細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

JESCO法が29日からの臨時国会で改正・汚染木くず容疑者逮捕、告発する会が会見・使用済み核燃料・指定廃棄物問題

久々に放射性廃棄物問題で大きな動きがあったので二点。

一つは福島県の中間貯蔵施設問題だ。これをPCB処理をしている特別会社の日本環境安全事業会社(JESCO)が管理し30年以内に県外搬出する国の計画だ。JESCOは国の法律で規定された企業で環境省の指揮命令下にある。この法律を改正して10万㏃を超えるような廃棄物をPCB会社に管理させるというのだ。これを使おうという計画は石原前環境大臣のころからちらほら聞こえ、私も6月ごろから数回ブログで書いていた。

汚染土が今すぐ焼却されるという噂もあったが、日付もどこから出た話も分からず、真偽がわからず困っていた。私は今すぐ焼却ではなく、福島の住民や国民全体の同意もなく法改正して県外搬出までするということに問題を感じている。
つまり東電や国の責任が明確ではないまま半官営の組織にアウトソースしていいのかと思った。また法律や技術的にも不可解な点がある。
とりあえずメール等で質問をしていた。
するとメール回答が来た数日後JESCOはこういう声明を公式に発表した。
メールと同じ文章だった。

放射性物質によって汚染された土壌等の処理に関するお問い合わせについて
政府で検討されている中間貯蔵事業福島県内で行われるものであり、現在、弊社が各事業所で行っているPCB廃棄物処理事業とは、完全に切り離して実施されるものです。
したがいまして、弊社が中間貯蔵事業に携わることになっても、PCB廃棄物処理事業を行っている各事業所では何ら関与することはありません。平成 26 年9月25 日

http://www.jesconet.co.jp/company/pdf/prelease140925.pdf

全国の事業所は放射能汚染廃棄物の処理にかかわらないということらしい。
問い合わせの増加に慌てたのだろう。

しかし毎日にはこうあった。なんと今月29日に始まる臨時国会に改正JESCO法案を提出し30年以内に県外搬出するということが報じられていた。

JESCOといっていることと、どう整合性があるのか確かめねばなるまい。

中間貯蔵施設:30年以内に県外最終処分、国責任で

毎日新聞 2014年09月26日 07時30分(最終更新 09月26日 08時31分)

 東京電力福島第1原発事故で出た汚染土などを最長30年保管する中間貯蔵施設に対し、政府の全面的な関与を定める改正法案の概要が、25日わかった。貯蔵から30年以内に福島県外で最終処分することなどを「国の責務」と明記し、施設を運営する特殊会社「日本環境安全事業」(JESCO)の全株式保有を政府に義務づける

 政府関与を法的に明確化し、「事実上の最終処分場になりかねない」との福島県民の不安払拭(ふっしょく)にも努める狙いだ。法案は「日本環境安全事業会社法」改正案。政府は29日召集の臨時国会に提出する。

 改正案は「福島の除染や復興に不可欠な中間貯蔵施設の整備・運営は、国が責任をもって行う」と強調。JESCOの名称を「中間貯蔵・環境安全事業」に変更した上で、国の責務として、(1)施設の整備と安全確保を行う(2)施設の周辺住民など関係者の理解・協力を得るため、必要な措置を講じる(3)貯蔵開始後30年以内に福島県外で最終処分を完了するため、必要な措置を講じる−−よう明記した。

 政府に保有を義務づける同社の発行済み株式を、現行の過半数から「総数」に変更。政府はすでに全ての株式を保有しているが、法的に義務づけることで、政府が施設運営で前面に立つ姿勢を打ち出す。このほか、政府による追加出資の規定も整備する。

 同社は国や福島県、同県内の市町村などの委託を受け、中間貯蔵施設の関連事業を行う。【水脇友輔】

http://mainichi.jp/select/news/20140926k0000m010136000c.html


JESCOからのメールにも法改正は環境省に聞いてくれということが私のメールに書いてあったので今日は環境省に聞いてみた。(環境省が委託している除染廃棄物のお問い合わせの連絡先である)
地元の理解をどうやって得るのかという質問には誠実に説明していくというお決まりの答えで、反対されたらどうするのかという質問にも地元の意見を伺いながらと同じような答えだった。しかし、県外処分をどのようにするのか、また本当にそんなことはできるのか、JESCO側の答えと整合するのかという質問には10日ほど待ってくれということだった。
そんなに待てないし
JESCO法の改正の正体は明らかになっていない。
ゆえにさらに三つの質問をさらにした。
�法改正の前に国民全体への説明が不十分ではないか。この法改正は事実上ほとんど誰も知らない。パブコメも説明会もない。全国の自治体への説明もない。国会提出前に福島と日本全体で考えるべきだ。JESCOの説明では各県の事業所は使わないというが政府は県外搬出といっている。整合性があるのか?
東京電力の汚染者としての責任が問われていないことが理解できない。環境省は「指定廃棄物は放射性廃棄物でない」という広告を出して批判にさらされた。東電の汚染者責任を議論すべきではないか。



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昨日は滋賀県高島市の汚染木くず不法投棄容疑者が逮捕され、告発する会の記者会見が行われたのでいってきた。
会見は滋賀教育会館。



告発する会の畑明郎代表と石田紀郎共同代表らは
この逮捕を受けて、改めて滋賀県も全容解明に向けて
汚染木くずを県がどのように処理したのかを情報公開するよう求め
さらに鹿児島、山梨や千葉などで同じ木くずが見つかっていることを受けて
全国的な汚染拡散事件としてその防止の運動を強めていきたい考えを示しました。

