細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

【訂正版】滋賀県汚染チップ問題について二人の専門家の意見を紹介/今日汚染チップ問題で新たな報道

滋賀県嘉田知事の「(汚染チップ)トラックに積んで東電に持っていきませんか。」発言の経緯を考えたい - 細々と彫りつける
先日の記事で書いた問題。汚染廃棄物拡散問題として、ガレキ広域処理以来の大きな問題だと思いましたので記事を書いた後、専門家の先生方に拙稿を見ていただき助言を頂くことにしました。

まず滋賀県にお住まいで、土壌汚染問題や環境政策がご専門の元大阪市立大学大学院教授の畑明郎先生です。(許可いただいています)

私は、不法投棄業者が行方不明であっても、滋賀県廃棄物処理法違反容疑で刑事告訴すべきだと思っています。しかし、滋賀県は罰則の弱い河川法違反で対応しようとしており、現地撤去と保管の行政代執行もやろうとしていません。東電にプレゼントしても違法行為で訴えられるだけであり、福島のゴルフ場裁判のように、「放射能汚染物は無主物である」と逃げられるだけです。したがって、嘉田知事の発言は、私には責任逃れのパフォーマンスにしか見えません。畑

私は次のように先生に質問しました。

コメントありがとうございます。
私も畑先生おっしゃるとおり、不法投棄企業に対して廃棄物処理法違反を問うべきと思います。
それを滋賀県高島市がなぜしないのか。何らかの裏事情があるのでしょうか?
また東電は、不法投棄企業に発注した元企業なので、何らかの社会的責任を問えないでしょうか。
畑先生は地元の専門家で、事情にお詳しいと思いますので、ご所見ご教示いただければ大変ありがたいです。
よろしくお願いします。

畑先生のお返事です。

滋賀県は、栗東市のRD産廃不法投棄事件(詳しくは拙編著『廃棄物列島・日本』参照)でも廃棄物処理法違反の敬次告訴をしませんでした。震災がれき広域処理でも国の下請けをするのみで、反対しませんでした。それで今回の事件でも対応が悪いので、嘉田知事は信用できません。いきなり東電の責任を問うのは、福島のゴルフ場裁判の無主物発言もあり、簡単ではないので、まず不法投棄業者を刑事告発すべきだと思うのです。 畑

畑先生は地元の専門家としてまた長年の廃棄物問題調査の中で、先般の震災瓦礫問題でも過去の栗東での不法投棄事件(http://blogs.yahoo.co.jp/hata_akio_bag/2408377.html)でも滋賀県の対応は良くない、今回も同じ感じがするとおっしゃりたいのではないかと感じました。私も震災瓦礫の時の嘉田知事の対応は不明瞭でしたので、首をかしげていました。

畑先生がおっしゃるように東電が汚染責任を認めることは確かに現実的には非常に困難なように思われます。
畑先生はまず第一に滋賀県は不法投棄業者を告訴すべきだとおっしゃっています。
畑先生の言葉は一見激しく見えますが、責任の明確化は大切だという視点で現実的に一歩ずつ進めていくという意味で大変理にかなったものだと感じました。


廃棄物においては処理責任というのは大変大事なものです。
不法投棄というのは適切な処理でないうえに環境汚染まで引き起こすわけで大変深刻なことです。廃棄物処理法違反として問えるものです。

今回は事態の進展も遅く行政の対応も緩慢です。
高島市オスプレイの訓練飛行受入れもありました。
滋賀県にはここで汚染チップについて頑張って毅然とした対応をしていただきたいものです。何しろ嘉田知事は環境学者なのですから。

畑先生は滋賀報知新聞にもコメントを出されているようです。
http://blogs.yahoo.co.jp/hata_akio_bag/GALLERY/show_image.html?id=9604434&no=0

**

次に環境経済がご専門の明治学院大学教授の熊本一規先生にも拙稿を読んでいただき助言していただきました。

なかなかの力作だと思います。勉強になりました。
 一点だけ、廃棄物処理法では、原状回復の措置命令は原則として不法投棄を行なった処理業者に対して出されるのですが、2000年改正で、適正処理に見合った料金を支払わなかったなど一定の条件を満たす際には排出事業者に対しても出され得ることになりました。ですから、行政代執行の前に、排出事業者たる東京電力への措置命令の可能性も検討すべきではないかと思いました。
 
