細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

松井知事、大阪府、市町村、瓦礫埋め立て処理をめぐるトライアングル

2012/01/18「大阪府域における東日本大震災の災害廃棄物処理に関する指針」説明会IWJ-OSAKA http://www.ustream.tv/recorded/19838481
1時間57分頃質疑応答に注目してほしい。以下に抜き書きする。

箕面市箕面市です。えとちょっと何点かご確認をさせていただきたいんですけども。あのまず先ほど最初のあの処理の説明会というパワーポイントのなかでもご説明があったんですけども関西広域連合会のあとですね松井知事のほうが記者会見のなかで災害廃棄物を受入れるための安全基準について国に申し入れるとコメントされておりました。先日の1月12日の定例記者会見の置かれては海上埋め立てはしない。陸上埋め立てについての安全基準を示すよう国にはなしをされているという内容でありましたけども。これについての回答はそれぞれ国からそれぞれ示されたのどうかかということが一点。それから室長の挨拶にもありましたけども指針についての府民の方への説明というんですかね。第6回の検討会議の最後におかれましても会長、座長ですか会長さんというんですか府民に十分説明をされたいという風に申されてたと思うんですけどもこのあたりご説明いただけたらありがたいと思います。

大阪府資源循環課佃課長補佐:そしたらあの資源循環課の佃です。一点目の先日あの松井知事のほうが安全基準について国に見解を示すということで。これにつきましては現在大阪府、まあ大阪市も含めてですけども国のほうに埋め立て特に海面の管理型処分場への埋め立て処分への、処理方法等について見解を示してほしいというような要望をあげておりましてまだそれについては現在のところ回答は来てません。あの事務レベルに聞いている折には今あの検討はされているという風には聞いております。もう一点定例記者会見のときの、海上埋め立てあの海面埋め立てですけどもしないということと、そのとき陸上埋め立ての話…

大阪府資源循環課磯田課長:資源循環課長の磯田でございます。すこし補足をさせていただいて説明させていただきますとえーまず現在国から回答がないというその状況は変わっておりませんが、基本的には海面の埋め立て処分場についてはそれぞれ個別の状況がちがうということもございまして個別に具体的な検討していくというような形で環境省はお考えになってるようでございます。それから知事のほうが申し上げておられる海面への投棄を否定しておられるというのは、海の中に直接焼却灰を放り込むつまりは知事もセシウムっていうのがですね非常に水に溶けやすいということはご存知でございますのでそれを焼却灰を直接海の中に投入するというような形っていうのはできないだろうという風にお考えだという風にご理解いただきたいと思います。

箕面市:え、あの、えっと報道、1月12日の読売新聞*1に載っている内容で行けば、あの記者の方が陸上に埋め立てても雨が降れば放射性物質が流れ出す懸念があるということに対しまして。知事のほうがセシウムが水に溶けるというのは国民の共通理解、国には早く安全基準を示すように話をしている。根拠ある安全基準を示してもらわないと埋め立て処理はやれるものではないとというふうにおっしゃってるというふうに載っているんですけども。陸上でもあの難しいと知事が…
大阪府磯田課長:あのそうではなくてですね陸上の埋め立てについてはすでにガイドラインで示されておりますので陸上部に埋め立て処分をするというについては8000ベクレル以下については埋め立て処分はできると。それ以上の部分については10万ベクレルまでは少し周りに粘土層を付けるとかいうような形で安全に処分ができると国のほうからは示されております。
箕面市:それくらいにさしてもらいます。そうしましたら知事のおっしゃっている部分というのは8000ベクレルを超える部分という理解でよろしいでしょうか…確かにあのこれまで、あの早い時期に環境省のほうが8000ベクレル以下であれば地上であれば埋立ができますよというのはそれはいろんなガイドライン等がしめされて理解しているところなんですけども、あらためてこの時期にこのようなことが発言されているのでその意味合いというものが私どもには理解しにくかった。
大阪府磯田課長:今おっしゃったようなご理解でよろしかったと思います。

このようなやりとりが昨日、大阪府循環型社会推進室の資源循環課課長と箕面市担当者であった。重要なやりとりというべきであろう。なぜか。以下は箕面市の担当者の話す「松井知事発言」のもとである1月11日の記者会見の知事と記者のやりとりだ。違いに注目してほしい。

「がれきの処分基準」について
・記者

 すいません。長くなって恐縮なんですが。あと、がれきなんですけれども、基準というのは大阪府として独自につくられたということですけども、実際問題、海面投棄の基準なりが独自が難しければ国なりが示さなければ大阪府内ではなかなか動きようがない事態になっているのかなと見えるんですが。
・知事

 海面投棄はしません。埋め立てにがれきの灰を使うことはしません。水につかる部分はやりません。
・記者

 となると、処分地というのが、選定というのが、最終処分場というのがかなり限られてきてしまうということになると思うんですが、それでもやっぱり雨が降れば流れ出すような事態というのは今の時点では夢洲にしても想定されるんじゃないかなと思うんですが、これについて、どうなんでしょうかね、その基準を国に対して求めていくのか、府の中でつくってしまうということですか。
・知事

