細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

滋賀県嘉田知事の「(汚染チップ)トラックに積んで東電に持っていきませんか。」発言の経緯を考えたい

これ案外単純な問題ではありません。

嘉田由紀子知事は13日、県庁で年内に撤去するよう求めた福井正明高島市長に対し、「トラックに積んで東電に持っていきませんか。クリスマスプレゼントです」と述べた。

 木材チップは今年3〜4月、県管理の国有地に幅3.5メートル、長さ約570メートルにわたって無断で放置された。関係者への聴取で、東京電力福島第1原発事故で汚染され、福島県から運ばれてきたとみられることが判明。県は現場でコンクリート遮蔽(しゃへい)する方針を示したが、福井市長は撤去を求め、反発している。
嘉田知事はこの日、涙を流して対応の遅れなどを謝罪した上で、まだ受け入れ先が見つかっていないことを説明。「持って行き場がない。環境問題の原則は排出者責任で、セシウムを出したのは東電だ」として、東電前に運ぶことを持ちかけた。福井市長は「もっと冷静になってほしい」といさめた。【加藤明子
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131113-00000111-mai-soci

混迷を極める滋賀県高島市琵琶湖畔への汚染チップ不法投棄。

「10tトラックが来たのは、春頃かな。てっきり木材チップで、デコボコ道路を鳴らしているのかと思っていた。近所を散歩している人が県に通報したらしい。」(近隣住民)
滋賀県が調べたところ、投棄作業をしたのは、東京の「ホームサーバー企画」という会社だった。同社社長で元郵政省(現総務省)キャリア官僚の田中良拓氏が、3月15日に河川敷入口の門の扉の鍵を借り受けていることが確認された。
この事態を受けて、県では投棄した運送業者に連日電話したが、不通。仕事を委託したホームサーバー企画の田中社長の電話も不通で、書類で送付した原状回復措置も「受取人不在」だった。
県によると、木材チップは福島県本宮市のHという製材業者からでたものだった。原発周辺の樹木は、表皮に大量の放射性物質が付着している。この業者は、表 皮を剥ぎ、線量を下げる作業を東電から受注していた。本来なら、放射性物質が付着した木材は国の許可した最終処分業者によって処分されるはずだが、どうい うわけか琵琶湖畔に放置されていた。
タマちゃんの暇つぶし ★滋賀県鴨川河川敷にセシウム木材を不法投棄した元郵政省官僚!

なんと東電から除染を受注した元郵政官僚の「ホームサーバー企画」社長が琵琶湖畔に勝手に捨てたのですね。

次に怒ったのは捨てられた琵琶湖のある滋賀県民と高島市

線量については「自然放射線による空間線量の変動幅は通常毎時0〜0・2マイクロシーベルト程度とされており、異常値ではないと判断した」と主張。その上で「琵琶湖の沿岸に無断で放置されるという事態を十分想像できなかった」と釈明した。撤去に向けては「速やかに行為者や排出元などに対して厳しく対応を求める方策を固める」としたものの具体的な工程は示されなかった。

 これに対して福井市長は「市内の平常時の放射線量を見れば、毎時0・14マイクロシーベルトという数値が異常値でないという判断は理解できない。(汚染された木材チップが放置されるという)事態が想像できなかったというのは極めて無責任」と強調。十分な回答が得られなかったとして、あらためて文書で対応策を示すよう求めた。

(安永陽祐)

住民団体が知事に撤去申し入れ

 木材チップ放置現場近くの同市安曇川町下小川の住民グループが二十五日、県庁で嘉田由紀子知事に経緯の調査や見過ごした職員の処分などを求める書面を提出した。

 県庁であった、びわ湖セミナー終了後に地元住民の梅村真紀さんらが提出。四月に放置が発覚しながら十分な線量調査をしなかったなどと書面で批判した。梅村さんはセミナーで意見も述べ「(約百メートル離れた)対岸の別荘でも空間線量は高い。チップにはシートがかぶせられているだけで適切に対処されているとはいえない。即刻コンテナ収容を」などと訴えた。
http://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20131026/CK2013102602000014.html