私は告発する会の内海氏に対し
汚染物質の管理が8000㏃という値が問題だと思うが
どう思うか尋ねました。内海氏も放射能汚染対処特措法の8000㏃基準は問題であり、来年の特措法見直しに向けこれを厳しくするよう求めていきたい考えを示しました。

その後、滋賀県庁に対し、情報公開を求める要望書の提出が行われました。

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さらにこのニュースも気になる。
関電社長、中間貯蔵「福井県外に」管内発電所内で検討(朝日新聞http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140927-00000010-asahi-ent
なんで勝手にこんなことが我々の同意もなしにいえるのでしょうか?
ここでも電力会社の責任というものが宙に浮いている気がします。
また日本学術会議は2012年の高レベル核廃棄物の処分についての報告の中で
1.広く市民や利害関係者の民主的な議論の過程の中で
2.政治から距離をおいた科学的な知見を科学者が提供し
3.単に科学的な安全性だけではなく未来への責任や環境といった倫理的な観点から
決めていく趣旨の提言を述べていました。

また地層処分は困難であり、乾式貯蔵を活用すること、
さらに」発電所の自治体だけが処分を請け負うのは不公平であるが集中的に管理ができ
逆に各地の電力消費地で分散して処分することは公平ではあるが、管理が難しくコストも大きくなると両論を併記しています。
しかし関電にはこのようにさまざまな見地から
私たちに問題提起する気持ちは欠けているように思われます。

また日本学術会議はこういっています。
「25日、原発から出る「核のごみ」の最終処分に関し、新たに生じる高レベル放射性廃棄物の対策があいまいなまま、原発を再稼働するのは「将来世代に対し無責任」などと指摘する二つの分科会の報告書を正式に公表」http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-232102-storytopic-1.html
これは脱原発の市民政策大綱の作成に尽力し急逝した舩橋晴敏法政大学教授の力によるところが大きく
つまり原子力をやめるかどうかということと使用済み核燃料処分の問題は密接にかかわっているということです。
この論点はよく指摘されるのですが、別に反原発団体でもない日本学術会議や保守の小泉元総理などもよく論じており誰もが気づくこと、考えればたどり着ける見解に政府や電力会社がたどりつけていないのです。


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また福島県以外の事故由来廃棄物の最終処分場の建設も宮城、栃木、千葉などの候補地の頑強な反対で難航しており
栃木県日光市の市長は各県につくることに異議を唱えています。
これは栃木県塩谷町が全町的な反対をしており宮城県加美町と連携しているからで、加美町も全町的反対です。
つまり8000ベクレル以上の指定廃棄物処分場も福島の中間貯蔵施設も政府は強硬に進めているが事実上は座礁しています。それを見ての日光市長の発言でしょう。

放射性物質を含む指定廃棄物の最終処分場候補地選定問題をめぐり、日光市の斎藤文夫市長は26日の定例記者会見で、指定廃棄物の各県処理を定めた放射性物質汚染対処特別措置法の基本方針について「変えることも視野に入れていくことが必要になってくるかもしれない」などと述べた。

 斎藤市長は塩谷町の反対同盟会の白紙撤回署名活動が日光市内をはじめどんどん広がり大きくなっていく中で、国や県が当初の予定通りに進められるのか」などとあらためて疑問を呈した。
 その上で「『(最終処分場が)自分のところに来なければいいな』という声なき声がみんなあるんだと思う。どういう解決方法があるのか。本当に難しく奥深い問題で並のことではできない」などと長期化の可能性を指摘。

http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/region/news/20140927/1730671

こういう動きが東北関東で本格化し、健康影響についてもそろそろふたをすることができなくなっているという状況について、被ばくを恐れる市民の関心も薄く、また福島などで進む汚染廃棄物焼却についてもよそ事と思っている方が多い。
それでは恐らくがれき広域処理の時のように自分のところに来てから大慌てしたり、反対に安全だという自己欺瞞を唱えるだけになってしまうでしょう。
それはさすがにまずいので、いろいろ動向を追ってブログに書いていますが正直ものすごく労力が要ります。もともと体力が多いほうではないので。


ともあれいよいよ、東京電力の責任や敷地内搬入なども想定しなければならないのではないか
と個人的には考えています。
しかし事故収束現場の第一は汚染水タンクが多すぎて線量が上昇しているため
福島第二原発なども考えなくてはいけないのではないか。

これはしかし非常に厄介な問題です。

つまりはやはり政府や日本国民の多くが
東京電力の責任を問うてこなかったということ
汚染管理と被災者の救済をセットにしていないこと
などが議論を混乱させるもとになっているのではないかと思います。

廃炉もそうです。
つまり日本のあるいは世界の大きな進路である脱原発を決めるにあたって
放射性廃棄物の問題、電力会社と国の責任の問題、総合的な経済社会を今までの発展ベースの金融経済を維持したまま環境汚染を無視するのか、反対に発展ベースは難しいとし、倫理的な責任を重んじ、環境汚染に対応する新たな社会を構築するのか。

私は世間で言われるグリーンエコノミーや自然エネルギーへの転換という
既存の循環型社会モデルや経済発展思想を緑色に塗り替えたものではなく
汚染管理の倫理的な責任をはっきりさせた社会を構築する以外に
選択肢はないと思います。
なぜなら循環型社会はごみを再びエネルギーに作り替えることを目指しますが
エネルギー自体の消費は311以降劇的に減り
ただ自然エネルギーを量的に増やすというより
社会構造を公正で未来に継承可能なものに変えなくてはならないと思うのです。