細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

20150207 矢ヶ崎克馬先生お話会(司会守田敏也さん)「内部被ばくってなあに?」午後の部報告

矢ヶ崎克馬先生お話会
内部被曝ってなあに?

日時:2015 年2月7日(土)
午前の部 11:00〜12:30 昼食持ち寄り座談会
午後の部 13:00〜14:30 矢ヶ崎先生お話会 
     14:30〜16:00 矢ヶ崎先生&守田敏也さん対談+質疑応答

会場: 明日都浜大津 5階中会議室



私は自宅から電車を乗り継いで浜大津に向かいました。
少し遅れていたので最初の部分はツイキャスで聞いていました。

安倍政権辺野古すすめ、人質事件を機に集団的自衛権に。 ( @deaeteyokattana 矢ケ崎先生 http://moi.st/8570c9b )

とにかく戦争をしたいという安倍総理の考え ( @deaeteyokattana 矢ケ崎先生 http://moi.st/8570c9b )

彼は救出に失敗したのではなく、はじめから戦争をしたいのではないか ( @deaeteyokattana 矢ケ崎先生 http://moi.st/8570c9b )

カリウム一万個に対しカリウム40は1 ( @deaeteyokattana 矢ケ崎先生 大津🍀 http://moi.st/8570c9b )

自然元素に対応するように人体はできている。人工核種はちがう。それを政府はごまかそうとしている。 ( @deaeteyokattana 矢ケ崎先生 大津🍀 http://moi.st/8570c9b )

ここで私は明日都浜大津に到着しました。

矢ケ崎先生なう

矢ケ崎先生はこのようにおっしゃいます。以降の発言は私の要約です。その点ご注意ください。
科学は現実をみること、それを虚心に評価すること、しかし被ばくという現実をICRPは見て来なかった。まずICRPの考え方を当てはめ、それにそぐわない現実を否定したり隠したと。

放射線はあらゆる分子にあたり、その結合を破壊する。それを電離とよぶ。故に病気をガンに限ること自体がおかしいのではないかと。

(これはとても鋭い考えです。分子結合はDNAに限ったものでもなく生体内にあるすべての分子は分子結合しており、それは微弱な電気エネルギーによって結合しています。それをすべて切断したり電気エネルギーを付与して変化させてしまう)

矢ケ崎先生は続けます。
放射線は放射性の原子核から放出されるエネルギーであり、それを出す力を放射能とよぶ。放射能はキュリーの時代に作られたことば

放射線は通常の原子の周りの電子を吹き飛ばす。この電子がペアとなり原子同士をつなげ、分子を構成している。しかしこのペア原子を吹き飛ばすと分子は結合力を失う。DNAだろうが血液だろうが心筋だろうが能才だろうが被ばくでは同じことが起きるはず

大腸のような細胞の代謝が激しいものも痛めるが心筋のように容易に入れ替わらない細胞の被ばくのほうが深刻



この図は皆さんよくみたかもしれないし、一部には単純化しすぎと言われる方々もいるが、本質を絵にしたものだと考えて欲しいと矢ケ崎先生

放射線による被害。
1急性症状 総量が大きい場合死に至る

2 分子切断による効果が全身症状として全面的にあらわれてくるとぶらぶら病

3 修復過程の変性

発がんなど


ICRP2007にはがんを修復過程の損傷に基づき一細胞から始まると認めながら、その一細胞のダメージからの発がん影響を評価できない。平均化された線量でいまだに把握しようとしている


矢ケ崎先生によれば、分子切断が弱った臓器で起きると、より被害が現れやすいのではないか、細胞の代謝が活発ではない臓器では分子切断ダメージが強く出るのではないか、さらに化学毒と違うのは放射線は単純に重金属などのような形での臓器特異的ではないこと。ゆえに様々な人体の場所で、様々な形態で被害が現れると。


吸収線量を臓器単位ではなく、放射線を浴びた細胞や組織に限局して評価すべき。と矢ケ崎先生。つまり、臓器全体で放射線の効果を割り算して等価線量をはじき出すのではなく、放射性物質の周囲がどのような放射線障害を受けているかを丁寧に評価すべき(おそらく現代の科学では非常に難しい評価。なので症状から背後に放射線が寄与しているか、被ばく者の被ばく状況を丁寧に見る必要あり。矢ヶ崎先生はこのあたりのことを原爆症認定訴訟で気づかれたのではないかと思う。国の基準は機械的に線量推定を当てはめるものであり被ばく者を襲った内外部被ばくやその被ばくの影響が疑われる様々な影響を丁寧に推定できていないことは原爆症認定訴訟で司法レベルで認められており、その証言台に証人として立ったのが矢ヶ崎先生)


