細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

環境省が放射能汚染対処特措法見直しせず−気になる放射能汚染廃棄物対策について骨子案を見る

放射能汚染における除染や汚染廃棄物処理の根拠法である放射能汚染対処特措法は3年経過し施行状況のチェックが行われてきました。
私は注目していました。
なぜならこれはがれきをはじめとした放射能汚染廃棄物とその除染、焼却、処分を規定した法律であり、8000ベクレルまで一般廃棄物とした悪法だからです。

施行状況の検討の結果基本的には見直しを行わないようです。

9月1日の毎日新聞です。

東京電力福島第1原発事故に伴う、除染や指定廃棄物の処理を国の責任で実施することなどを定めた放射性物質汚染対処特別措置法の見直しを議論する有識者検討会が31日、骨子案を公表した。除染も指定廃棄物処理も「軌道に乗って進捗(しんちょく)している、または進捗しつつある」と判断、特措法を当面見直さないとした。
http://mainichi.jp/shimen/news/20150901ddm041040096000c.html

以下がその検討会のページ。
放射性物質汚染対処特措法施行状況検討会(第4回)
平成27年8月31日(月)
http://www.env.go.jp/jishin/rmp/conf/law-jokyo04.html

発表された骨子案です。

放射性物質汚染対処特措法施行状況検討会 取りまとめ骨子(案) [PDF 442KB]
http://www.http://www.env.go.jp/jishin/rmp/conf/law-jokyo04/lj04_mat01.pdf

そこでは「福島県以外の指定廃棄物のように、長期管理施設の設置に向けて、候補地の選 定手法を丁寧に公開しながら策定する等、懸命に道筋を模索している最中の課題につい ては、現行の制度的枠組みを見直すことがその解決に資するとは考えがたい。 」という評価になりました。
しかし除染や汚染廃棄物処理については細かい制度的工夫がされることは今後もありうるし、
取りまとめ骨子の中には現状を環境省から見たときの報告として重要なものもあるように思います。


 取りまとめ骨子(案)の特措法の評価は

○ 特措法の制定や施行に当たって参考とされた廃棄物処理や土壌汚染対策に関する環境 行政の蓄積もあって、特措法の基本的枠組みそのものは有効に機能していると考えられ る。他方、汚染状況重点調査地域の円滑な指定解除、除去土壌の減容化・再生利用の着 実な実施など、特措法に基づく一連の措置を円滑に完了するために今後制度面を含めた 整理を要する点も残されており、これらについては改めて施策の進捗を確認した上で対 応を図ることが適当である。

○ また、福島県以外の指定廃棄物のように、長期管理施設の設置に向けて、候補地の選 定手法を丁寧に公開しながら策定する等、懸命に道筋を模索している最中の課題につい ては、現行の制度的枠組みを見直すことがその解決に資するとは考えがたい。

○ こうした状況に鑑みれば、現時点においては、現行の枠組みの下で、施策を前進させ ることに総力を挙げることが重要であり、その上で除染実施計画が終了する時期を目処 に、改めて点検を行い、特措法に基づく一連の措置の円滑な完了に向け必要な制度的手 当て等を行うことが適当と考えられる。

これが今回の報告の肝の部分ですね。
指定廃棄物の福島県外の候補指定をめぐっては、千葉県千葉市、それから栃木県塩谷町宮城県加美町が全町的な猛烈な反対をしていて難航しています。
塩谷町加美町放射能汚染対処特措法の改正を目指しています。
つまり全部の指定廃棄物を福島県の第一原発隣接地域に集中管理するように提案しています。

環境省は中間貯蔵施設の土地を買うだけでも地権者の特定、説得に困難を極めています。また福島県以外の放射能汚染が深刻だとは思われたくないようで、この塩谷町加美町が提案する改正には否定的です。
環境省からすれば加美町塩谷町に従いたくはないということを迂遠にいっているのでしょう。

もう一つ日弁連から8000ベクレルを指定廃棄物とみなす基準は数値が高すぎる従来放射性廃棄物の指定基準としてきた100ベクレルにせよといわれています。
これもけん制し見直しをしないとした形ではないでしょうか。

この四年間8000ベクレルを下回る廃棄物はどんどん燃やされていて、8000ベクレルを上回るものも鮫川村などで爆発したり地権者の書類をねつ造したりして燃やしました。
滋賀県高島市をはじめ全国に不法投棄された汚染木くず事件もありました。
それらへのまともな総括はないようです。

つぎに気になるのは、「除染土壌の減容、再生利用」という言葉です。

年度内に土壌分離試験 中間貯蔵保管減量化 環境省初の検討会

環境省は今年度、中間貯蔵施設で保管する汚染廃棄物の減量に向け、汚染土壌を放射性セシウムが付着しやすい粘土などと、砂・れきに分離する「土壌分級」の実証試験を開始する。21日に都内で開かれた「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」の初会合で、同省が明らかにした。

