるか近くに、福島第二原発がありこれは稼働していない。

本当に考えねばならないのは、福島第一原発の事故処理をいかに行うかであり、私たちはその本質課題から目を逸らされてはならない。 本質課題から逃れるための海洋放出は許されない。

まず大事なのは、水を注入し続ける限り汚染水は増えるから、また場当たり的に海洋放出と言いだすだろう。 そんなことでいいのか。 まず水を注入するのではない冷却方法を考えなくてはならないのだ。 石棺式などがあり得るし、爆発したチェルノブイリ原発が採用している。

しかし石棺式は取りたくないのかもしれない。廃炉して片付けることができなくなれば、原子力事故の負の遺産が永続化し、原発維持が不可能になるのを望まないのかもしれない。 汚染水すらどうにもならずに海に出すというのに、アンダーコントロールなど言えるはずはないではないか。 この誘致の言葉も事実とちがいすぎる。 原発の大事故ですでに東京電力に多額の資金が注ぎ込まれている以上、全然アンダーコントロールではなく、原発国策は維持可能ではない。

さらに溶けた核燃料を取り出すために汚染水タンクの片付けを急ぐと言っているが、焦って溶けた核燃料を取り出すのは高線量すぎる。 端的に言って作業員の生命を考えて推奨できない。 ウクライナ政府も爆発した原子炉に残存する核燃料デブリを片付けていない。決死隊となるからだ。 それどころか老朽化した石棺の上に、放射性物質が飛散しないためのシェルターをかぶせている。 これがチェルノブイリ原発事故33年後の姿、スリーマイルも事故から40年経った今年やっと廃炉の方針ができた。 スリーマイルは爆発していないが、計画通り行くと事故から80年弱で廃炉という。 つまり三機もメルトダウン爆発した原発を抱えた福島第一が40年廃炉とはあまりにも焦りすぎだ。

結論を言うと、汚染水海洋放出も含めすべての不始末の元凶は、国と東電が廃炉を焦りすぎているからだ。 しかしそれでは作業員の被ばくを含め、様々な環境保全を無視した無茶な廃炉作業となるだろう。 作業は慎重を期し、廃炉作業員含めた様々な人や環境に影響を及ぼさないやり方でやらないと廃炉作業は持続できない。 廃炉作業を焦らなければ、海洋放出ではない、より適切な陸上保管と処理技術の検討に時間がさける。 その前に原子力発電業界が倒れると言われても困る。 業界ではなく人間と命が大事なのだ。 そのために最大の資金を国と東電は使うべきなのだ。