細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

【詩作品】生きているというガラス窓の遠くには

愛する 愛すること 愛することを始めること それはとても難しい それはとてもわけがわからない 人間には なぜ愛などと言うものがあるのか それは 生命が熟し 腐敗する過程の 必然的な生成物なのか

その日から町には 終わりからの時刻を 刻む時計が持ち込まれた 気づいたらカチカチ動いていて 目や耳をふさいだら 心臓の音が時計の音に なっている

僕も死ぬんだ とやかましい子どもたちに混じり 震えながら気が気でない やかましい子どもたちと同い年の 僕は子どもなのに やかましい子どもたちの叫びが 笑いが心に刺さる 僕の弟は この同級生よりはるかに若く 死んでしまった 青ざめた後 脳がクラクラして すごく辛く 立っていることができない

僕も生きているんだ 何のためでもなく 生きているというガラス窓の コワレモノ その 向こう側には 果てもない 冷たい青空が 広がっている その青空から 僕は 一発の爆弾として 投下されたが 限りなく不発である

涙を炸裂させても 届かない 親の愛する僕は この僕とは何か 違っている さみしくて そんな思いは 凍らせてしまったので 氷の塊は 僕の中でぎりぎり 痛んできた

愛されていたのかもしれない と 誰かが あなたが 宇宙が 僕を愛していたのかもしれないと ぼんやり 思う あたたかい部屋で やかんが吹いている

僕はずっと痛みを抱いてきたよ この思い わかるだろうか 僕は自分のことばかり 助かろうと たくさんの人を 知らない間に 傷つけていたのかもしれない だけど

夜空に 冷たい風船が 浮かぶ ケーキを食べて 毛布にもぐりこむ

たった一つの冬が来た なんども なんども滅びを繰り返しながら 恐々と 朽ちていく 生きている 体を生きている 体から温かさと 悲しみが吹き出して 夜が 寒く甘酸っぱい