【詩作品】理由がない命と死がさわやかだ
生まれる前はどこにいたのか
知らないが
どこか知らないが
いまここにいるのはもっと不思議
意識という灯りがともると
私が青々と激しく目覚める
大きな絵を描いて
それは遠くから来たまなざし
あの世とはあっちにある世界か
水びたしの私は
生まれたばかりの弟が旅立っただろう
光あふれる窓を見ている
私も歳をとり、あの5歳の何倍も
歳をとり
親が年老いるのを心配してみるが
私の足元は透明の
頼りない階段を登り続け
ついに
生きることに慣れないとため息をつく
ずるい言葉や
強い言葉でごまかす私は
私であることが頼りない
頼りないから
愛という巨大な穴から
キラキラした風が吹くのを
眩しげにみている
あなたという悲しみが
不在を見送る
私はあなたをどうすることもできない
あなたは自由だ
あなたは私からも誰からも自由だ
あちらとこちらを超えて
私もあなたも戸惑う光になる
違いがないのに
別々の人生
誰だって理由もなく生きる
誰だって理由もなく死ぬ
そんなことを言い切っても
誰だって理由を探すんだ
探して
探す理由のないことを知り
笑って見つめ合い
駆け出す
遠くから
命の光が飛び交う
私たちにはどうすることもできない
屋上に強い風が吹いている
あんまりさびしくて
大切だ
涙がこの世界を彩る
理由がない
理由がないことに私の理由がある
生きてみて理由があるか
ないか
わかったふうな口をきくな
星になった人を見る
風とキラ星
理由がない
理由がない
【詩作品】生活を脱いだら人生の
雑踏で
たくさんの人と肩がぶつかり
それでも私は
ひとの形を保っている
ように
見えているのだろうか
生きていると
いうことは絶えず神経である
神経が神経の刺激に慣れず
毎回シビれている
こんなことでは
ひとを愛せるのか
愛するという言葉が
あまりに軽くないか
ふざけていても
胸に湧き上がってくる
強い気持ちが
空の雲を突き抜けている
あなたは大げさでしょう
そのまま生きれば
いいんだから
あなたが生活に関心がないのは
あなたがふざけているからでは
ないよ
あなたはあまりに真剣な神経だから
生活という複雑な糸を
ほどかずにはいられないのだから
生活を脱いで
私ははだかになったよ
はだかを抱きしめてくれないか
激しいせせらぎの音
腰が寒くて
温かい方に倒れこむ
どうしたらいいの
わからない
どうしたらいいの
生活を脱いだら人生が
あるよ
あなたもこの人も
はだかの人生?
そう
頭から食べてもお尻から食べても
ひとは
はだかの人生しか生きられない
原発避難者、被災者の怒りと悲しみの追及が生んだ今村復興大臣辞任劇、その真相を忘れるな!
今村復興大臣がクビになるのは、復興大臣自体が端役だからとか訳知り顔な解説が出るが違うのだ。
この間、原発避難者、現地被災者や支援者たちが避難者支援を打ち切るなと政府を突き上げ続けた結果、記者の鋭い質問となり、国会議員を動かし、復興庁や環境省はてんてこ舞いになった挙句の失言大臣辞任劇なんだ。
原発事故区域外避難者の支援は打ち切られたが、大臣は辞めさせた。
しかし大臣が辞めただけで済んで良いのか。
違うのだ。
原発避難者の支援を復旧、充実しなくては。原発事故で汚染された地域から避難したり放射線防護することの正当性が認められない、つまり汚染が人体や環境に害があり得るという事実が認められず、人権侵害がまかり通ること、これがおかしい。つまり、私たちが傷つき苦しんでいることを認めない体制を許さないことが一番大事だ。
政府と東電は汚染被害の事実を認めよ。
20ミリシーベルト基準を撤回せよ。
放射能汚染による健康や環境の影響を把握し対策するための健診と汚染管理測定体制を構築せよ。
被ばくから身を守る避難権利を保障せよ。
【詩作品】世界の終わりを見たくない
熱が出て苦しい
愛という文字を書く
書いてみて呆然とする
世界中は愛で出来ているかもしれない
なのに
私たちは任意のAやBにしか
愛を感じられない
それも忘れたり思い出したりして
任意のAやBを超えてしまう
