細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

衆院選 

小沢一郎の選挙戦術が相当うまくいったのだろうと思う。自分が献金問題で、一旦潔白を主張して後で代表を退いたのも意外と痛手を少なくした。
もちろん献金問題もその是非があるのだが、この国の政治も権謀術数で政敵を陥れる点で、いずかたの国とも変わりない。あまり好ましくないことだが権力闘争で敗れかけたが、小沢はただでは転ばなかった。
候補者をうまく差配したこと。昔自民党がやっていた有権者や各団体へのあいさつ回りという「ドブ板」といわれたやり方を徹底して若い候補者に教えたこと。

小沢一郎本人は、営業スマイルが苦手なのだが、有権者から信頼されるためにはどうしたらいいかは知っている。これは僕個人は非常に重要なことだと思う。民主政治の基本は国民に声を届かせ、国民の答えを聞くことだ。これまでのファシズム等の歴史を考えれば危うさもあるが。

こういうのの良し悪しは確実にあると思う。ただ、逆にいえば自民党がかつてもっていたこういう技法を、自民党は失ってしまった。今頃あわてて選挙区へ帰っても手遅れだった。自民党は地元の有権者のことすら忘れてしまっていたのである。古賀選対委員長は、今からでは遅いというので、あわてて宮崎の有名知事を担ごうとしたが、失敗した。古賀氏自身は自民党が見限られているのは把握していたのではないかと思う。
選対が衆院選の前に辞職した政党(しかも与党)が勝てるはずがない。

ただ、別に小沢や民主党をそれほど信頼してはいない。小沢が仕掛けて成立させた「細川連立政権」と同じ轍を踏むかもしれないなとも思っている。細川護熙は、近衛文麿の子孫だったし、今の鳩山と似たどこか世間知らずな、理想主義者の匂いを感じる。そういう看板を立てて、小沢自身が政権の構想を練っているのかもしれない。国民福祉税を夜中に打ち出して、そのことが政権崩壊の引き金となったこともある。小沢の手法にはそういう危うさもある。

選挙では、耳障りのわるくない公約で凌げる。しかし問題は政権運営は政府や国家の運営でもあり、そこで財源や手続き、もっというと思想の問題が問われることになる。耳障りの悪くない話だけでは凌げないはずだ。この段階で政権交代というテーマから、民主党内の個々人の政治家や連立する国民新や社民、野党の自民、共産などの良心が問われるのではないかと思う。今の民主の公約では危うい。だから他の党がそれをきっちり批判・検証し、より良い政策の策定に繋げる必要があるのだ。


国民生活はかなり深刻な状況であり、国際的な位置も落ちる危険性がある。まずは安定的で、マシな生活が送れるように国の経済状態を上げる必要がある。それは事実上、少子高齢化と不況のあわせ技で機能不全になるだろう社会保障の再構築のためでもある。
生活レベルが下がり不満が増大すると、人心が荒廃する。右傾化しても生活はひどくなるだけ。日本が内外から良心のある国として信頼されるために、個々人の権利や公正を保障する国になることが大切だと思う。そのために与野党がきっちり議論をし、よりよい政策を作らない限り未来はない。高速道路の無料化や子供手当てはそのための最良の解決法からは程遠いと思う。その意味で連立する党や野党の良識が試されているのだ。

余談だが、選挙速報を見ているとき、自民候補と並べて民主の当確を次々出して、ちょっと異様な雰囲気だった。テレビが政権交代を印象付けようとしての演出のようだが、あれは気味が悪かった。オーウェルの一九八四年を読んでたので、自分が主人公のウィンストンになって、テレスクリーンを見ているような居心地の悪い気分になった。