 熊本一規

不法投棄事業者に処理を発注した排出事業東京電力である福島県内の製材業者(東電から放射能に汚染されたチップを頼まれていたわけですが)に対しても責任を問える可能性はゼロとは言えないという熊本先生のご意見です。
(11月21日にこの記事を書き、翌日畑先生やツイッターのフォロワーさんから指摘がありました。不法投棄業者に処理を発注したのは東京電力ではありません。少しややこしいのですが、東京電力福島県内の製材会社に処理を依頼。そしてその製材会社がチップを今回不法投棄した会社に委託。その会社が滋賀県に不法投棄したという流れのようです。熊本先生にも十分に伝えきれていませんでした。申し訳ありません。訂正します。*1
早速調べてみました。

不法投棄など、処理基準に適合しない廃棄物の処理が行われた場合で、生活環境の保全上支障が生じ、または生じるおそれがある場合に、都道府県 知事等はその支障の除去、発生の防止のために必 要な措置を講じることを命じることができます。 措置命令の対象は、基本的には処理基準に適合しない廃棄物の処分を行った者、不法投棄の場合は 不法投棄の実施者が対象となります。」http://www.jwnet.or.jp/waste/knowledge/gyouseishobun.html

ここまでは不法投棄の事業者に対して、都道府県知事つまり嘉田知事は措置命令ができますよという話なんですね。先ほど畑先生がおっしゃったとおりです。
放射能汚染木材チップが琵琶湖畔に捨てられているのですから「生活環境の保全上支障が生じ、または生じるおそれがある場合」に当たりますし「不法投棄」なのですから、畑先生が言うように十分廃棄物処理法による処分を求め得るのではないかと感じました。

連絡がつかないとしたら、これは告訴も視野に入れなければならない。

そして次に熊本先生は
「2000年改正で、適正処理に見合った料金を支払わなかったなど一定の条件を満たす際には排出事業者に対しても出され得ることになりました。ですから、行政代執行の前に、排出事業者たる東京電力への措置命令の可能性も検討すべきではないか」といっています。

しかし、排出事業者責任の観点から、マニフェストを交付していない排出事業者、注意義務(産業廃棄物の発 生から最終処分に至るまでの一連の処理の工程に おける処理が適正に行われるために必要な措置を講ずること)を怠った排出事業者は、措置命令の 対象となる場合があります。具体的には、不適正処理の実施者が、不法投棄の原状回復などの支障の除去を行うために必要な資力がない場合で、排出事業者が適正な処理料金を負担していなかった場合など、排出事業者責任、排出事業者の注意義務に照らして、排出事業者に措置命令をとらせることが適当であると判断できるような場合があげられます。 委託した産業廃棄物が不適正処理された場合に、 措置命令により、排出事業者がその責任を問われ ることもあります。 」http://www.jwnet.or.jp/waste/knowledge/gyouseishobun.html

2000年以降ゴミを処理する廃棄物業者だけでなく、ごみを出した排出事業者の責任も問われるようになっています。
これは、不法投棄はもとより、ごみの排出自体を抑制していくという社会的な傾向に従ったものでしょう。
東京電力放射能を出したのですから、東京電力から汚染された木材の処理を頼まれた木工会社はもし不法投棄した業者に対して廃棄物の処理を発注するときにお金を十分支払っていなかったり、マニフェストなどの手続きにおかしな点があった場合、責任を問われることがありえるというわけですね。現行法でも。
そのあたりもしっかり滋賀県は調査を進めていくべきと思われます。

委託した産業廃棄物が不適正処理された場合に、措置命令により、排出事業者がその責任を問われることもあります。
したがって、排出事業者は、信頼できる処理業者に産業廃棄物の処理を委託するとともに、委託基準やマニフェストに係る義務を遵守することにより、不適正処理の未然防止に努める必要があります。

http://www.jwnet.or.jp/waste/knowledge/gyouseishobun.html


さて、畑先生、熊本先生にご意見をうかがっていると今日さらに滋賀汚染チップ問題は新たな展開を迎えました。



<汚染木材>放射性セシウム滋賀県の4倍検出 NPO測定
毎日新聞 11月20日(水)15時0分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131120-00000059-mai-soci

