細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

訃報

中島梓栗本薫)氏が泣くなられた。56才だという。うちの母親より若いな。
http://www.47news.jp/CN/200905/CN2009052701000400.html

僕は栗本薫での活躍にはあまり関心がなかった。他方、中島梓名義での「夢見る頃を過ぎても」や「コミュニケーション不全症候群」はよんでいた。あまり結論に納得しなかったものの、すごく力のある評論だった。しかし栗本薫の世界の方には今も行かずじまいである。なぜだろう。

90年代の批評でもすぐれたものだった気がする。自分は20代前半で対人恐怖症真っ只中だったから、なんとなく急に大人になれといわれた気がしてキツイ気もしたが。オタクの中から「オタクはどうなんだろう?」と懐疑したひとりだと思う。エヴァンゲリオンより先んじて。というかそのジャンルの元の地面のひとつのひとでもあったようだ。
時代の変化を実存領域にひきつけて、そこからさらにひとりひとりの人へ向けて突き放す、受け渡す力があったと思う。自分をえぐりだした手を社会に向けるような。

デヴューは群像の文芸評論部門からで、1977年。やはり相当折り目正しい。文学部門では村上春樹群像新人賞をとった時期とあまり変わらない。
その当時は小林秀雄だって、江藤淳だって、埴谷雄高だって生きていた。吉本隆明だって50台だったんでは。柄谷がポストモダンに身を乗り出してくる前夜である。今の東浩紀くらいの年だったろう。上野千鶴子は5つ上。

デヴューの時期は、ヤマトだってもう少し後に出てくるだろう頃だし、SFだって随分力を持っていただろう。
なぜか歌い手では谷山浩子とかああいった人が浮かぶ。

自分がまだ幼かった頃なんで、イマイチうまくイメージできないが…
例えば自分の好きなところではナンシー関は彼女の作品を読んでいただろうか。鶴見済なんかはどうだったのか。わからんがいろんなことが気になる。やはりある時代を支えた人だったように感じる。

安らかにお眠りください。


コミュニケーション不全症候群 (ちくま文庫)

コミュニケーション不全症候群 (ちくま文庫)

夢見る頃を過ぎても―中島梓の文芸時評 (ちくま文庫)

夢見る頃を過ぎても―中島梓の文芸時評 (ちくま文庫)