ICRPだと臓器全体で評価する。細胞1と臓器には質量差は1兆倍ある。臓器全体で影響を割り算すると平均化されたとても小さな影響に見えてしまう。放射性微粒子は複数放射性元素や様々な元素から成り立ち短い範囲で浴びた細胞は複数回の電離を受ける。また放射性微粒子は複数放射性元素を含むため放射線が多数でる。もちろん、浴びた組織その全てが病気になるわけではないがICRPは局所被ばくを評価しそこねてないか。と矢ケ崎先生。鼻血をこの局所集中的な被ばくによる微細な鼻粘膜の損傷の積み重ねとしてよく説明できるのではないかと。

レントゲン。放出された線量=照射線量
照射線量から細胞や組織に当たらず通過した放射線を差し引いて、人体に吸収された放射線の吸収線量を割り出すべき。だが、ICRPは照射線量の概念自体をなくしてしまった。


矢ケ崎先生、お年なのに研究を重ね考察が深化しておられてすごい。


娘さんの足の骨折写真を出しながら日本の医療被ばくは世界の6倍と警鐘を鳴らす矢ケ崎先生

放射線は減衰するにしたがって時間あたりの吸収線量も減衰するが、ICRPは照射線量と吸収線量をきちんと分けて評価できていないために、正味の被ばくした吸収線量を割り出せていない。照射線量で実験結果を記述しててごまかし。と矢ケ崎先生

(これは例えば毎時10ミリグレイの放射線を肝臓に照射したラットで、肝臓にがんが発生したかしなかったかという実験の時、10ミリグレイは生体外部から機械から放出された正味の放射線の照射線量であり、それがどの程度肝臓や他の部位に吸収されたかという正味の値を出さなければ、線量効果が記述できないにもかかわらず、照射線量だけで効果を考察しており不正ではないかという突っ込み)

反核や民主的な先生方もICRPを信奉しておられ問題。市民が見分ける目をと矢ケ崎先生


守田さんによると、矢ケ崎さんはなぜそうなっているかを事実ベースから考えようとしている。しかし他の医者や物理学者はそれをやらない。なぜかICRPは教科書になっておりそれで学位をとるため、ICRPの前提を疑うことができない。


守田さん。微粒子の内部被曝は体内に小さなホットスポットができるからこわい。臓器の具体的なあり方により影響はちがうはず。なのに、どの臓器も同じものであるかのように効果を平均化、抽象化されている。それがICRPの基礎に埋め込まれて根深い。具体が大事。


ICRPが認めざるを得なくなったものだけを被ばく影響としているだけで、解明することなく、抽象化して被ばくの影響を、否定するのがICRP

「内部被ばく」の続編を製作中という矢ケ崎さん守田さん。楽しみです。

私は守田さんと矢ヶ崎さんに質問をしました。
守田さんがアメリカは空襲や原爆の戦争被害について謝罪していないとおっしゃったので、それを問うためには日本政府も従軍慰安婦や虐殺や様々な戦争犯罪についてアジアの諸国に謝罪して賠償しなければならなくなるのでそれが日本政府はいやだからアメリカに戦争犯罪を問うことなくむしろ一緒になった隠しているのではないかと。

守田さんは「正解です」と指で丸を作られていました。

矢ヶ崎さんにはこのように質問をしました。矢ヶ崎先生は原爆被ばく者の被ばくが日米合作で隠ぺい、過小評価をしていると被ばく者訴訟などを通じて考察され、その原爆被ばくのデータがICRPの被ばく評価の根本になっている故、ICRPを批判することで核被害、放射線被害の過小評価を問題視していると理解していると。そうすると、矢ヶ崎先生はわざわざこちらまで歩み寄ってこられて静かに話しを傾聴していました。
そしてこう質問しました。
「矢ヶ崎先生のように問題意識がある先生方がいる一方若い研究者の発信が見えてこない。これはいったいどういうことなのでしょうか」と。
矢ヶ崎先生は国立大学の名誉教授なのでこのようにお話されました。
「現在国公立大学は、独立行政法人となり、文科省から人材教育を求められている。この人材というのは、つまり企業に役に立つ人材ということです。職業人として役に立つ即戦力という意味です。従来大学は教養や倫理観などを育てることつまり広い意味での人格形成をしてこようとしたのですが、それができなくなるように方向づけられています。ですから、企業や経済の利益にならない研究も当然研究費が下りず、教官も研究者も大きな意味での問題意識をもって取り組む人材をはぐくむことができていません」と。
これにたいし、守田さんは若い人も問題意識のある人が少しずつ出てきているとフォローしていました。