今回、測定したNPO法人「市民環境研究所」(京都市)代表の石田紀郎(のりお)・元京都大教授(環境毒性学)らメンバーは10月31日、放置現場4地点でチップを採取。含まれた水などを3日間自然乾燥させた後、測定装置で調査。1キロ当たり約1万2000ベクレル放射性セシウムを検出した。

 一方、滋賀県は9月6日に7地点でチップを採取。県衛生科学センターで測定し、1キロ当たり約3000ベクレル放射性セシウムを検出したと同17日、公表した。しかし、気象庁などによると、現場周辺は台風17号などの影響で、県がチップを採取した前々日までの4日間に約100ミリの雨が降っていた。このため、県によると、チップは含水率60〜70%の状態だったという。

 木材チップを巡っては、滋賀県が9月以降、放置現場周辺の河川水や近くの川に生息する魚を調べているが、いずれも放射性セシウムは検出されていない。【千葉紀和】

 ◇「雨後の県測定、不適切」

 汚染濃度測定について、環境省廃棄物対策課は「雨後など極端な状態での測定は適切ではない」と指摘。汚染濃度の測定法マニュアルを策定した山本貴士・国立環境研究所主任研究員も「含水率70%は試料の取り方としてあり得ない」と話す。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131120-00000059-mai-soci

なんと滋賀県の測定方法に問題があり、京都の市民環境研究所の石田紀郎先生らが乾燥させた正規のやり方で測定すると1万2千㏃もあったというではありませんか。

放射能測定に詳しい塚田祥文・福島大特命教授(環境放射生態学)は「水分を大量に含むと1キロ当たりの値が下がるため含水率が変わりやすいチップなどは風乾(自然乾燥)後に測るのが一般的。被災地のがれきなどはそのまま測ることもあるが、行政が影響を正しく住民に伝えることが目的なら、常識的な測定で濃度を公表すべきだ」との考えだ。

 放射性物質汚染対処特別措置法は、被災地から離れた場所に放置された汚染物質を想定しておらず、木材チップの放射性セシウムの汚染濃度が8000ベクレルを超えたことが確認されれば、今後、国との協議も必要になる。測定したNPO法人の石田紀郎代表は「住民の不安を解消するには正確な再測定を直ちに行うべきだ」と指摘している。【千葉紀和】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131120-00000059-mai-soci

8000ベクレルを超えると、私が最初の記事で指摘したように放射能汚染対処特措法による処理になる可能性もあります。これは国がお金を立て替え、後で東電に請求するものと思われます。処理に国が介入するのかどうか。国はきちんと役割を果たせるのかも焦点になるでしょう。
石田先生も指摘するようにまず正しい測定をしていなかったことが問題です。次に今回の場合、不法投棄業者の責任はまず大です。次に不法投棄事業者に頼んだ東電福島県内の製材会社(東電から放射能に汚染されたチップを頼まれていたわけですが)に瑕疵はなかったのか、そして原状回復に誰が費用を負担するのか。
滋賀県は適切に住民の声を受けて、原状回復をするうえで役割を果たせるのか。
国が介入するのかどうか。
ここはしっかり注視して適切な措置を求めるべきと思われます。
しかしこの事件、次々に疑問がわいてきます。
原発事故における国と電力の丸投げ体質とそれに従う地方行政の
構図が浮かんできます。

*1:「誰が、何時、何故、何処から持ち込んだのか、県内ではなかなか分からない状況でしたが、東京発の雑誌(「FRI DAY 10/18号」「SAPIO 11月号」)に結構詳しく掲載されていましたので、大凡のことが分かりました。皮肉なことに、情報は東京発が速い?これによると、出所は福島の製材業者から持ち出された物で、東京電力が処理支払いを了承したものとなっています。製材業者はP社に処理を依頼。P社の代表が全国にばらまいたという流れになりますが、公的機関から正式発表されていませんので、真実はまだ分かっていません」放射能除染対策を急ごう~3000ベクレル/kgをどう考えるか~ - 滋賀県議会議員 井阪尚司オフィシャルサイト