細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

木の中の流れる水の音

その嵐のとき
嵐のせいで
僕は自分を愛することができないでいたのだと思っている
しかし
それは
思い違いであって
嵐のせいではないし
問題は僕が自分を愛せないでいることではなかった

かもしれない

僕が僕を愛そうが愛すまいが
問題ではない
そういうといいすぎかもしれないが
自分を愛するということにもんだいのちゅうしんはないのだった

僕が自分を見ているときも見ていないときも
どこかに僕をここにつなぎとめる
そういうものがあるのだった

ふと去来する時間すらある

夜だった 騒音であった 髪を短く切った
木の根の向こうにはいくつかの水が走っていた
その橋の下には車と夜と光があって
飛ぶ鳥も白い煙も
ただそうして飛んだりゆれたりしているしかないのだった

その場所は僕に似つかわしい場所で
なぜかその橋の下には僕があらわれたなごりがあるような気がする
そこには青いシートがありとりあえずつくりつけた便所や
美しい遊歩道すらある
国土交通省という標識だってある

僕はいま政治めいたものと絡まりあっているが
政治めいたものの後ろにも尽きることのない夜が
存在のどうしようもない果てしなさが揺れ動いているようだ

気味の悪い
人を殺そうと生きようとかまわないと
そのような交換価値だけでできている
場所の

気味の悪い、吐き気を催すような
冷たさと喉のきつさ
そこにたおれこんで、泣いているのもダメなような
存在のどうしようもない場所から
僕が生まれたのだとしたら
ここが僕の場所だとして

僕が暗闇に消えていくしかないのだとしたら
僕の設計図が千切られていく
γ線β線の果てに
おかしな沸き上がりしかないのだとしても

僕はすでに壊れて古ぼけて
いびつな人類の藻屑であるとしても
多くの人が通る駅が安っぽい建材につつまれたものだとしても

多くのものが

暗闇に消えていくしかないとしたら
どうしようもないなら
その僕がいる時間を
木の流れる水の音で生きていたいし
あなたの中を流れる不思議さとともにありたい