少しまとめたいと思います。
矢ヶ崎先生の放射線についての考察にも全く誤りが含まれていないわけではないでしょう。しかし魅力的な考察です。矢ヶ崎先生のお考えを一概にデマとして切り捨てる方もお見かけします。

しかしそれはあまりにも乱暴ではないでしょうか。デマゴキーというのは政治扇動という意味があり非常にきつい言葉です。
矢ヶ崎先生は米軍の劣化ウラン問題や国の原爆被ばく者に対する政策の不備を批判しています。それは科学者が確かに政治的な問題について発言されておられることです。

しかしそれは次のような背景があってのことだと矢ヶ崎先生は話されています。

沖縄返還以降矢ヶ崎先生は、琉球大学において、物性物理学の研究を行ってきました。琉球大学の予算は当初小さく、大学を整備するのに大変苦労されたそうです。
彼は超電導の研究などを行っていました。
以下は研究業績です。
https://kaken.nii.ac.jp/d/r/70045037.ja.html

その時に沖縄県鳥島射爆場で、劣化ウラン弾の射撃訓練が行われたという事件がありました。
以下は琉球新報の当時の記事です。

米軍による鳥島での劣化ウラン弾事件で、琉球大学の矢ヶ崎克馬・理学部教授は、「鳥島周辺への放射能汚染はない」などとする報告書をまとめた米国・アームストロング研究所の調査結果について、「結論されていることは信頼できない」として環境や人体への放射能汚染を強く懸念している。矢ヶ崎教授は、発射訓練が行われた1995年12月、96年1月の鳥島周辺の風向きなどを考慮した上で、「エアゾール(微粉末)化した劣化ウラン放射能により、久米島をはじめ、慶良間諸島沖縄本島も汚染している可能性」
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-86470-storytopic-86.html

この時金属の専門家としてウランのことは研究の中でご存じだったので、発言した。さすがに在日米軍ウラン弾を発射していて安全というのはおかしいと。
これは沖縄で基地による様々な苦しみを見ながら研究されてこられた矢ヶ崎先生の切実な思いだったのでしょう。
発言する中で、これまで放射線の詳しい研究に触れてこなかったことを思い、勉強を始められたといいます。ゆえに自分は物性物理では専門家で金属の性質なども知っているけども。放射線研究の分野ではもともと素人であったと認めておられます。

しかしそういう矢ヶ崎先生に転機が来ます。
2003年に開始された原爆症認定集団訴訟。

国に放射線起因性を否定された被爆者の人々が認定を求めて起こした裁判です。全国に認定されないたくさんの被ばく者がいたため全国で訴訟が起きました。

矢ヶ崎先生はその証言台に立つよう要請が来たといいます。彼は最初厳密にいえば放射線の専門家ではない自分が証言をするのがいいのか悩んでいたそうです。
しかし断るにしてもまず資料を読んでからにしようと、アメリカが開発した原爆被ばく線量シミュレーションであるDS86を読むことにしたそうです。
そしてある事実を発見するのです。
原爆被ばく線量を推定するデータの一つに残留放射能の測定データがありました。アメリカ軍は巨大台風であった枕崎台風が広島を襲ったあとに土壌汚染を測定したのです。
当時荒野と化した広島の町を大雨と浸水が洗い流してしまい、線量が下がってしまったあとに測定をしているということがわかりました。
そして思ったそうです。
このような放射線の知識がたいして必要でもない簡単な不正ですら見過ごしてきた科学者、その中に自分もいる、これは科学者の責任だと。そして引き受けることにしたというのです。

こういうのも嘘だといわれるといけないので資料を張り付けておきます。

1 主張関係書面
 [訴状]
 1.訴状(2003年6月12日)/広島訴訟弁護団(資料1)
 [最終準備書面]
 2.最終準備書面 総論( 2006年7月7日)/東京弁護団(資料2)
 3.最終準備書面 各論 (2006年7月7日)東京弁護団(資料3)

