細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

工業業界紙が放射能汚染土壌再利用を推奨し、がく然とする

 

日刊工業新聞放射能汚染された土壌の再利用を推進する記事を書いていますが、8,000ベクレル基準やさまざまに指摘される疑問についてはほとんど何も触れずに、ひたすら震災瓦礫と同じ理屈を展開しています。
せめて基準が80倍された事実に触れないと誠実さを欠くのではないか。


8,000ベクレルは従来の原子炉ゴミの再利用基準=クリアランスレベル100ベクレルの80倍です。

リアランスレベルの年間実効線量は外部被曝にして、年10マイクロシーベルトと言われています。
しかし8,000ならば、その80倍で800マイクロシーベルトに達します。
これは1ミリシーベルト近く無視できる「微量」な線量ではない。むろん直にそばに置くわけではないのですが、それでも工事作業者や周辺住民は工事中内部被曝しないのか。

 

また政府は、覆土して遮蔽するといいますが、防潮堤の基礎材に使われるなら、災害などで防潮堤が破損した時に流出する危険がすでに指摘され、テレビ朝日のそもそも総研で、放映されています。
また、地下構造材に埋めて仕舞えば地下に雨水などが浸透したりするでしょう。
また毎日新聞が暴露したように、8,000ベクレル最大の土壌を埋めた場合、100ベクレルまで下がるには170年もかかり、政府は長期管理目標値を作りあぐねています。

つまり前代未聞のやり方なんです。


政府はなかなか福島や関東に指定廃棄物の処分場がつくれず、しかし帰還はさせるというので、慌てて、避難指示解除地域にうず高く積まれたフレコンの中身を全国で処分するためにこの基準を作ったと考えられますが、帰還自体に強く問題がある中、さらにそこにある汚染土壌をリサイクルとは、、

そもそも何かおかしいではないですか。復興の妨げになっているのは、政府の後始末まで考えない除染計画、非常に問題になっている放射能基準策定、住民の意向を組むことなく予定ありきの帰還、避難者や被害住民への東電の不十分な補償と政府の避難者や被災者への支援打ち切りではないですか?

除染袋がこれほど積み上がるまで、手をこまねいていた政府や学者やマスコミの責任はないのですか?

それを汚染土壌は危険ではないから受け入れてとは何重もの議論のすり替えではないか。


日刊工業新聞業界紙ですから業界の中にうっかり納得する人もいるかもしれません。

ですからもう少し客観的に記事を書いてくださらないか。せめて基準値には言及して是非を深める議論を呼びかけるべきだったのではないか。

 


このようにある種の誘導的な論調があらゆる媒体で展開されるのは、憲法や他の公共事業、再稼動でも同じです。注意しましょう。

民主主義は正確な情報を示して、議論をすべきですが、業界利害や政府の意向が重なるとこのような記事になると思うと、この国には民主主義はないのではないかという感を新たにせざるをえません。

 

社説/放射性物質汚染土の処理−安全性を確認して再生利用を進めよ | オピニオン ニュース | 日刊工業新聞 電子版 https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00392512


放射性物質汚染土の処理−安全性を確認して再生利用を進めよ
(2016年7月13日 総合4/国際)

環境省東京電力福島第一原子力発電所事故による放射性物質汚染土を、盛り土などの構造基盤材に再生利用する方針を打ち出している。国民の間には微量の放射線に対する不安があるが、被災地の復興に欠かせない施策だ。安全性を確認しつつ、再生利用に取り組みたい。

福島県内に残る汚染土は、最大で推計2200万立方メートル(東京ドーム18杯分)。原発周辺だけでなく広範囲の市町村の仮置き場に山積みされており、これが物心両面で被災地の復旧・復興を妨げている。

原発のある大熊、双葉両町では、中間貯蔵施設の整備が進んでいる。今春、各地の仮置き場からこの中間貯蔵施設への本格輸送が始まった。一方で汚染土を処理してから土木資材にする再生利用の安全性を巡り、議論が起きている。

汚染土の最終処分量を減らすためには、土中から放射性セシウムが付着しやすい細粒分を取り除いて再生利用することが不可欠だ。環境省は管理体制が明確な公共事業に限定して、処理ずみの土を土木工事の構造基盤材に活用する方針。放射性物質汚染対策特別措置法に準じ、用途ごとに住民や工事作業者が追加的に受ける年間線量を覆土などで抑える遮蔽(しゃへい)基準を設けた。

ただ処理ずみとはいえ、土中のセシウムは土木構造物の耐用年数を超えてごく微量の放射線を出し続ける。その点で「100年を超すような管理は非現実的」という反発が、関係者の一部から出ている。

東日本大震災の直後、全国の自治体はこぞって被災地復興に協力する姿勢を示した。しかし津波で生じたがれき処理では、住民の中に放射能汚染を懸念する声があったことから受け入れにきわめて消極的だった。

人体に影響のあるレベルは論外だが、微量の放射性物質まで完全に取り除くには膨大なコストがかかる。もともと自然界には放射線が存在しており、その強さは地域によっても大きく違う。政府は関係者に安全性を十分に説明すべきであり、あいまいな理由で再生利用が進まないようでは困る。」