 これは専門家の皆さんにしっかりもう一度意見を聞いてからだと思うんですけど、セシウムは水に溶けるということは国民の皆さんはみんなわかっている、そういうふうな理解をされているわけで、それはやっぱり、その基準がどうなのかというのは国がしっかり定めていくべきものやと思っています。まだ答えをいただいていませんので。国に対しては早急に安全基準というものを出してくれということで話をしていますけども、なかなか出てきていないというのが今の現実です。現状。
・記者

 その中ではなかなか難しいですか、具体的な基準は。
・知事

 それはやっぱり、そういう根拠ある数字で安全基準を示していただかないとやれるものではないですよね。
・記者

 わかりました。すみません。ありがとうございました。
http://www.pref.osaka.jp/koho/kaiken/20120111.html
平成23年(2012年)1月11日 知事記者会見内容

そして箕面市が言及した1月12日のよみうりの記事。

松井知事 海面投棄を否定
松井知事は11日の定例記者会見で、東日本大震災で発生したがれきなど廃棄物の受け入れについて、府内での埋め立て処理は国の安全基準が示されない限り難しいとの考えなどを示した。主な質疑応答は次の通り。

 ――廃棄物の海面投棄(臨海部での埋め立て)は、国の安全基準が出ないと動きようがないのか。

 「海面投棄はしない。水につかる部分の埋め立てに焼却灰を使うことはない」

 ――となると、処分場が限られる。陸上に埋め立てても雨が降れば放射性物質が流れ出す懸念がある。

 「セシウムが水に溶けるというのは国民の共通理解。国には早急に安全基準を示すよう話をしているが、まだ答えをいただいていない。根拠ある安全基準を示してもらわないと(埋め立て処理は)やれるものではない」

 ――原発の再稼働が困難な中、今夏の電力需給はいよいよ厳しくなる見通しだ。

 「電力需給がどうなるかを見ないとわからないが、関西電力でも定期検査に入る原発があると思うし、去年と同じ対応というわけにはいかないだろう。関電から、詳しく根拠のある(電力需給状況の)数字を出してもらうことが必要だ」

 ――条件によっては、原発再稼働を認めていくことも検討するか。

 「最終的には国や原発立地県の判断であり、大阪府知事が踏み込んでいくものではない。ただ、原発依存の体質は変えていかなければいけないと思っている」
(2012年1月12日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/osaka/news/20120112-OYT8T00081.htm

夢洲が「陸」という言葉に置き換わっている。そこにまず注意しよう。その上でここでの問題は磯田課長が言うように知事が海面への焼却灰の直接投棄は明瞭に否定しているという意味だけではなかった。知事は知ってか知らずか陸の大阪での埋め立てそのものの可否に触れることを記者から問われて、わかった上で陸地にも危険があると知って、あえて海か陸かを示さずにこたえているのか、それかその違いを踏まえずとにかく海面埋め立ては無理と言いたかったのか、それはわからないが結構核心の部分であるということだ。。

 
 夢洲は大阪市の湾岸部の人口埋立地http://www.city.osaka.lg.jp/port/page/0000003213.html

少し見にくいが夢洲にはまだ海水の部分と陸地の部分がある。(これは大阪府の資源循環課の方がいっていた)

さて、この課長と知事の発言の微妙なニュアンスの違いを今朝大阪府に問い合わせてみた。つまり知事は海であろうと陸であろうとセシウムは水溶性なので、危険だという認識をもっているのではないかと。すると資源循環課は「新聞は「陸」と書き換えている。元の記者会見を読んでください」といったので、大阪府ホームページで記者会見を読みながらさらに述べた。

私はこういうことをいってみた。やはり府の担当課と知事に違いがあるように思える。知事が言っていることがおかしいとも一概に言えない。こういうことがあると府庁内での連携は十分か、そもそも安全性について府の担当局がどう考えているか、そういうことを市町村が不安になる。市町村も悩んでいる。市町村の背後には住民があり箕面市高槻市の両者は府民や市民のこともかんがえながら発言しておりこの埋め立ての問題だけでなく放射線の性質についても担当部局の説明はかなり足りていない。市町村担当者はもっと技術的科学的にしっかりした話がほしいはず。

ちょっと先走りすぎた、
私の意見はともかく言葉をしっかり検証して置く。
まず。
元の記者会見を読んだが話の流れでは1.松井知事は海面の直接投棄は明瞭に否定している。2.記者はでは夢洲のような「陸」に雨が降れば処分場からセシウムが溶け出してしまうのではないかと述べている 3.それに対して松井知事は(夢洲が陸地か海面か両者かを知っているか知らないでいるか)セシウムが水に溶けるのは「共通理解」なのだから国がきちんと考え方を示さねばできないといっている。

むろん磯田課長がおっしゃるように環境省が焼却灰濃度が1キロ当たり8000ベクレルなら上に土をかけるなどして一般埋め立てが可能と言っているのは事実で、それはそれでまたこれも問題。(というのは電離則では1キロ当たり1万ベクレルに関しては一定厳密な管理を要求されるので電離則をわずかに下回る焼却灰濃度を環境省は設定して、一般埋め立てかとしているのはここはもっと議論されるべきだ)


