細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

【書評】大阪自治体問題研究所編「大阪市解体それでいいのですか?ー大阪都構想 批判と代案ー」

大阪市解体それでいいのですか?―大阪都構想 批判と対案―

大阪市解体それでいいのですか?―大阪都構想 批判と対案―

大阪自治体問題研究所編「大阪市解体それでいいのですか?ー大阪都構想 批判と対案ー」読了しました。

とてもわかりやすい本です。
この本は都構想を性急に住民投票にかける橋下維新の方法を逐次丁寧に批判しています。
維新による正常な議会運営を無視しての、乱暴な協定書の議論妨害、公明党を丸め込んだ非民主的なやり方についても適切な批判がされてます。
また、住民投票にかける協定書の中身について触れられています。
大阪市解体で、府に権限や財源が移行して、コストばかりかかり、自治体制度もより複雑化し、住民自治が弱められる。
これが協定書の内容に沿って、批判されています。

また、都構想はカジノや大規模な商業地開発を想定して、自治を弱め、権限を府に集中させるため、大阪の住民のふところがさらに冷え込む危険性を指摘しています。
なぜなら、大企業に優位な政策やカジノのように市民からお金を吸い上げる政策だからです。
その代案として、この本は、企業の内部留保を吐き出させるための大企業課税強化、景気浮揚のためにも賃金アップを主張しています。
地方自治体では難しいことも多いですが
ブラック企業規制条例や雇用安定化条例をつくり
維新もすすめるネオリベによる生活破壊から市民を守り
企業に適切に地域貢献し、破壊をすすめさせないよう
取り組むよう提案しています。
また、維新のような単なる巨大開発ではなく、住民生活の質を向上させ、町の力を取り戻す福祉や災害対策の公共事業開発や大阪にもたくさんいる中小企業対策を説いています。

最後にこの本は、都構想の是か否か以前に、
大阪市の廃止を安易に拙速に決めていいのかを争点とし、短い時間で結論が出せないという大多数の市民の人々も反対票を投じるよう呼びかけています。
また、大阪市解体は、イデオロギー以前に、人々が暮らす公共財の破壊になりますので、政治的な考え方以前に、破壊を許さない態度を広く育てることを説いています。
その良い例を堺市に見出しています。


自治体の未来は、自治体住民が適切な情報の元に不断の参加によって実現されるものです。私たちは自分たちの町を大切にする住民参加を行使できない状況に置かれています。
仕事に疲れた目で橋下市長のバイアスに満ちた威勢のいい言説ばかりシャワーのように浴びていると猫の目のように発言が、変わり様々な議会や世論誘導を得意とする彼らに都合のいいほうこうに
導かれてしまいます。
自治体つまり大阪市の存続はあなたの未来の問題です。
あなたが利用する図書館や市民施設、あなたが払う市税、市に莫大な富をもたらし、市民の生活を支える市バスや市営地下鉄、介護保険や健康保険とそれによるサービス、あなたが子供達を通わせる学校、これらを支える大阪市を性急に解体していいのでしょうか。

私は大阪府民ですがこれらが進めば、大阪府のあり方さえ歪められかねない心配でいっぱいです。

こんな大事なこと、町の仕組みを壊すこと、もうちょっとちゃんと考えたい、そういう真摯な声が広がる声を祈念してやみません。
この本の内容はわかりやすく明快です。
しかし町の作り方にはさまざまな意見があると思います。
これを機会に大阪を、大阪市を性急に壊すのではなく
未来を作る議論をしよう。
これが私の感想かもしれません。