細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

原発震災から見えてくる新たなふるさと移住の新たな形ー「二重の住民登録認めよ」福島大今井教授

「二重の住民登録認めよ 福島大教授・今井さん提唱 | 河北新報オンラインニュース」

大変ユニークな提案だと思います。
まだ今井さんの本を読んでいないからあくまで
記事からの印象ですが。

福島原発事故は国内難民を多数生み出し、さらに避難したひとや特に自主避難者への理解や支援は原発事故子ども被災者支援法がまだまだ完全実施に程遠く、手薄です。

避難者がふるさとを失わないまま放射能がない場所に移動できる手段になるかもしれません。

思えばカルチュラルスタディーズなどで、難民やふるさとを奪われたひと、国がその存在を軽視する在留外国人にもこういう議論が適用できるのではないか。
野宿生活者にはどうか。
いろいろ広がります。

悪い意味で居場所に縛られずじぶんの中にふるさとをもてる。


「『村』とは『人』であり、特定の『土地』を指す言葉ではなかった。そうであるなら、人の集合体である自治体も捉え直すことができるはずだ」
この言葉、今の日本や世界の、経済や戦争や環境汚染で、地域や家族が崩壊した現場でにわかに凍みてくるように思います。

福島大教授の今井照さん(60)が著した「自

治体再建 原発避難と『移動する村』」(ちくま新書)が学界で評判になっている。「『帰還』でも『移住』でもない第3の道が、きっとある」。

東日本大震災、福島第1原発事故から3年余り。

フクシマと向き合い続けた行政学者の訴えに共感が広がっている。

復興庁が福島県飯舘村からの避難住民を対象に実施した昨年11月の意向調査では「戻りたい」21.3%、「戻らない」30.8%、「判断がつかない」36.1%だった。

今井さんのまなざしは「36.1%」の人々に注がれる。悩みに悩み、それでも答えを出せない人たちに、学問は何ができるのか。その答えが「二重の住民登録」を認めるという第3の道だった。

住所は一つ」という常識を「フィクション」と断じ、「避難先でも避難元でも、まちづくりに参加する権利を避難住民に与えよう」「行政は、そのための法整備を」と論じる。
発想のヒントは、隣の研究室にあった。集落の成り立ちに詳しい同僚の准教授に教えを請うた。

江戸時代、干ばつや疫病で村が危機に陥ると、村民は集団で新天地に移住したという。こうした近世の「移動する村」と原発避難者の逆境を重ね合わせたとき、第3の道が見えた。
「『村』とは『人』であり、特定の『土地』を指す言葉ではなかった。そうであるなら、人の集合体である自治体も捉え直すことができるはずだ」

この3年、現地で聞き取り調査を続けてきた。

浮かび上がったのは、国からの情報がない中、福島第1原発周辺の町村が自ら決断し、住民を避難させた事実だった。

「あの時、町村が行動を起こさなければ、もっとひどいことになっていた」と今井さん。「住民の命を必死で守った町や村を、その土地に帰れないという理由だけでなくしてはならない」

「二重の住民登録」を認めることに国や行政学界の権威は難色を示す。だが、日本学術会議は昨年6月、制度設計の検討を提言。今井さんの主張が新たな学説として認
められた瞬間だった。気鋭の研究者らも自治体再建研究会を結成し、「二重の住民登録」の実現を模索し始めている。

原発事故に遭った町村の未来を決定できるの
は、あの日、あの場所にいた人たちでなければならない」と今井さんは言う。

http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201404/20140415_61010.html

今井さんはすでに二年前に同じことを福島民報に答えています。移住や放射能汚染に関わる対応のおかしさは、私たちの居住と行政の仕組みがうまくいっていないことのあかしでもあるようにおもえます。
行政学から見るならこういう視点がある。
これはすごい学問の使い方だな。正しいなと感じました。
分断は私たちの思考枠組みの頑なさと既得権益や今までの常識の頑なさから生まれているのかもしれません。
放射能リスクについてもこの視点が導入されれば新たな被災者、避難者への支援のあり方があるのではないかと思えました。

−戻れる地域と戻れない地域に分断されてし
まう市町村も少なくない。

「戻った人へのケアが大切なのは言うまでも
ないが、役場機能が元の場所に戻った場合、戻らない人の避難先の生活を支援する体制を整える必要がある。その場合は、避難先の自治体といかに協力できるかがポイントだ。避難者のケアを地元と避難先の行政とで一緒に考えていかなければならないだろう。住民にとって重い問題なので、市町村は国と住民との間に入り、しっかりとコミュニケーションを取る必要がある。県が調整し、国が制度や財政面で支援していくことが大切になる」

−避難生活が長期化する中、今後、どのようなが問題が予想されるか。

「住民税を支払っていない避難者と、住民税を払っている住民との間にあつれきが生じる可能性がある。住民票を移す選択を求められるケースが起きる。多くの避難者は、実態は避難先に帰属し、気持ちは避難元に帰属している。
二者択一の問題ではないはずだが、今の日本の制度はどちらか一つを選択するよう求めてくる。避難者の権利を守るしっかりとした仕組みを構築しないと、時間がたつにつれて戻らないという人が増え、避難区域が空洞化してしまうことにもなりかねない。住所が二つあってもいいという考え方もあるのではないか」

http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2012/03/post_3365.html