水害に襲われる放射能汚染-栃木県塩谷町指定廃棄物処分場候補地・飯館村フレコン流出・福島第一原発
2015-09-09〜10に掛けて栃木・茨城に大きな被害を発生させた大雨は、塩谷
町の指定廃棄物処分場詳細調査候補地にも隣接する西荒川の越流による浸水を起こしてい ます。これにより、我々が従来から主張していた指定廃棄物処分場としては不適な土地で あることが証明されたはずですが、環境省は現地に職員を送り「浸水は確認されていない 」旨の報告をして、その事実を認めていません。
今回、塩谷町出身の栃木県議会議員船山幸雄氏による現地調査結果を入手したのでスライドショーにしました。
栃木県の指定廃棄物(8000㏃以上の放射能汚染廃棄物)の処分場候補地となっている塩谷町は水害に襲われ、上記のように処分場候補地は冠水や水の流れた後がおびただしい爪痕となって残っています。
放射性物質を含む指定廃棄物の処分場候補地選定問題で、塩谷町は15日、同町上寺島の候補地の台風18号による大雨の影響について、「(現地では)冠水した形跡がしっかり残っていた」とする文書を発表した。
13日の大田原市のフォーラムで、環境省が「川から冠水した状況はなかったと聞いている」と説明したことに対する反論。
【栃木県内広域水害】「処分場候補地に浸水跡や土砂」 塩谷町、動画サイトで公開 環境省の「冠水なし」に反論|下野新聞「SOON」
塩谷町はずっと指定廃棄物候補地に選定されるのは理不尽であり、町の声が国の政策に反映されないとして反対を続けています。
環境省はそれを組み入れず、調査を試みてきました。
しかし今回9月の台風水害に塩谷町の処分候補地が襲われ、町は塩谷町は適地ではないとして、環境省に反論しています。
環境省は9月24日時点でもまだ水害の影響はないとしていました。
小里泰弘(おざとやすひろ)環境副大臣は24日の定例記者会見で、塩谷町の指定廃棄物処分場候補地の台風18号による大雨の影響について「大雨の直後に現地を視察した環境省職員から、冠水の形跡はなかったと報告を受けている」と述べた。
しかし再三の抗議に環境省も現地調査の必要を認めるようになりました。
塩谷町によりますと、候補地のすぐ脇を流れる川の幅が広がっていたほか、冠水した痕跡があり、山の斜面から土石流が候補地に流れ込むなどしていたということです。こうした様子を撮影した映像を環境省に提出したところ、環境省から現地の調査を行いたいとの提案があり、町側は処分場の建設を前提としないことを条件に調査を受け入れる方針を固めました。10月14日に有識者を交えた調査が行われます。塩谷町は「現地が自然災害に弱く、処分場に向かないことを調査で明らかにしたい」としています。
同じように指定廃棄物の宮城県での候補地の加美町も町を上げての反対が行われています。
そして加美町自体、町が水害に襲われ、その時期に環境省の現地調査があったので、六回目の現地調査も拒否しました。
環境省は6日、宮城県加美町(かみまち)にある建設候補地の詳細調査に入ろうとしたが、抗議する住民らに候補地へ通じる林道の入り口をふさがれ、またも調査を見合わせた。環境省が調査を見合わせたのは6回目だが、7日も現地入りする意向を町に伝えた。
6日の抗議活動に加わった猪股洋文町長は「町は(9月の関東・東北)豪雨で被害を受け復旧に取り組んでいる。なぜこの時期に入るのか」などと反発した。同省東北地方環境事務所の東利博・保全統括官は「残念だ。雪は11月下旬だと思うので、まだ(調査をする)時間はあるだろう」と語った。【山田研】
加美町・塩谷町とも、指定廃棄物は自然減衰しており、広大な処分場を作る必要がないことやまた汚染の高い廃棄物は一か所で集中管理することを主張しており、また環境省の計画をゴリ押しする対応に強い不満を抱いています。
また、塩谷町は水害、加美町は地滑りなど廃棄物の処分地としての安全性自体に問題があるとしています。
以下は両町のページですが経緯がよくまとまっています。
- 栃木県塩谷町 - 指定廃棄物最終処分場候補地選定までの経緯と現状
次に飯館村です。
飯館村では仮置き場においていた指定廃棄物の入ったフレコンが流されるという大惨事が起きました。
さすがに環境大臣が謝罪しました。
「流出した袋を全て回収し、現場の管理を徹底してほしい」。除染で出た土壌や草木を入れた「フレコンバッグ」と呼ばれる袋の流出が発覚した11日、県は環境省に強く申し入れた。しかしその後の調査では要請を裏切る事態が相次いだ。流出した袋は24日現在、未使用分を含め448袋で、うち大半の437袋は飯舘村で見つかった。
こんな杜撰なことはありません。
そもそも仮置き場自体の安全性も疑われているのです。
安全性だけではありません。ここが本格処分場になってしまうのではないかという疑念を仮置き場や仮仮置き場の周辺の住民は持っています。
(そのため南相馬では仮置き場にしていた土地を地主が嫌がり、仮置き場ではなくすということまで起きています)
国や自治体は、除染の効果やリスクを丁寧に検証することなく、除染に莫大な予算をかけてきました。
除染作業員は待遇が悪く被ばくをしてしまいます。労働問題でもあるのです。
また国の多額の予算は今後削られていきます。
そして飯館村にも人を帰すというのです。巨大な汚染廃棄物焼却炉が立ち、仮置き場だらけです。
浪江町は50ミリシーベルトをようやく下回る地域まで人を帰します。
本当にそんなことができるのでしょうか。
無謀な帰還政策と除染の惨状は表裏一体です。
除染はきわめて限定的な場面にとどめ、効果についても過度な期待を持たないという現実的な考えも国、被災県にはありませんでした。
さらにとりあえず除染した廃棄物は最終処分場もすぐには決まらず、仮置き場においていて、いつまで置くのか、保管していてずっと置かれてしまうのではないかと懸念されてきたのです。
そうしてとうとう水害に襲われ、フレコンが流されてしまいました。除染廃棄物の現状のあらゆるデータを政府は自治体の住民に公表して、適切な処分のありかたを再度検証しなおすべきだと思います。
また関東東北では放射能汚染が深刻です。住民にリスクを説明し、健康診断や汚染対策、場合によっては保養や移住ということも検討しておかしくないと思います。
すべてはリスクが公に議論されていない、それを受ける住民が議論に参加できず、国が勝手におもんばかり、予算をつけ、上から押し付けていることが問題だと思います。
最後は大雨の影響で汚染された雨水が流れだした福島第一原発です。
大雨が降るたびに地下水や構内の汚水流入量は増え、あふれて港湾内外に漏れ出していきます。
アンダーコントロールではまったくないのです。
日本は自然が豊かで、台風、水害がたくさんある国です。
そのような国で放射能汚染が起きた場合、こういう事態は起こりうるのです。
さらに地震や火山もあります。
国や自治体や企業は自然災害を想定せず、あるいは知っていてもコストをケチって対策をせず、大惨事が起きてしまいます。
最低限もう少し頭を使えば、最善ではないが最悪ではない解決策が浮かぶはずであると思えてなりません。