 試験では、新たに設置する実証プラントで汚染土壌をふるいに掛け粘土と砂・れきに分離。放射性物質濃度の低い砂・れきについて土木資材への再生利用の方法を検討する。
https://www.minpo.jp/news/detail/2015072224229

福島民報7月22日の記事です。

汚染土壌をふるいにかけ、汚染の高い泥を取り除き
汚染の低い砂やれきを取り出して、土壌資材として公共事業の中で再利用するというのです。
本当にこれで汚染のないものを取り出せるのか。
というか再利用していいのか。

実は環境省はもうひとつの廃棄物も再利用をしています。
それは対策地域内廃棄物といって、政府が汚染が濃いと指定した福島県浜通りの地域に存在する廃棄物で、処理が遅れている震災瓦礫などのです。
これも再利用していいのだろうか。

対策地域

先ほどの骨子に戻りましょう。

<対策地域内廃棄物>
○ 対策地域内廃棄物については、平成 25 年 12 月に一部改定を行った処理計画に基づき、帰還の妨げとなる廃棄物の撤去と仮置場への搬入を優先し、搬入完了目標を市町村毎に設定して処理が進められている。廃棄物の処理に当たっては、片付けごみや災害廃棄物の収集・運搬を可能な限り除染と一体的に行うなど、効率的に実施されている。また、コンクリートくず等について復旧事業の資材とする等の再生利用も行われている。

さきほどの除染土壌について中間貯蔵施設に運び込む量があまりにも多いので、再生利用を企てていますが、これはまだ実験段階です。

では中間貯蔵施設とは。
これは非常に大きい施設です。福島県中の指定廃棄物を持ち込みます。
第一原発のある大熊町双葉町候補地です。

施設の構成
受入・分別施設、貯蔵施設、減容化施設、常時モニタリング施設、研究等
施設、管理棟、情報公開センター、修景・緩衝緑地等
施設の規模
容量(推計) 1500 万 m3〜2800 万 m3
必要敷地面積(推計) 約3km2〜約5km2
http://www.reconstruction.go.jp/topics/siryou-4.pdf

五㌔四方にたくさんの関連施設、焼却炉が立ちます。
10万㏃を燃やしますからとてつもないものになります。

15年7月15日に都内で開幕した「環境放射能対策・廃棄物処理国際展」(RADIEX2015)でも、中間貯蔵施設の動向がクローズアップされた。国立研究開発法人国立環境研究所の大迫政浩氏は  

200トンの炉で年に250日稼働させて、それを3〜5年で処理するとすれば、それだけ考えても仮設焼却炉は数十基必要になる。ですから中間貯蔵(施設)に仮設焼却炉がずらーっと並ぶイメージ
と話し、中間貯蔵施設には数十基の焼却炉建設が必要だとの見方を示した。
http://www.j-cast.com/trend/2015/07/17240566.html?p=all

現在政府は避難区域の指定解除と帰還を進めており、本当に大丈夫か私は心配です。

で何が大変かといえば一番大変なのは土地の買取が法的にも物理的にも大変なのです。
また地権者は心情的にも複雑な思いでいます。
もちろん処分場がなくてはならないのはわかる。
しかし汚染を出した企業にペナルティはないし、なんだかすっきりしない。
30年後に返還し、廃棄物をもちだすといいますがそんなことが可能なんだろうか。
先ほどの骨子案によれば

○ こうした動きと並行して、中間貯蔵施設に係る用地交渉が進められている。中間貯蔵施設予定地においては、登記記録上約 2,400 名の地権者が確認されており、そのうち約 1,200 名の地権者の連絡先が環境省により把握されており、公有地と併せその所有地は敷地予定地全体の約8割に相当している。平成 27 年8月 15 日までに約 950 人の方々に個別訪問による説明を行い、建物等を所有されている方についてはその承諾を得て、物件調査が進められている。同年8月 15 日時点での契約件数は7件となっているが、これらの取組を踏まえ、今後順次補償額の提示が行われていく予定である。また連絡先を把握できていない地権者約 1,150 人のうち約 800 名の方々は、死亡している又は登記の年代から死亡していると推測される者であり、その相続人について調査が進められているところ。

○ このように中間貯蔵施設に関しては、一一歩着実に取組が進められている一方、現時点ではまだ、用地の取得が十分に進み本格的な施設整備や輸送の見通しが立てられる段階には至っていない。

