細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

サマヨイザクラを読んで

サマヨイザクラ裁判員制度の光と闇 下 (2) (アクションコミックス)

サマヨイザクラ裁判員制度の光と闇 下 (2) (アクションコミックス)

大変丁寧に予想されるであろう困難について絵解きでシュミレートされている。間違いや、偏りはあるのかもしれないが先行き不透明な未知の裁判員制度について、非常にわかりやすく、しかもマンガとしてドラマとしてすごく面白い。単純に勉強になった。弁護士会法務省のホームページではいまいちよくわからず(というのは国家試験に出ると思って調べただけ)ほっていたが、このマンガは読んでよかった。

ちょっとうまくまとめられないし、読んだばかりなので疲れているから簡単なメモ。

○現在の日本社会の暴力や排除や差別(いじめ、内部告発者、非虐待者、ホームレス)の話題を出来うる限り盛り込んでいる。
○一人の個人が特に集団から排除され挫折した若者の目線から書かれていること。
○評議の過程やひとりになってからの思考や対話プロセスが書かれている。そこで自分が排除された社会システムの光と影を裁判を通して、再認識すること。事件は社会の矛盾のある表現型と見ることも出来る。
守秘義務違反やマスコミによる裁判員の取材、感情的な議論がまかりとおる可能性、裁判官や司法のプロ達のロジックへの違和感などにも触れている。

もちろん司法のプロの「感情を殺して」判断するという言葉は、僕にはひっかかった。ただ、司法のプロではない市民が参加することのおそろしさや意義、司法のプロがこれまで行なってきたことの意義と欠点を郷田氏なりに考えて書いたように思う。結論や話の展開に疑問符をもつこともあった。が、未知の制度に一漫画家として、その予想図を描ききり、あくまでひとりひとりの人間達の思考や意見の戦いを通して、人間の現実を描こうとしたその力量が胸に迫ってきた。おススメの本です。

つまりはつまずきを通してしか我々は成長していけないのだ。始めから、ちゃんとできる人間はいない。そう思う。しかし裁判員制度のリスクもまた大きく、暗澹たる気持ちになったのも事実。