細々と彫りつける

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安倍総理「自民党改憲案」は「私が世に出したのではない。谷垣総裁の時につくった」しかし「自民党改憲案を改憲議論のベースに」の奇々怪々

安倍総理民進党自民党改憲案がおかしいといわれ「安倍首相は「私が憲法草案を出した言うが、どこに出したのか。世に出したのは私ではない。谷垣総裁の時に出された。これは屁理屈ではない」と答えているんですね。要は谷垣が作ったんだからわたしはしらないということです。

しかし「国民が心配しているというが、我々はこれを示した4回の選挙で、皆さんよりは圧倒的勝利を収めている」と選挙で勝ったから自民党改憲案は承認されたとも述べているんですね。

つまり自民党改憲案のだめな部分は谷垣さんのせい、しかし選挙で勝った成果だけは私が受け取るという都合の良すぎる話にしか聞こえません。

しかも安倍政権が選挙に打って出たのはいずれも「アベノミクス」「消費増税延期」を問うたもので、端っこには書かれていたかもしれませんが、安倍政権が勝ったからと言って憲法改正していいということにはならないはずです。

私は安倍政権に否定的ですが、もし私が安倍政権シンパであってもちょっと話がおかしいというふうに論理的には思うのではないかと思います。

長妻氏は、基本的人権を「現在及び将来の国民に与えられる」とする憲法11条の文言が、自民党改憲草案では削除されている点も追求。「自民党の責任者として、なぜこういう改正草案を出したのか。基本的人権に関わる条文を変更したのか」と説明を求めた。

これに対し、安倍首相は「私が憲法草案を出した言うが、どこに出したのか。世に出したのは私ではない。谷垣総裁の時に出された。これは屁理屈ではない」と反論。憲法草案は、あくまで自民党改憲の全体像をわかりやすくしたもので、憲法審査会に提出したものではないという姿勢を示した。その上で、「国民が心配しているというが、我々はこれを示した4回の選挙で、皆さんよりは圧倒的勝利を収めている」と挑発した。

 

www.huffingtonpost.jp

 

で、あれは谷垣の作った案だと言っておきながらこうも答えているんです。

安倍晋三首相は30日午後の衆院予算委員会で、憲法改正について「自民党草案をベースに議論してほしい」との考えを示した。あわせて「そのまま通るとは思っていない」とも述べ、各党の主張を取り入れる姿勢を示した。自民党草案を改憲の議論のたたき台にするのは無理だと主張した民進党細野豪志代表代行への答弁。

首相、憲法改正「自民党草案をベースに議論してほしい」 :日本経済新聞

 

10月3日に長妻議員に「あれは谷垣さんが作ったもの」といいながら、そのわずか四日前の9月30日には「自民党草案をベースに」といっているのです。

谷垣がつくった不完全な案だが選挙で勝ったので国民に承認されたし、そのまま野党の追及を逃れるとは思っていないが「改憲議論のたたき台にしてくれ」と。

 

確かに案というのは不完全性は免れないでしょう。

しかし、今自民党改憲案が批判され、このままでは議論を始められないと難色を示している人が多いのは、自民党改憲案には多くの問題があると憲法学者などから指摘されているのです。つまりそれは憲法が国民から政府への命令であるという性質を踏まえておらず、国家が国民に今より多い義務を求めていること、基本的人権自由主義について軽視されているという指摘です。

 

そのことが30日の審議からずっと問題になっています。

憲法の最高法規の章で基本的人権を「永久の権利」と定めた九七条を巡り、安倍晋三首相と民進党細野豪志代表代行の論争があった。首相は自民党改憲草案が同条を削除している理由を「条文の整理にすぎない」と説明したが、細野氏は「九七条は非常に重い。なぜ削除したのか」と批判。自民党草案を改憲議論のベースにすることは認められないとの考えを示した。

東京新聞:憲法97条で応酬 細野氏「なぜ削除」 首相「単なる整理」:政治(TOKYO Web)

条文の整理に過ぎないといっている97条は

 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬(しれん)に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

人権がなぜ大事かの本質規定です。こんなすごい中身をを「条文の整理」だけで削除できるとお考えの総理や「谷垣」自民党改憲案の持つ民主主義観は危うくないでしょうか。

97条を削除しても11条があるから大丈夫と総理は言っています。

11条は以下の文言です。

国民はすべての基本的人権の享有を妨げられない。 この憲法が国民に保障する基本的人権は侵すことのできない永久の権利として現在及び将来の国民に与えられる。

 「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬(しれん)に堪へ」という部分はどこへ行ったのでしょうか。

人類が長い奴隷制、王制、経済的政治的不平等の時期を経て獲得したという人権の意味が消えてしまっています。条文内に存在するということはだからこそ簡単に変更できないということです。

安倍政権及び「谷垣」改憲案は人権を獲得してきた人類の歴史を憲法内の実効的な文言として尊重する気はないということでしょうか。

別にいちいちの文言に深くこだわるわけではありませんが、このような重要な問題を「条文の整理」といいぬける総理自民党の法感覚、人権感覚、歴史感覚に強く懸念を覚えます。