環境省も買取が進んでいないことを認めていますね。

また放射能汚染された廃棄物の焼却炉、これは福島県内の主に浜通りの帰還をする地域にも立ちます。

<指定廃棄物>
○ 指定廃棄物全体の8割強を占める福島県内の指定廃棄物については、焼却・乾燥等の処理によって、減容化や性状の安定化を図る事業が進められている。これまでに福島市郡山市における下水汚泥の処理、鮫川村における農林業系廃棄物等の処理が完了したほか、飯舘村においては周辺5市町の指定廃棄物を集約処理する処理施設が建設中(今秋稼働予定)であり、また、県中・県南等 24 市町村の農林業系廃棄物についても、東京電力開閉所の敷地(田村市川内村)において、仮設焼却施設の設置に向け発注準備中であるなど、着実に進捗している。
○ また、これらの事業により発生した処理後の焼却灰等を含めて、福島県内で発生した指定廃棄物のうち放射能濃度が 10 万 Bq/kg 以下のものについては、既存の管理型処分場であるフクシマエコテックを活用して埋立処分する計画であり(10 万 Bq/kg 超のものは、中間貯蔵施設への搬入)、これまで地元の富岡町及び楢葉町の当局や議会、住民への説明が実施されてきた。

○ 平成 26 年度末時点で、8市町村で、帰還の妨げとなる廃棄物の仮置場への搬入について、一部の家の片付けごみを除き完了した。また、仮設焼却施設についても、平成27 年8月時点で、7市町村8施設で設置が予定されている中、既に6施設が稼働中であり、残り2施設についても建設工事中あるいは建設工事の準備中である(平成 27 年8月現在)。このように、対策地域内廃棄物に関しては、一部、帰還困難区域についての処理方針の明確化の要望等は存在しつつも、改定後の処理計画に基づきその処理は概ね順調に進捗している。

そもそも帰還が危ないのではないか、住民の意志が反映されていないのではないかということもあります。楢葉町も帰還する地域になりましたが、楢葉町に10万ベクレルを下回る廃棄物を処分します。いいのでしょうか。
さらに飯館、田村、川内村の焼却炉計画も批判されるべき点があるように思います。。

また8000ベクレルを下回る「特定廃棄物」は普通の廃棄物と変わらないやり方で処理処分されます。これは福島県内のみならず、関東東北広域に当たります。
人口の多い地域ですので注意が必要です。


次に気になるのは除染ができるのか、山林などはどうするのか、不正な除染が行われていないかなどですが、ここではあまり語られない汚染重点調査地域の解除の問題をみてみます。

<汚染状況重点調査地域(市町村除染地域)>
○ 市町村が中心となって除染を行う汚染状況重点調査地域についても、本年6月末までに子どもの生活環境を含む公共施設等の除染は福島県内では約9割、福島県外ではほぼ終了、農地・牧草地についても福島県内では約8割、福島県外では終了、といった着実な進捗が見られる。一方で、一部進捗が遅れているものもあり、特に福島県内の住宅は6割、道路は3割、生活圏の森林は4割の進捗に留まっている。
○ 平成 25 年にその時点で利用可能なデータを用いて点検が行われたところ、「平成 25年 8 月末までに、一般公衆の年間追加被ばく線量を平成 23 年 8 月末と比べて、放射性物質の物理的減衰等を含めて約 50%減少した状態を実現する」という目標に対し約 61%減少、「学校、公園など子どもの生活環境を優先的に除染することによって、平成 25年 8 月末までに、子どもの年間追加被ばく線量が平成 23 年 8 月末と比べて、放射性物質の物理的減衰等を含めて約 60%減少した状態を実現する」という目標に対し約 64%減少している。

実は20ミリシーベルトの避難基準の下に、1ミリシーベルトまで除染する、あるいは汚染対策をする地域があり、北は岩手県から南は千葉県まで、ホットスポットが地域指定されていることはあまり知られていません。
環境省サイトより転載)
環境省は指定解除も検討しているようなのですが、「特に福島県内の
住宅は6割、道路は3割、生活圏の森林は4割の進捗に留まっている」という現状のようです。
また、中間貯蔵施設や各県の処分場が作れていませんので、除染をしても置き場所がなく、仮置き場、仮仮置き場がそこかしこにつくられ、実はここが最終処分場になるという不安を持っておられる方も。
栃木や宮城で処分場候補地反対があり、仮置き場の人も困っている。
みんな困ってどうしようもない状況です。

除染は処理や処分まで考えれば困難であり、一定程度下がっても森や山や川が汚染されていると再び町の線量は戻ってしまいます。
したがってチェルノブイリがそうであったように、除染だけではなく、移住や保養が行われるべきでありますが、政府は2018年までの帰還、オリンピックを進めています。

そして避難者の切り捨て、健康影響の無視。

安保法案とともにいったいこの国はどこへむかっているのか。

東電原発事故にともなう「子ども・被災者支援法」(支援法)の基本方針で、国は福島県内に設けられた「支援対象地域」について「避難する状況にない」とする改定案を示している。これに対して県外に避難中の住民らは「避難者の切り捨てだ」などと反発。7月29日に東京都内で会見を行なった。

http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?p=5433