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細々と彫りつける

Concering poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

【詩作品】ただ一回

山があって

もう歌うものがない

正直に生きているということを突き詰めていく

涙がなく

積み重ねられ崩れるものばかりである

 

あなたと知り合って時間が経ったとしても

あなたを受け入れる力がない私には

涙がなく

広い廊下のような雑踏を

苦しんで歩いているだけである

 

公園であなたの顔を見たとき

その顔はこちらをまっすぐ向いていた

まっすぐ向いていた目は何を見ているのだろうと

思った

私の姿があるはずの空間に何が見えているのか

私にはわからない

 

駅を歩いている

破壊されたこの世界の良心の

電流が空気の中を

無限に走っている

 

私はあなたに慰め許されたいが

それはすでに果たされているのかもしれない

空っぽの目標の中で

私は肌をさらし

裸のまま息苦しく飛んでいるのだ

 

柿の実が成り

柿の実は熟れて落ちて

地面に姿をつくる

嘔吐のようだが

鳥の鳴き声を聞いて気付く

これは豊かな実なのであると

 

あなたの幸せがなんであるかわからないということ

私の存在はそこからも開かれている

あなたの幸せに関心がないという

そのころ私が誰にも思われていない

ということはなく

あなたが誰かに肯定されていないということもなく

あなたと私が何を肯定すればいいのか

 

そこに衝撃が走り

小さな川が流れる

命の中で

これはただ一回だと思う

ただ一回が痛い

ただ一回がうれしい

ただ一回がなんでもなく

ただ一回がどうにもならず

無限の改札の向こうから

ただ一度だけが祝福であると

次の次の

その次の扉が

みえない

みえないまま

 

途方に暮れて

満たされて