で、ふたたび困ったのは県です。
県は、東電から汚染物を受注し琵琶湖に廃棄した社長と連絡がとれていないといいます。
どういうことでしょうか。
そして、あまりに手詰まりになってしまい高島市長にいさめられるほど憤慨した嘉田知事

嘉田知事はこの日、涙を流して対応の遅れなどを謝罪した上で、まだ受け入れ先が見つかっていないことを説明。「持って行き場がない。環境問題の原則は排出者責任で、セシウムを出したのは東電だ」として、東電前に運ぶことを持ちかけた。福井市長は「もっと冷静になってほしい」といさめた。【加藤明子
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131113-00000111-mai-soci

確かに嘉田知事の涙と弁明は見苦しくみえます。
仮にも県知事なのですから、例えば人形峠ウラン残土問題で元鳥取県知事の片山氏がしたように毅然として対応してほしいとは私も思います。
しかしここでちょっと立ち止まって考えてほしいのです。
悪いのは誰ですかと。

(6)鳥取県と旧東郷町の行政の役割は、前半から中盤までの住民要求弾圧と後半の自治会訴訟支援で功罪半ばだが、西尾邑次前知事のウラン残土行政を180度転換した片山善博知事の功績はきわめて大きく、湯梨浜町ともどもの物心両面からの訴訟支援と麻畑保管案の阻止が最後の決定的な決め手となった。とにかく、知事が先頭に立って住民訴訟を物心両面から支援するのは、全国的にもまったく例がない前代未聞の出来事
http://uranzando.jpn.org/uranzando/shimin/004.htm

嘉田知事は確かに無力ですが実は法令上原則上は間違ったことを言っていません。
むしろ正論です。行政手腕としては高島市長がいさめるくらいうまくはないかもしれない。
しかし一理はある。なぜか。

原子力事業者の責務)
第五条  関係原子力事業者は、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関し、誠意をもって必要な措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策に協力しなければならない。
2  関係原子力事業者以外の原子力事業者は、国又は地方公共団体が実施する事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策に協力するよう努めなければならない。

平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法
(平成二十三年八月三十日法律第百十号)

この場合の関係原子力事業者は東京電力です。東京電力は、汚染物質を地方自治体が処理するときに、必ず協力しなければなりません。これは義務です。
ただ今回は、東京電力除染を発注した企業が不法投棄したのです。
廃棄物はまず不法投棄した事業者に責任があります。

廃棄物処理法では、「事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。(第3条)」と規定し、これにより、排出事業者の処理責任が明確化されています。

また、「事業者はその事業活動に伴って生じた廃棄物に再生利用等を行うことによりその減量に努める」、「事業者は、廃棄物の減量その他その適正な処理の確保等に関し地方公共団体の施策に協力しなければならない」ことが規定されています。
http://www.jwnet.or.jp/waste/knowledge/sekinin.html

ということは、やはり不法投棄した企業は明瞭に廃掃法違反なのです。
不法投棄した企業が責任を取らないので、滋賀県は行政代執行を検討しました。
しかし撤去するにも持っていき場所がありません。
そして不法投棄した社長はどこかに消えてしまいました。この社長をまず県は告訴すべきと思います。

次に、むろん東京電力にも汚染物質を排出した責任があります。
そのことを知事が言っているのです。そのこと自体は変ではありません。
実際に持っていってやればいいと思います。何しろ放射能汚染対処特措法にかなった適法の行為ですから。

おそらくまだ東電はこう思っているのです。

 ――原発から飛び散った放射性物質東電の所有物ではない。したがって東電除染に責任をもたない。
 答弁書東電放射性物質を「もともと無主物であったと考えるのが実態に即している」としている。
 無主物とは、ただよう霧や、海で泳ぐ魚のように、だれのものでもない、という意味だ。つまり、東電としては、飛び散った放射性物質を所有しているとは考えていない。したがって検出された放射性物質は責任者がいない、と主張する。
 さらに答弁書は続ける。
 「所有権を観念し得るとしても、既にその放射性物質はゴルフ場の土地に附合(ふごう)しているはずである。つまり、債務者(東電)が放射性物質を所有しているわけではない」
 飛び散ってしまった放射性物質は、もう他人の土地にくっついたのだから、自分たちのものではない。そんな主張だ。
http://astand.asahi.com/webshinsho/asahi/asahishimbun/product/2012021700007.html

