細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

原爆被爆データや記録を読めばわかる被曝についての3つの誤り

ICRPは原爆の寿命調査(LSS) から被曝リスクを割り出しています。
LSSは、今も継続されている原爆被爆調査です。はじめはアメリカの政府機関のABCC が開始し、現在日米合同の放射線影響研究所に引き継がれ調査は継続しています。
1950年までの原爆死亡データが反映されていないことや、1958年にガン統計が始まる以前のがんデータが反映されていないため、過小評価が疑われるわけですが、それでもがんリスクにしきい値がないことが認められています。
さらに内部被曝の影響に関しては、枕崎台風が過ぎたあとにアメリカ政府が土壌調査をして過小評価が疑われることやそもそも内部被曝の影響が生物学的に解明しきれていないことをいいことにほとんど適切に認められていません。
ゆえに日本政府や世界の原子力推進機関による被曝の過小評価が平気で行われてしまいます。
また被爆者と非被爆者を比較してリスク増加を確認せねばなりませんが、非被爆者が実は遠距離被爆者であり、適正な比較がされていないことも明らかです。
つまり原爆被爆データの問題が理解できればいかに原爆被爆から推定されている現在の被曝評価システムに問題があるか理解できるというものです。
私たちは歴史に学ぶべきなのです。





※間違いその1

×放射線には、これ以下なら安全といえる「しきい値」がある

放射線には、これ以下なら安全といえるしきい値」はない

LSS第14報

原爆被爆者の死亡率に関する研究 第14報 1950–2003年:

がんおよびがん以外の疾患の概要 (RR 4-11)
より

全 死亡のリスクは、放射線量と関連して有意に増加した。重要な点は、固形がんに関する付加的な放射線リスク(すなわち、10 4 人年/Gy 当た りの過剰がん症例数)は、線形の線量反応関係を示し、生涯を通して増加を続けていることで ある。全固形がんについて、線形モデルに基づ く男女平均の1 Gy 当たりの過剰相対危険度 は、30 歳で被爆した人が70 歳になった時点 で0.42(95%信頼区間[CI]:0.32, 0.53)で あった。そのリスクは、被爆時年齢が10 歳若 くなると約29%増加した(95% CI:17%, 41%)。全固形がんについて過剰相対危険度が 有意となる最小推定線量範囲は0–0.2 Gy であ り、定型的な線量閾値解析では閾値は認められなかった。すなわち、ゼロ線量が最良の閾値推 定値であった

http://www.rerf.or.jp/library/rr/rr1104.pdf


※間違いその2

×原爆による放射線による急性症状が出たひとは2キロ以内で、直接放射線を浴びた人に限られる。

○原爆投下地点から2キロ以上離れた場所での遠距離被爆者や原爆投下後に広島市内に入った人々が下痢などの急性症状がみられる。これらは、原爆による放射性降下物の内部被曝の影響が考えられる。国が認めない内部被曝などの影響を認めよという司法判断がたくさん下されている。




<投稿> 人間を苦しめ殺し続ける原爆

渡辺力人(原爆訴訟を支援する広島県民会議事務局長)

原爆症の認定を求める集団訴訟での、大阪、 広島、名古屋地裁の判決は、被爆者の実態を重 視し、はじめて原爆放射線内部被曝、低線量 被曝について言及した。核兵器にしがみつく 「加害者の科学」、それに従う日本の「植民地 科学」にやっと一矢を放った画期的な判決だと 思う。

政府は司法の判断に従わず控訴した。しかし これらの判決の意義は消し去ることはできな い。広島の控訴審で、政府の代理人は41人の 被爆者原告全員にたいし「原告らは、ほとんど 被曝していない」あるいは、「原爆放射線以外 に発症の原因がある疾病を発症している」「一 審判決は余りにも非常識」と述べて傍聴者をあ きれさせた。彼らは一度でも被爆者の実態を聞 いたこと、一度でも原爆資料館を尋ねたことが あるのだろうか。彼らは原爆被害についての膨 大な調査資料や著書、被爆者の証言に目をとお したことがあるのだろうか。

国の代理人は、つづけて「広島では爆心地か ら1.1km以遠では・・・放射線被曝による下痢 はもちろん脱毛も生ずることはない」「遠距 離・入市被爆者にみられた下痢や脱毛等の症状 は、放射線以外の原因に基づくもの」と述べて いる。下痢や脱毛は、伝染病やストレス、栄養 失調というのである。この陳述がいかに被曝実 態を無視した詭弁かは広島市民の大方は知って いる。怒りを覚えざるをえない。原爆碑に名を 記された20数万人の原爆死没者がこれを聞い たらどう思われるだろうか。

http://www.jicl.jp/now/date/map/34.html


日本反核法律家協会より

2キロ以上の遠距離には人体に悪影響のある放射線は 届かないし、病気を引き起こす確率は低いとされてい るのです。政府は、このような見解を「科学的な基 準」として採用しているのです。そして、この基準に よって、被爆者に同じ病気が発症しても、その被爆者 が2キロ以内の直接被爆でなければ、原爆症ではない としているのです。

