細々と彫りつける

Concerning poetry,radioactivity,disability,and so on(詩、放射能汚染、障害などについて)

【詩作品】きみから見える星を教えてよ

朝が来て

朝が来ないでほしくて

 

きみを焦がれて

きみを憎んで

きみを探して

 

ぶつかったいつもの限界

はっきりしない

はっきりしているのかすら

わからない

結論は出ない

いま何時かすら

わからない

 

余裕がない

前屈をする

腹を太ももに近づけ

静かに沈んで行く

 

朝が来て

朝が来ないで

 

きみがぼくを探しているなら

ぼくはあの星へ行く

地下鉄の駅から上がった

さびしい路地裏さ

 

生きのびよう

生きていよう

何とかなるさ

どうにもならないよ

 

元気かな

元気ならいいけど

わからないことばかりだ

 

わかることを埋めて行くしかないな

次の瞬間

その次の瞬間

うまくつながらないよ

ただ埋まって息がしにくいよ

 

星を探して

焦がれて星を

星を探す夜に

きみから見える星を

教えてよ

 

【詩作品】先のない文明の讃歌を

道があり

道の向こう側に草むらがあり

その向こうの空に

月が浮かんでいます

 

これは文明の最後の場所

君と始まる場所

 

恐らく誰も知らない

知る必要もない

 

なぜなら誰もが

すぐに見ることになるから

なぜなら

すぐに火に包まれるかも

しれないから

 

山の水も海の水も

もう生き物を育まない

板塀から

草や木が突き出す

こんなに早く

ここがこんなになるなんて

 

それでも

私たちは

何にもなかったように

笑い合い歌い合い

先のない文明の讃歌を歌う

 

もはや私は何のためにも生きていない

だからはじめて自分のために歌える

それを伝え会おう

君と

海と

山と

大地と

【ヨガ体験】死んだフリのまなざし

まっすぐに静かな

優しい空虚の中で

と書いてみて

少し考える

 

ヨガのポーズにシャバ・アーサナという

ポーズがある

手を軽く広げ、足を広げて寝る死者のポーズだ

目や顔が大地に溶けて沈んでいく

死者のポーズをやるうちに

頭の中に人の姿が浮かぶようになった

その人は

暗闇から降りてきて

私の顔の横に立ったり

同じように寝転がり

しばらくすると

飛び立っていった

 

そのことが気になって、ヨガもやっている

ヒーラーに聞いたら

それはその人物が私にメッセージを伝えようと

しているのだと言った

ある時ヨガの先生にそう伝えると

先生は「ヒーラーの方はそういうかもしれませんね」と言い

私は「もっと内的なイメージなんかなあ」と

呟くと

先生は「いや、メッセージかもしれない」

と話した

 

私は何のメッセージかもわからないし

そもそも私のもとに来ているのは誰なのか

話して意味があるかもわからないので

置いておく

それは単なるイメージだったりするだけなのだが

私ははっきり人の顔が頭に浮かばない方

だから

不思議な感じがしている

 

私は欲望とか肉体には混乱する方である

むしろ欲望とか肉体があることに

困惑しているかもしれない

しかし40にもなり

もはや人間としての業は

認識しなければならない

体をよく知らないと病んでしまう

体はイメージであり同時に実在だ

人間は、様々な人に支えられているから

シャバ・アーサナをして

死者の位置に立つことで

生きている私が誰に何につながり

支えられているのかみえるのかもしれない

 

私の体をよく認識すること

その私を見ている誰かがいること

それは死者となって

体の力を抜くことでなし得るのだ

人に会っても

私が朗らかな死者のように

構えずに人といられるようになるために

私は静かに寝転んで

今日も死んだふりをするのだ

 

 

【詩作品】笑って済まなければ

とにかくまっすぐに歩く

ぶつかるものを抱きとめ

深く味わう

私が行く場所には

光がないかもしれない

暗い夜道で、怒鳴られ

にらみ返す

バカにされたら許せないし

捨て置くつもりはない

悔しい気持ちを

ほったらかしにして

生きようとしたら

死にたくなったので

だから

悔しいことは忘れ難いのだ

 