そして

東京電力除染事業の大半の項目について費用の支払いに応じない考えを2月時点で国に明確に伝えていたことが、朝日新聞環境省への情報公開請求で得た文書でわかった。国はこれを公表せず、支払い拒否を黙認している。

 国が除染費用を立て替えた後、東電に請求するのが「放射性物質汚染対処特別措置法」の規定だ。環境省は現在までに計404億円を請求したが、東電が支払ったのは67億円。国や東電は「内容の確認に時間がかかっている」とし、手続き上の問題と説明してきた。
http://www.asahi.com/articles/TKY201310260420.html

私は除染が万能と思っていませんが明らかにこれは東電は特措法違反です。

しかも東電

 福島第一原発事故の損害賠償や除染に充てるために、国が東京電力に融通している公的資金について、政府は5兆円の上限額を引き上げる方向で検討に入った。今後かかる除染費用を賄いきれない見通しになったため。3兆円程度の引き上げを軸に調整している。
http://www.asahi.com/articles/TKY201311090232.html

いま国民の税金で、8兆円も立て替えているのです。東電が払うべきものを。
そして被災者は救われましたか?避難はできましたか?汚染水は止まりましたか?
8兆円といえば年間の国家予算の10%程度です。2年半でこれです。
一般市民は復興増税され消費税を上げられ、その一部は事故を起こしたはずの東電にいっています。国がそれをおおっぴらにやっているのです。

国連人権理事会グローバ報告。

(e) Ensure that TEPCO and other third parties are held accountable for the nuclear accident and that their liability to pay compensation or reconstruction efforts is not shifted to taxpayers.
 原発災害による損害について、東京電力等が責任をとることを確保し、かつその賠償・復興に関わる法的責任のつけを納税者が支払うことかないようにすること
81. In relation to compensation and relief, the Special Rapporteur urges the Government to implement the following recommendations:
  補償や救済措置について、特別報告者は政府に対し以下の勧告を実施するよう求める
(a) Formulate, with the participation of the affected communities, the implementing framework under the Victims Protection Law;
「子ども被災者支援法」の基本計画を、影響を受けた住民の参加を確保して策定すること
(b) Include cost of reconstruction and restoration of lives within the relief package;
復興と人々の生活再建のためのコストを支援のパッケージに含めること
(c) Provide free health check-ups and treatment that may be required for health effects from the nuclear accident and radiation exposure;
原発事故と被曝の影響により生じた可能性のある健康影響について、無料の健康診断と治療を提供すること
(d) Ensure that compensation claims by affected persons against TEPCO are settled without further delay;
さらなる遅延なく、東京電力に対する損害賠償請求が解決するようにすること
82. The Special Rapporteur urges the Government to ensure effective community participation, especially participation of vulnerable groups, in all aspects of the decision-making processes related to nuclear energy policy and the nuclear regulatory framework, including decisions regarding nuclear power plant operations, evacuation zones, radiation limits, health monitoring and compensation amounts.

国連特別報告者アナンド・グローバー氏の国連人権理事会への報告書の暫定版が公開されました: 「避難の権利」ブログ

ただし
滋賀県知事と高島市長には、琵琶湖の水源を放射能汚染させない義務があります。
県と市は協力して、不法投棄した企業に撤去を求める、場合によっては企業への廃掃法違反を訴えるとともに
東京電力の汚染者としての責任を放射能汚染対処特措法に従って追及してください。

早急に撤去しないと琵琶湖がいくらか汚染されてしまいます。

それは関西全体の市民が望んでいません。
高島市長、滋賀県知事の英断を求めます。
そして京都府知事や大阪府知事は一体何をしているのですか?
一緒に東電と不法投棄企業が水源を汚染させないように声を上げてください。