朝日新聞と反原発・ガレキ反対、そして廃棄物の規制緩和・クリアランスレベル問題
朝日新聞大阪本社は宮古支局長やプロメテウス取材班が広域処理のおかしさを指摘しているのになぜ大阪市長を批判しないのか - 細々と彫りつける
前回このような記事を書いたが今日朝日の社会面を見たら
ちょっとびっくりしました。
「反原発や震災がれき焼却反対を呼びかけるデモや集会などにからみ市民が逮捕」「憲法で保障された表現の自由を侵害している」「石埼学教授「この程度の微罪で逮捕令状を出したり、勾留延長を認めたりする裁判所は、司法のチェック機能を果たしていない」」
その記事の下に
「震災がれき処理差し止め求める 大阪」
その横に
「残留放射線も影響 広島大」 「研究グループは、初期放射線の影響は3割以下で残留放射線や内部被曝などほかの要因が7割以上と結論」
で何日か前も住民監査請求で大阪市内版ですが
記事が出ておりました。
岩手県の朝日の記者さんもガレキ広域処理についてはどうも変だと思っておられるようです。
何かが動き始めているのかもしれません。
震災のがれきの広域処理。岩手県内で取材する記者はみな、地元でがれき処理の進捗や広域処理について「話題になっていない」と。最大の関心事は、土地の所有権の確定。これが進まないと集団移転もかさ上げも進まない。他県に運ばれ、施設の門前で抗議行動を受けるニュース映像に心を痛めています。
— 朝日新聞盛岡総局さん (@asahi_morioka) 1月 18, 2013
ガレキ広域処理ではマスメディアや広告会社と政府が官民一体でキャンペーンを繰り広げのちに朝日自身がプロメテウスで検証したということがあります。
復興予算は25年償還の増税で形作られています。
国民の税金なわけです。
またガレキ広域処理は既存の廃棄物処理法との整合性が著しくかけています。
そもそも放射性廃棄物は廃棄物法令と別枠なんです。
そして日本国家は原発事故を「想定外」としていて
環境に放射能がばら撒かれることは法制度的に準備されていなかった。
さらにひどいことに万一起きた場合でも国が電力会社の賠償すべきお金を補てんするようになっていたからです。
というわけで
東電はいまだに汚染を取り除くコストを国に丸投げしている状態です。
これを支えているのが放射能汚染対処特措法です。
そして国は移住政策を進めず出鱈目の除染をやっていて
そのお金はゼネコンに流れていることもばれています。
(さらに汚染水を(一応除去処理をして)垂れ流す可能性があるという報道も共同通信で
流れていました)
環境法関連には放射性物質の規定は欠けています。
そもそも環境省は、事故前には放射性物質を規制したことがありません。
素人なんです。
ガレキ広域処理や除染が、菅政権の時に環境省に任されたとき
私はぞっとしたものです。経産省よりは利権がきつくないと思ったんでしょう。
だけどそれは間違いで廃棄物事業者と
環境省はつながっているのでした。
全国に山のようにある廃棄物焼却炉への補助金を出しているのは
環境省です。放射能と廃棄物の利権が合体してしまいます。
しかも環境省はノウハウもなく他の有害物質の規制も
他の先進国より遅れています。放射能だけちゃんとできるなどということが
いったいありうるのか。
こういう事実がなかなか反原発の人にすら浸透していきません。
もともと放射性物質を扱った経験があるのは旧科学技術庁を持つ文科省と、旧科学技術庁が再編で解体されたときに権限を増やした経済産業省です。
一応厚労省にも労働安全関連で放射線の労災認定などの権限があります。
しかしこれまで原発のゴミ捨てには苦労してきました。
原発のゴミは使用済み燃料棒などから
極めて低いレベルの汚染されたものまでいろいろあります。
意外と量が多い。
この原発事故を機に廃炉ラッシュになることは間違いなく
それに向けて放射性物質を原子力事業者の負担を軽くして
安易に処理することができれば
電力会社はますます無責任になってしまいます。
環境省が除染と瓦礫で放射性物質の取り扱い権限を
得て放射性廃棄物規制緩和の露払いの役をしている可能性があります。
それをあざらしサラダさんもブログで指摘しています。
政府が広域処理を進めたい本当の理由【その2】 : あざらしサラダ (愛知県がれき受け入れ問題)
この規制緩和により、原発の廃炉で発生する廃棄物は殆ど通常の産業廃棄物として処理が可能となり、最終処分場で処理が必要なものは使用済み核燃料などごく一部の限られたものだけになるので、電力会社にしてみれば廃炉コストの大幅な削減に繋がる。