忘れ難い人間を

扱うのは面倒だろう

言葉には出さなくても

面倒だと思われるのは

ずっとだから

わかっている

 

喧嘩は怖いし

人間は怖いが

笑いあって済まないこともある

深い真剣さからしか生まれない

優しさがある

 

【詩作品】きらめくまで待て

ありえないことの向こう側に

まだ不確かな山の稜線が見え

鳥が真っ赤な空を横切る

その町を焼いた空だ

 

その町はすべて焼かれ

元に戻らない

戻るように思えても

違っていることをけしてまやかしては

いけない

 

私の悲しみは

あの日から全てがごまかされたことだ

ごまかされ、燃え上がり

ウソとウソとが出会い

互いを傷つけあい

毎日を過ごしている

 

ウソという名前の、大切な人の言葉を

信じるしかないなら

すでに全ては破滅している

ただ一つの本当が水や風に

きらめくのが

見えるまで待て

 

本当のことがわかるまで

待つことはできる

ひとは本当のことが示されたら

全てが汚され

命が壊されても

救われることができる

 

本当のことは他の人はわからず

自分しかわからない

というのは本当なのか

 

大人になれば

何もかもが見えにくく

何もかもが覆われてしまうようにみえる

 

でもそうではない

震えたり

戸惑ったりしながら

手に入れることができる

 

【詩作品】記憶と回想

自由に飛び回れたらとか

いくつの願望なんだろう

 

すでに僕は自由だと言ってみる

すでにあなたも自由だろうと口ずさんでみる

 

自由には決まった形がない

空に果てがないように

 

だから頼りなく

だから不安で

しがみついて離さないでと

頼ろうとするものも

すべて頼りない

 

壁があるから向こうが見えないなんて

ありえない

壁にはいくつもの

穴があいていて

全てが漏れ出している

 

いつか伝わるの

なんて

もはや全ては

暴露されている

 

僕の頭は石のように固い

あまりにも固く

何も受け入れられないようにみえる

しかし

たくさんの言葉に傷つき

疲れてきたんだ

あなたのように

あなたの向こうのあの人のように

あなたの向こう側のさらに

向こう側のあの人のように

 

たくさんの言葉に傷つき

疲れていたとしても

私たちはまだ

夢を見るのだろう

 

夢は浅く

眠りは深い

眠りの奥に

笑顔が沈んでいる

苛立ちが抑えられないなら

笑顔を思い出してみると良い

 

 

【詩作品】バスが転がって

蒸し暑く

夜の風は町をざわざわと通り過ぎる

その下で

僕の魂は夜のバスに揺さぶられている

寂れた道の停留所から走り出した

笑ったり

苦し紛れにしゃべりすぎたり

苛立ちすぎたり

そんな今日を思い出していた

 

光から光へ

苦痛から現実へ

三号系統を

走る時

窓外には行くあてを見失った文明が

あるのだ

私はたわいないような、真剣なような

真実であるか、希望であるか、謎であるか

同伴者たちと話をするが

意味は決めない

意味なんて決めて理解できた

試しはない

 

意味にこだわりながら

意味のわからなさに怯えている

 

この夜が過ぎるだけである

夜空の向こう側にかつて見たような

平凡で破壊された日常を

20年経て取り戻した普通の

しかし核燃料さえ溶けたはずの

末世を落ち着きなく走るのだ

 

巨大なターミナルに降り立つと

芋づるのように引き出された記憶が

繁華街に広がっていく

芋づるのようなものに

縛られて

僕はあの人やこの人と笑ったり

泣いたりした

誰もがそれを逃れることもなく

しかし忘れていき

日々は寄せては返す

なぜか

私は些細なことが忘れられない

 

些細なことが忘れられないのは

悲劇のヒーローやヒロインではなく

ただ

そのようにしか生きられないと

いうことだ

 

暗闇を見上げると

冷たい空気が降りてきて

誰かがクシャミする

クシャミの回数に迷信があることを

思い出す

 

夜の地下に吸い込まれながら

夏に向かう予感に

やるせなさと

わずかな夢の行く先を

ころがらせる