5 しかしながら、2キロよりも遠い距離で被爆した人 (遠距離被爆者)や入市被爆者にも、下痢、脱毛、鼻や 歯茎からの出血、紫斑などの急性症状が表れたり、極 度の倦怠感などの晩発性症状が認められるのです。こ のことは、現実に被爆者を診察した医師の証言などか ら明らかなのです。ところが、政府は、現実に被爆者 に表れた症状について、感染症や栄養状態や個体差が 原因だとして、放射線に起因するとは認めないので す。事実を事実として認めないで、放射能の影響を 「受けるはずが無い」としているのです。遠距離被爆 者や入市被爆者は、嘘をついて「医療特別手当」を受 給しようとしているかのような主張をしているので す。

6 このような政府の態度に対して、被爆者は自らの病 気は原爆放射線に起因するとして、政府に原爆症と認 めるように裁判を提起しています。裁判所は、政府の 原爆症認定基準は正しくないとして政府の態度を繰り返し批判していますが、政府はその態度を改めようと しません。

http://www.hankaku-j.org/data/jalana/002.html


民医連より

調査の核心は、原爆投下から2週間以内に爆心地に入っ た人(入市被爆者)と、2以遠で被爆した人(遠距離被 爆者)で、278人のうち220人。国から「原爆放射能 の影響はない」とされ、原爆症認定を申請しても却下され ている人たちです。このなかで下痢・脱毛など放射能障害 の急性症状を発症した人は143人(65%)。悪性腫瘍 (がん)にかかった人は43人で、21人だった非被爆者の2 倍以上に達しました。がんだけではありません。変形性脊 椎症4・82倍、白内障2・5倍、肝臓機能障害2倍など、 8つの疾病でいずれも発症率が一般を大きく上回ります。 調査の結果は、衝撃的です。これまでも「遠距離・入市 被爆者」にがんなどの病気が多いことはよく知られ、被爆 者は「自分の病気は原爆のせいです」と訴えてきました。 しかし、一般との違いが数字で示されたのはこれが初めて です。 じつは、国が元にしているデータで、爆心地近くで被爆 した人と比較されているのは、一般の「非被爆者」ではな く、遠距離で被爆した人なのです。

http://www.min-iren.gr.jp/syuppan/genki/169/genki169-06.html

名古屋大学名誉教授沢田昭ニ

まず、被曝線量の結果はABCCの脱毛発症率から求 めたものと、脱毛、紫斑および下痢の3種の急性症状 からもとめたものがほとんど一致しています。爆心地 から1.2 km以遠で初期放射線被曝を上回り、約1.5 kmで1.5 シーベルトに達して距離とともに減少して5 kmで0.8シーベルトになっています。放射性降下物に よる下痢の発症はほとんど純粋に内部被曝ですから、 下痢と一致した脱毛と紫斑も内部被曝が主要な影響を もたらしたと推察されます。このように被曝実態であ る急性症状の発症率から放射性降下物の影響は内部被 曝が主要なものであることが明らかになりました。こ れを無視した放影研の研究と、これを基礎にしてきた 放射線防護委員会などの国際的放射線防護基準に内部 被曝の深刻さが反映されていないことが浮き彫りにな ります。

http://www.acsir.org/news/news.php?19



被団協

「審査の方針」の当否が争点となった6つの判決で、各地裁 は原・被告から出されたおびただしい科学文献や科学者の証言 を基に、その問題点を次のように指摘している。

1. 大阪地裁
DS86及びDS02はあくまでシミュレーションにすぎ ず、計算値と実測値の不一致があり、また原因確率は「1つの 考慮要素」として位置づけられるべきものであり、原因確率が 小さいからと行って直ちに経験則上高度の蓋然性が否定される ものではなく、特に遠距離被爆者や入市被爆者については、審 査の方針に定める被曝線量の算定には問題があり、残留放射能 や内部被爆の可能性も念頭において判断しなくてはならない。

2. 広島地裁
DS86,DS02は、比較的正確に放射線量を算定できる のは初期放射線(直爆放射線)の限度であり、これは「一応の 最低限度の参考値」とすべきであり、原因確率も様々な限界や 弱点があるので、「一応の単なる目安」としてあつかい、審査 の方針は「あくまで放射線の起因性の一つの傾向を示す、過去 の一時点における、一応の参考資料として評価するにとどめる べきである。