2 証拠関係
 [意見書]
  1 運動を背景に作成された意見書
   1.広島・長崎原爆の入市被爆者・遠距離被爆者の放射線障害に関する意見書
  (2005年3月25日)/田中煕巳(資料4)
   2.2004年くまもと被爆者健康調査プロジェクト04(2005年8月24日)牟田喜雄(資料5)
  2 医学以外の自然科学系専門家の意見書
   (1)原爆放射線全体に関する意見書
    1.意見書(2004年11月15日)/澤田昭二(資料6)
    2.被曝実態に基づいて残留放射線被曝を評価する(2009年6月30日)/澤田昭二(資料7)
    3.意見書(2005年12月20日)安斎育郎(資料8)
    4.放射線による人体影響の評価に関する意見書(2004年9月10日)/野口邦和(資料9)
   (2)残留放射線内部被曝に重点のある意見書
    5.内部被曝原爆症(2004年12月19日/矢ヶ崎克馬(資料10)     6.意見書(2005年11月10日/市川定夫(資料11)
   (3)黒い雨に関する意見書
    7.”黒い雨”問題と気象シミュレーション(2004年11月10日)/増田善信(資料12)
  3 医師による意見書
   (1)放射線起因性全般に関する意見書(急性症状論を含む)
    1.原爆症認定に関する医師団意見書(2004年10月14日)
    /聞間 元、神 久和、高橋 稔、園田久子、向山 新、長谷川倫雄、青木克明、渡邉利絵、
    小西恭司、本田英雄、牟田喜雄(資料13)
    2.入市被爆者の脱毛について――日本原水爆被害者団体協議会アンケート調査結果から
    (2005年6月9日)/齋藤 紀(資料14)
    3.意見書(2005年6月9日)齋藤 紀(資料15)
   (2)個別疾病をめぐる意見書
    4.原爆被爆者の前立腺がんについての意見書(2005年11月20日)
    /聞間 元、神 久和、高橋 稔、園田久子、向山 新、長谷川倫雄、郷地秀夫、青木克明、
    小西恭司、本田英雄、牟田喜雄(資料16)
    5.原爆被爆者の白内障についての意見書(2005年11月20日)
    /聞間 元、神 久和、高橋 稔、園田久子、向山 新、長谷川倫雄、郷地秀夫、青木克明、
    小西恭司、本田英雄、牟田喜雄(資料17)
    6.原爆被爆者の甲状腺機能低下症についての意見書(2006年6月30日)
    /聞間 元、神 久和、高橋 稔、園田久子、向山 新、長谷川倫雄、郷地秀夫、青木克明、
    小西恭司、本田英雄、牟田喜雄(資料18)
http://www.nippyo.co.jp/book/5674.html

繰り返しますが、原爆被ばく資料や放射線関連データを独自に読み込んできた矢ヶ崎先生にももちろん無謬とは思いません。しかし、被ばくした人々が不可解な症状をたくさん証言されている事実にはよく寄り添う論理的な説明にはなっており、なによりICRP体系が人間の生命を軽視し経済的なコストや利益だけを追及し人権や環境を犠牲にしていることに強い憤りをもっていて、それは正義論としても非常に重要な問題点を提起していると思います。
被ばくが人道に反することはむしろ核推進側ではなく核被害を受けた多くの人々の声を受けて、有志の科学者が考察し調査し証言する中で明確になってきたことです。
アリススチュワート、ゴフマン、カールモーガン、ラドフォード、マンクーゾなど多数の科学者がそのような活動を行い、ICRPですらもがそれら慎重な声を受けて公衆被ばく限度を1ミリシーベルトにしてきたという現実もあります。
実はウクライナで保養や健診を公的に保障する基準は0.5ミリシーベルトなのですが。

むしろ日本では被ばくを危惧する専門家との生産的な討論が科学世界でほとんど行われていない、むしろ体制側の科学者がそれを強く忌避している。
また被ばくについて広島長崎においても体制側の科学者と被ばく者側の科学者が明らかに対立し、深刻な見解の対立がありそれは司法に持ち込まれ、司法は後者の知見を採用しているという事実もあります。

したがって、矢ヶ崎先生や澤田先生や多くの被ばくを懸念する科学者を単にデマ扱いしても何の意味もありません。それは科学界の発展にも被ばくによる人権侵害を是正することにも何ら役に立ちません。
福島の事故でも山下俊一や長瀧重信といったチェルノブイリ事故での被害を少なく見積もることに加担してきた専門家が国や自治体のアドバイザーとして放射線による被害は全くないといっている事実もあります。また国は高い放射線量の地域への帰還政策まで推進しており国連自由権規約委員会から帰還させないよう勧告されています。

被ばくについて真摯に考察し続けることが大事です。
そろそろ事故から4年もたってしまいます。
真摯な討議を切実に期待したいと思います。

大津の美しい港。矢ケ崎➕守田講演会おわり!


※ちなみに大阪府と市を相手取った大阪地裁での「震災瓦礫訴訟」においても先日、矢ヶ崎克馬先生と廃棄物処理の専門家熊本一規教授の証人申請が認められました。司法は放射線やがれき問題においても真直な討議を認めているのです。