細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

【詩作品】吹き渡る風はなぜさみしいのですか

もうここで立っていられないよ

帰れたらいいのに

このシャツも靴もニセモノだ

空もニセモノだ

この灰色の道はニセモノだ

僕の眼もはらわたもニセモノだ

全部ニセモノだ

全部ニセモノなら、本物とニセモノの区別はつかないね

ニセモノという僕は何者なのだ

 

本当の心を話したいけれど

いつまでも続く坂道のように

本当は果てしなく上昇していく

この坂道には終わりがない

君のいる場所に本当が届かない

 

僕は家へ帰ろうとする

どこが家でもどこが故郷でもない

僕はどこへも帰れない

でも今日は眠らねばならないのだ

眠らなければ次の日はなく

次の日がなければ

たとえ次の日がわからなくても寝ようと思う

 

永遠の坂道から引き返し

どこへもいたらない暗い穴を一つ一つ潜っていく

肩が沈んでいく

目を君に向けることができない

僕の眼は本当ではない

僕の眼はニセモノかもしれない

そのニセモノの目で見た君は誰だろう

手触りのない夜をひたすら潜っていく

空洞と空洞をつなぎ合わせる

僕の体の中には空洞ばかりで

すき間ばかりでいいじゃないか

 

ここは風景で

ここは見せられない場所で

その場所を開くことにしようかと思う

僕の無残を見てくれますか

ここにある残酷を見てくれますか

ここにある草原を見てくれますか

草原を渡る風は暑い

どうして僕の洞穴には草原があるのですか

君の山はどこにあるのですか

手はどこにあり

耳はどこにあり

本当の気持ちはどこにあるのですか

 

僕らは人間ですか

人間を証明できますか

この証明書で人間を証明できますか

この笑顔は本当ですか

僕の疑問はどこへ走っていきますか

疑問を持つことは意味がありますか

 

そこで吹き渡る風はなぜさみしいのですか