細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

坂部恵『かたり-物語の文法』

かたり―物語の文法 (ちくま学芸文庫)

かたり―物語の文法 (ちくま学芸文庫)

読んでいる。難しい、解釈学的な物語論。だけど面白い。今のところ参照されている論者は折口信夫、ハンス・ゲオルグ・ガダマー、リクールらハイデガー系の解釈学的な哲学者、ベルクソン藤井貞和、ヴァインリヒ、構造主義に影響を与えた言語学者ローマン・ヤコブソン

坂部は<はなし>と<かたり>との対比から始める。はなしを現前的なもの、さしあたっての来し方行く末的な展望のはっきりした時間の中で「話される」とすれば、かたりは「むかし」と呼ばれる神話的持続的な記憶や過去にアクセスするものであると(つまり物語)
 むかし、と語りだすとき「昔男ありけり」「今は昔」のようにあたかも見てきた人のように共同的な体験を語ることができる。
 どちらが優れているかではなく、この二つは文法における「時制」の問題と交錯させて論じている。言葉がどのような時間を展開しながら、人びとの言語を編み上げていくかその仕組みを探っている。
 あとは4章、5章を残している。