3. 名古屋地裁
原爆投下後に実施された測定によっては放射線降下物や誘導 放射能を十分に把握できず、放射線降下物や誘導放射能による 被爆の影響を考慮すべきことを推認させる調査結果や知見等に は十分な根拠がある。また疫学調査における各種の誤差要因の 存在も否定できないことから、原因確率を形式的に適用して被 爆者らの負傷及び疾病の放射線起因性の有無を判断したので は、誤った結果を招来する危険性がある。

4. 仙台地裁
残留放射線による影響を過小評価している疑いが否定でき ず、原因確率によって推定される寄与リスクの数値について は、推定値が低値であっても、有意なリスクが認められる限 り、当該疾病が放射線被曝によって生じた可能性を否定でき ないことから、原因確率を機械的に適用することによって、放 射線起因性を否定する結果を生じさせることは可能な限り避け なければならない。

5. 東京地裁
DS86による初期放射線推定はDS02による検証を経た 後も100メートル以遠において線量を過小評価している可能 性があり、誘導放射能及び放射性降下物について十分な実測値 が得られておらず、原因確率の算定上、低線量被爆者と位置づ けられている者のリスクが過小に評価されている可能性がある ことから、これらの形式的な適用のみによって放射線起因性を 否定してしまうのは相当ではない。

6. 熊本地裁
審査の方針に従って算定された当該申請者の被曝線量は、実 際の被爆線量よりも少ない可能性があること、原因確率が小さ い場合であっても本来の原因確率は高いことがあり得ること、 低線量領域における寄与リスクは実際より低い値となっている 可能性があることなどを念頭に置きながら、飽くまでも1つの 考慮要素として用いるにとどめるべきである。

http://www.ne.jp/asahi/hidankyo/nihon/seek/seek4-04-02.html

判決などによると、男性は三歳の時に長崎市 で被爆し、その日のうちに行方不明の家族を捜 すため爆心地から四百メートル地点へ入った。 国が二〇〇八年に定めた原爆症認定基準の「原 爆投下より百時間以内に爆心地から約二キロ以 内に入市した者」という要件に当てはまるが、 同年に前立腺がんや白内障などについて原爆症 認定申請をすると却下され、二年後に行った異 議申し立てでも認められなかった。

男性が一一年、却下の取り消しと慰謝料を求 めて提訴すると、有識者による国の認定審査会 が男性から提出されていた「入市証明書」を二 度とも見落としていたことが判明。翌年、国は 男性を認定した。

古田孝夫裁判長は、「行政には証拠資料を十 分に精査しなければならない職務上の法的義務 があり、過失は明らか」と国の責任を認めた。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014042402000119.html


※間違いその3

×放射線被曝の影響はガンに限られる。

放射線被曝の影響はガン以外の様々な慢性疾患がある。

判決によると、匿名の男性は爆心地から約 2.5キロで被爆し、中村さんは原爆投下後 に広島に入って被爆者の救護に携わった入市 被爆者です。

お2人は1997年と2002年に心筋梗 塞(こうそく)を発症し、2008年に認定 申請したのですが認められませんでした。

国は訴訟で「たばこなどが原因の可能性が ある」と主張しましたが、判決は「広島での 行動や症状などに照らすと、放射線が原因の 心筋梗塞と認められる」と判断したものです 。他の原因があってもそれと放射線があいま って病気を引き起こすということは、これま での判決でも何度も確認されています。

また、中村さんの場合は入市被曝なので、 「初期放射線被曝していないものの、健康 に影響を及ぼす程度の放射線被曝(特に内部 被曝)を受けていた可能性が高い」とはっき り認定されました。

しかも、裁判所は、心筋梗塞放射線被爆 との間には放射線量の程度にかかわらず、有 意な関連を認めることができることを指摘し たのです。

これはしきい値を否定した画期的な判断で す。

原告中村さんは、却下処分後、訴訟となり 解決が長引く間に脳梗塞を発症し、重い後遺 障害を残しました。中村さんは勝訴判決を受 け、言語障害が残る中で言葉をふりしぼり、

「本当に長かったです。60何年を経てよう やく終戦がきました。」

と涙ながらに話されたそうです。

原爆症と認定されると医療費が全額国の負 担となりますが、認定基準は厳しく、被爆者 健康手帳を持つ人のわずか30分の1しか認 められていません。

判決はこうした国の姿勢を改めるべきだと 指摘

http://lite.blogos.com/article/33776/


参考資料

被ばくと補償 (平凡社新書)

被ばくと補償 (平凡社新書)

増補 放射線被曝の歴史―アメリカ原爆開発から福島原発事故まで―

増補 放射線被曝の歴史―アメリカ原爆開発から福島原発事故まで―

被爆者はなぜ原爆症認定を求めるのか (岩波ブックレット)

被爆者はなぜ原爆症認定を求めるのか (岩波ブックレット)

裁かれた内部被曝―熊本原爆症認定訴訟の記録

裁かれた内部被曝―熊本原爆症認定訴訟の記録