しかしその問題は置いておくとしても、松井知事がどういう意味で海面投棄を否定してなお、水溶性だから国がきちんとしないとといったかここは重要な論点である。
課長や資源循環課はあたかも知事が雑駁な答え方をしただけで、陸上は既定方針通りできると述べたのだが、知事はどうお考えで、担当部局とどのような連携をしているのか。知事がもし万一陸上の埋め立てさえも否定的というニュアンスで記者会見に答えたのならば、私は知事の見識はそれなりに尊重すべきであると思う。私は電離則ぎりぎりの焼却灰を遮水シートや覆土をするとしても一般埋め立てすべきではないと思うからだ。きちんと長期管理できる場所に保管する必要がある。(大阪府の場合焼却灰は2000ベクレル/キログラムとしているが、それ以上のものが出た場合などの対策はどうなっているかわからない。2000ベクレル以下のものでも複数核種の汚染等を考えた場合、焼却に慎重であるべき*2なのは大阪でも被災地地元でも変わらない。管理も同様である。)
なぜなら、遮水シートの破れやすさなども検討すれば水漏れをしない仕様のほうがいいからだ。埋め立て処分場に色んな化学物質が埋まっているとして、放射性物質は化学的なエネルギーとは質の違う放射線をもっているからこれまでとはちがう処分が必要なのは明らかだからだ。
民間の処分場で放射能ではない汚染物質が近隣の河川に流れ込みそれを行政が黙認していたという事案も知られている。(高杉晋吾『産業廃棄物』岩波新書

ふつうコンクリートやしっかりした部材で遮蔽するということが推奨されるはずである。

少し話を戻すと、つまり松井知事が国の暫定基準に疑問を抱いて大阪では(大阪でなくても海洋、土壌汚染を考えれば)埋め立ては難しいと思っているのか、あるいはもっとざっぱくにただ、セシウムは水に溶けるからとにかく海には捨てないということは確認されねばならない。
大阪だけでなく全国の廃棄物の焼却灰や汚泥、除染土壌の最終処理を巡ってもどのような処理や処分が必要か、その放射性物質の性質に即したこれ以上に環境中に拡散、被ばくさせない処分法(焼却しないで遮蔽して埋めるなど)を環境省は検討しないと二次災害が広がる懸念を私は持っている。

そのような意味で昨日の大阪府の説明会での箕面市大阪府のやりとり、そして松井知事の以前の発言には重要な論点が詰まっている。

府民への説明や住民合意プロセス、また危険性に即した処分の検討という意味でも、大阪府は指針を出してよしとしているふうであるし民間業者の処理を検討しているというがそれも危なっかしいことだ。もっと詰めてそもそも広域処理とは何か、そして被災地の災害廃棄物とは何か、復興支援とは何か、そういう問いをただ役人が決めてしまうのではなく議会や住民の間でしっかり議論しないといけない。この問題はもし万一被害が出たときに因果関係の立証が、難しい。
アスベストでさえもその被害の後大変な戦いがあったのだから。

さらにいうなら、災害地での安全な処分を環境省がきっちりとしたスキームを作ることもなしに最大の支援をすることもなしに、セシウム以外の核種を閑却することなしに、ただいたずらに広域処理を進めてよいのか、それは災害地にとっても全国自治体にとってもよいことなのかどうか、復興の困難さ、緊急性を多角的に検討しなければならない。
早い復興のためには熟慮も必要であり、現地や全国住民と国や自治体がきちんと向き合って最適なやり方を志向しコンセンサスを作ることが、この場合もっとも重要なのではないだろうか。(追記:釜石市は自力での処理が可能であるとして北九州市への発注を取りやめた。自力で安全に処理可能なめどを立てるようまずは支援することが環境省の役目である)

災害廃棄物といえどもごくわずかでも放射性物質は入っている。これは従来の放射性廃棄物の枠組みには入らない。しかし放射性物質に汚染された懸念のある災害廃棄物及びその焼却灰といえる。さらに一般処理はされたこともない微妙な複雑な化学物質、素材などの組成を持った廃棄物だ。長期的な汚染を防ぐ処理や保管が必要といえる。可燃物は木質が多いと思うがただ、その実情に即した汚染を拡大しない処理の支援が国に求められている。

*1:http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/osaka/news/20120112-OYT8T00081.htm

*2:「不燃物を埋立処分する場合には、8,000Bq/kg 以下の災害廃棄物であれば、焼却灰 と同様に管理型最終処分場に埋め立てることができ、受入側に負担をかけること なく処分が可能です」「平均濃度が約240Bq/kg以下であれば、飛灰の濃度が8,000Bq/kgを超えることはなく、受入側に負担をかけることなく一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)での埋立処分」http://www.env.go.jp/jishin/attach/memo20111011_shori-qa.pdf等と環境省は述べるが廃棄物処分場の適正管理がふだんからできているか及び汚染地を増やさないという原則から考えればリスクが高い