若い時口づけをして
さみしさは埋まらなかった
もっと欲しいという感情しかなかった
口づけをすれば
するほど息は苦しく重くなった
ホンモノの愛には量がないと学び
次にすぐわかったのは
愛をホンモノとニセモノに区別する
手段なんてないということだ
また愛は誰かの、誰のための
ものではない
だから恋人たちは時に喧嘩し
また別れまた結びつくのである
なにより愛というときに
私には
この愛しかない
空を見ると
呑気に雲と飛行機が浮かんでいる
このままこの世界が終ってほしくない
君に会えればいいな
そう胸が疼くとき
世界の終わりを見たくない
もはやこの世界は終わっているとしても
と思う
【詩作品】青い衣の勇者が金色の野に降り立つお話を真剣に見ていた子どもが世界の終わりを見るとき
本気なんだってことを
他人にわかってもらいたくて
言葉を重ねてうるさくなり
声が大きくなったり
小さくなりすぎたり
やり過ぎたり
遠慮し過ぎたり
本気であることは
恥ずかしいものだ
本気で違うと思うから
真剣に怒っていたり
本気でそうだと思うから
しみじみと伝えたり
本気で苦しいから
息がつらくなり
本気で深呼吸し
本気で疲れている
そのように限度がわからない私です
本気で大切なものを
力を入れすぎて壊してしまったり
本気で探していたら
行方不明になったり
本気で笑ったら
怒られたり
本気ってなんですかと言われ
本気は本気ですと
説明になってなかったり
そのように本気であることは
恥ずかしいのだから
だから
本気でないふりをした
クールに振る舞うふりをして
YESを逆にNOと言ってみて
苦しく
苦しくなった
苦しくなってみて
思った
これは
本気なんだって
例え
理解されなくて
例え
容認しがたくても
これは本気だ
本気本気と並べてみたけど
本気に空が明るくなり
本気に風がふいている
本気に放射性物質は
崩壊し続け
本気に私たちは
虫の血に染められた
青い衣の勇者が
金色の野に降り立つのを
待つだろう
その映画を見たとき
私は世界が本気で変わると信じていた
本気で
風に乗って
本気な子どもで
途方にくれた子どもで
それは世界が
本気で壊れ始めたからかも
しれない
のうのうと寝そべる私の
数百キロ先で
おびただしい核燃料のクズが
形を失っている
おびただしい核の血は
おびただしい核の悲鳴は
かつて誇り高き民のいた地を
透明に
流れ続けてあふれ
命の耳がふさがれる
これは本当なのか
本気で疑い
本気で思う
本当に生きていけるのか
私たちは
【詩作品】壊れた王国のために作られたテーマ
いつも秘密だ
とっくにネタバレしてるけど
いつも秘密だよ
秘密だけど
明るい話だよ
手を伸ばせばすぐに
見つかるような
小さな夢の小箱だ
中にさみしさがあふれているかも
しれないよ
腹わたが煮えくりかえるよ
4月は寂しい季節だ
私はどこへも行かない
何にも入らない
不穏な国の
不穏な未来
何とか生きて
あなたに会いたいものだが
風が吹き
何もかもが斜めの雨にさらされ
その切り立った崖を
見上げている
あなたに会いにきた
馬がいなないて
草笛が
悲しみを吹き飛ばす
こんな王国に
壊れた王国に
あなたが風を使って
あたたかい涙を
流しているなんて
【詩作品】きみから見える星を教えてよ
朝が来て
朝が来ないでほしくて
きみを焦がれて
きみを憎んで
きみを探して
ぶつかったいつもの限界
はっきりしない
はっきりしているのかすら
わからない
結論は出ない
いま何時かすら
わからない
余裕がない
前屈をする
腹を太ももに近づけ
静かに沈んで行く
朝が来て
朝が来ないで
きみがぼくを探しているなら
ぼくはあの星へ行く
地下鉄の駅から上がった
さびしい路地裏さ
生きのびよう
生きていよう
何とかなるさ
どうにもならないよ
元気かな
元気ならいいけど
わからないことばかりだ
わかることを埋めて行くしかないな
次の瞬間
その次の瞬間
うまくつながらないよ
ただ埋まって息がしにくいよ
星を探して
焦がれて星を
星を探す夜に
きみから見える星を
教えてよ