【詩作品】青い衣の勇者が金色の野に降り立つお話を真剣に見ていた子どもが世界の終わりを見るとき
本気なんだってことを
他人にわかってもらいたくて
言葉を重ねてうるさくなり
声が大きくなったり
小さくなりすぎたり
やり過ぎたり
遠慮し過ぎたり
本気であることは
恥ずかしいものだ
本気で違うと思うから
真剣に怒っていたり
本気でそうだと思うから
しみじみと伝えたり
本気で苦しいから
息がつらくなり
本気で深呼吸し
本気で疲れている
そのように限度がわからない私です
本気で大切なものを
力を入れすぎて壊してしまったり
本気で探していたら
行方不明になったり
本気で笑ったら
怒られたり
本気ってなんですかと言われ
本気は本気ですと
説明になってなかったり
そのように本気であることは
恥ずかしいのだから
だから
本気でないふりをした
クールに振る舞うふりをして
YESを逆にNOと言ってみて
苦しく
苦しくなった
苦しくなってみて
思った
これは
本気なんだって
例え
理解されなくて
例え
容認しがたくても
これは本気だ
本気本気と並べてみたけど
本気に空が明るくなり
本気に風がふいている
本気に放射性物質は
崩壊し続け
本気に私たちは
虫の血に染められた
青い衣の勇者が
金色の野に降り立つのを
待つだろう
その映画を見たとき
私は世界が本気で変わると信じていた
本気で
風に乗って
本気な子どもで
途方にくれた子どもで
それは世界が
本気で壊れ始めたからかも
しれない
のうのうと寝そべる私の
数百キロ先で
おびただしい核燃料のクズが
形を失っている
おびただしい核の血は
おびただしい核の悲鳴は
かつて誇り高き民のいた地を
透明に
流れ続けてあふれ
命の耳がふさがれる
これは本当なのか
本気で疑い
本気で思う
本当に生きていけるのか
私たちは