震災がれきの広域処理はあくまでリハーサルに過ぎない。
これから放射性廃棄物の本格的な広域処理が始まるだろう。
だから旧通産省にいて資源エネルギー庁にもいた新潟県泉田裕彦知事などは
瓦礫に反対しているのです。(和歌山県の仁坂知事も旧通産省でガレキに慎重です)
彼らは官僚の怖さを知っているからだろうと思います。
通産官僚が原子力村の恐ろしさをしらないはずがありません。
また瓦礫が一般廃棄物になるなんてことになれば
廃棄物処理体系は崩れ県民の生活の安心は守れなくなります。
だって廃棄物処理法2条には「放射性物質を除く」と書いてあります。
明らかにガレキや除染はこの規定と整合できません。
なぜ皆さん法律をよまないのでしょうか。
これは安全危険の程度問題より根本的な制度の崩壊と再編の問題なのです。
単なる数字でどうこう言っている人は早く目を覚ましてください。
とりあえず現行法規にのっとって市民の生活を守る。
それが普通の首長の考えることです。
そういう意味では大阪の市長、府知事は首長とは言えません。
再稼働を容認した時にもそうでしたが
大阪市長や大阪府知事がいる関西広域連合は和歌山・徳島を除いては
瓦礫受入れに積極的でした。
彼らが脱原発派のような顔をしているのはすごく不思議な話です。
さらに
原子力発電所の敷地の中より外のほうが規制が緩くなったら
おかしいと泉田知事は言い続けています。
なぜかというと今でも100ベクレル以下でも汚染物質をドラム缶に詰めている。
現行の原発の管理と矛盾することになる。
また、事故に関する東電の責任が問われなくなるし、
汚染廃棄物や廃材がとめどもなく
流通し大変なことになりかねないからでもあります。
それの先兵役を霞が関最弱官庁で公害規制の骨抜き役である環境省がやるという
危機感もあるのでしょう。
泉田知事が、新潟水俣病の例を出して総量規制の重要性や希釈拡散の危険性を訴えているのは旧環境庁へのけん制の意味もあるかもしれません。
また新潟県は柏崎刈羽原発があります。県に対して県内5市が
ガレキ引き受けを主張しています。泉田知事は霞が関の攻撃に
あっているのではないかとすら思います。
1キロ当たり100ベクレルはあたかも放射能汚染が大したことがないような言説も流布されました。これはクリアランスレベルといいます。
IAEAなどは推薦していますが大変議論のある制度です。
日本でも運用がうまくいっているとは言えません。これが燃やせるという基準を
大阪府や関西広域連合は勝手に作ってしまったのですが
関西圏住民の方は知っているのでしょうか。
そんな汚染物質の少ない、ひどい汚染を奇跡的に逃れた関西圏で
それを政治家がするのは単にモノを知らないか
何らかの意図があるからです。
誰もが知っているように放射能にしきい値なしなのです。
それはこちらの市川定夫氏の講演録をお読みください。
コストがかかるから原子炉廃材を規制緩和して一般廃棄物としたい
そういう原子力業界の思惑が見えてくるようです。
解体によって出てくる膨大な廃棄物の量を減らすためには、できるだけ多くの量を放射性廃棄物として取り扱わないという方策を取るしかない。そこで、自然の放射線の平均量の100分の1くらいなら大丈夫だろうということで、0.01 mSv以下なら放射性廃棄物として取り扱わないでいいようにしようというのが、政府や電力会社の方針なのです。それを可能とするために、今後検討し、法制化していこうとしているわけです。解体に伴って出てくる、かさ張って、しかも重くやっかいなものを、法令の緩和によって、処分可能にしようとしているわけです。
原発を進めてきた側は、何か不都合に出会うと、不都合を解消するために法令を緩和してきました。私は、一貫して原子力に「安全性」はありえないと言ってきました。原子力には「危険性の低減」しかないと言ってきたのです。しかし、政府や電力会社は原子力の危険性を最小限にする方向は選ばずに、むしろ法令を緩和することによって、「スソ切り」を可能にしようとしており、それは次の問題、「スソ切り」をされた廃棄物が再利用されて放射線被曝を伴う問題をひき起こします。当面の問題を解決するために次の問題をつくっていくという、今までの原子力開発で起きたのと同じことが行われることになるのです。
賛成であれ反対であれなんであれとても慎重な議論が必要なんです。
みなさんぜひ議論の前提を踏まえていただきたいと思います。
そうしないといけない。
本当に。
人類の未来がかかっている。